第一次アイビーブームは1950〜60年代情報が乏しい時代ならではの独自解釈や、時に大いなる誤解を交えながら誕生。その後、70年代の第二次は本物のアメリカを求めて物欲が高まり、大手セレクトショップも登場したが、アウトドアとのミックスなど変化も見られ始める。
一時の終息を経て、早くも80年代に第三次が到来、正統派アイビーが復権しつつも様々なスタイルへ派生していく混沌期を迎えることに。そんな第二次〜第三次アイビーの流れを追っていく。
▼第一次アイビーブームはこの記事チェック!
モノと情報が溢れ、 時代はどこへ向かうか
ヒッピーブームもようやく落ち着いてきたころ、第二次アイビーブームの火付け役となったのは『Made in U.S.A catalog』だ。『平凡パンチ』の編集長である石川次郎氏は、イラストレーターである小林泰彦氏とともに、“イラストルポ”連載のネタ探しで渡米。
その時に見かけた『ホール・アース・カタログ』のモノカタログ的な作りに影響を受け、75年に『Made in U.S.A catalog』を発売する。その後の雑誌の歴史を変えた、モノの情報量で圧倒する雑誌としてのつくり、そして、これまで見たこともないようなリアルなアメリカのアイテムやスナップ写真の数々……。
76年には『POPEYE』でアメリカのスポーツ&西海岸カルチャーを知ったり、『ヘビーデューティの本』で“ヘビアイ”のルールを学んだり、アメリカのリアルタイムなカルチャーを一挙に浴びることとなる。また、「ミウラ&サンズ」や「ビームス」などセレクトショップのオープンにより、アメリカからやってきた“本物”を買うこともできるようになった。
そのなか、78年にはVANが倒産してしまう。結果的に81年に復活を遂げるのだが、このVAN倒産後すぐに『POPEYE』で「VANが先生だった」特集が刊行され、さらに79年にはブルックス ブラザーズ 青山本店がオープン。これらの要因あってか、またもや正統派アイビーの機運が高まる。
そこに合流したのが、80年前半のプレッピーや中盤のフレンチアイビー、そして後半の渋カジなど、アイビーから続々と派生していったスタイル。ある種混沌とも言える、多様なスタイルで溢れかえるなかで、アメカジと裏原が特に大きなムーブメントとして勢いをつけていき、そのまま90年代になだれ込んでいく。アイビーはその影に身を隠しているしかなかった。
第二次/第三次アイビーブームを年表で追ってみよう
1976年|VANのヘビーデューティラインSCENEが始動
『Made in U.S.A catalog』や『ヘビーデューティの本』などに起因するアウトドア・ワークなどのヘビーデューティアイテムブームを、すかさず〈VAN〉がキャッチして始めた別ライン。
1976年|『メンズクラブ』に「ヘビアイ党宣言」掲載
『ヘビーデューティの本』発売の1年前、『メンズクラブ』にて「ヘビアイ党宣言」という言葉をもって、新たなスタイルを提唱していた小林泰彦氏。
1976年|西武渋谷店でポロ ラルフ ローレンの取扱いがスタート
それまでは雑誌で眺めることしかできなかった〈ポロ ラルフ ローレン〉も日本に上陸。トラッドやキャンパス系のブランドが揃う地下1階ではなく、2階にオープンして驚いたという話も。
1978年|VAN倒産
一世を風靡した〈VAN〉も、78年に倒産することとなったが、倒産後すぐに発売された『POPEYE』「VANが先生だった」特集の影響もあってか、正統派アイビーが再び注目される。
1978年|Jプレス日本企画始動
1902創業、イェール大学の目の前にオープンした〈Jプレス〉。この頃から日本でのライセンス生産がスタートする。86年オンワード樫山が買収。
1979年|『メンズクラブ』プレッピー特集を発売。プレッピーブームへ突入
実は英語版の『THE OFFICIAL PREPPY HANDBOOK』よりも1年早く、アメリカでのプレッピームーブメントをキャッチし、特集を組んでいた『メンズクラブ』。そのライフスタイルごと注目されていたアメリカ目線のプレッピーとは違って、ファッションに重点をおいて紹介した。
1979年|ブルックス ブラザーズ青山本店オープンで日本初上陸
第一次アイビーブーム期から長らく憧れの的だった〈ブルックス ブラザーズ〉が、いよいよ日本の青山に上陸。本場のアメリカントラッドがいよいよ日本に上陸したことで、アイビー好きから多くの注目を集める。
1981年|ヴァンヂャケット復活
1978年に惜しまれつつも倒産した〈VAN〉だが、元社員らの尽力もあり3年後の1981年に〈ヴァンヂャケット〉として再復活。雑誌への貸し出し、キャンペーンも精力的に行う。
第二次・第三次アイビーブームの終焉|髪は長く、髭は生え、打って変わってヒッピーへ
「カジュアル化」や「ヨーロッパへの関心」などでどんどん多様化するファッションの影に隠れていってしまうアイビー。また、90年代はアメカジ・裏原最盛期のため、アイビーのトピックもほぼない。
◆
いかがだっただろうか。読者の中にはリアルタイムで体験した人も多いことだろう。次回は、現在に続く第四次アイビーブームを取り上げる。
▼第四次ブームはこちらで解説
Photo/Takashi Murata, Yoshika Amino Styling/Shogo Yoshimura Text/Shuhei Takano Hair&Make/Takeharu Kobayashi Illustration/HISAO, Takeshi Kimura Special Thanks/ISHIZU OFFICE, W. David Marx, Koji Hongo
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