サインペインティングユニット「J&Sサインズ」としても注目された2人が来日!

  • 2023.09.23

2014年より活動を行っていたサインペインティングユニット「J&Sサインズ」としても注目されたアーティスト、ジェフリー・シンチチとジョシュ・ストーバーの2人がアメリカから展示のために初来日を果たした。現在はポートランドとサンフランシスコにそれぞれ拠点を置いて行う創作活動とは。

アーティスト、サインペインター ジェフリー・シンチチ|1990年生まれ、アメリカ・フロリダ州べレル出身。ジョシュ・ストーバーと同じくフロリダ大学の陶磁を専攻、美術学士号を取得する。2012年にレジーナブラウン研究奨励金を取得し、現在はポートランドからサンフランシスコへ移住。キルティング技法を用いて身の回りにある看板や日用品などをモチーフに作品制作を行う
アーティスト、サインペインター ジョシュ・ストーバー|1988年生まれ、アメリカ・フロリダ州セイントピーターズバーグ出身。2012年にフロリダ大学の美術学士号取得。専攻は陶磁。卒業後はジェフリー・シンチチとサインペインテイングユニット「J&S Signs」を2014年に結成。現在はポートランドで妻のレイチェルと看板ペイント&デザインのスタジオ「Variety Shop」を経営

「身の回りにあるものや日頃見ているものから作品に繋げていくのが好きなんだ」

東京では2度目となったパシフィカコレクティブス主催の2人展『Thank you for shopping』が6月に開催された。空間を活かした遊び心のあるレイアウトが印象的

去る6月9日から、約2週間にわたって東京で開催された、アメリカのアーティスト、ジェフリー・シンチチとジョシュ・ストーバーの2人展『Thank you for shopping』。大学のクラスメイトであり、サインペインティングアーティストとしても、ともに活動した両名が現在行うそれぞれの制作活動とは。初来日を果たした2人に直接伺うことができた。

——日本には初めてあなた方を知る人も多いと思います。まずはじめに軽く自己紹介を。

ジョシュ・ストーバー(以下ジョシュ) オレゴン州のポートランドで、ペインターやサインペインターとして活動しています。

ジェフリー・シンチチ(以下、ジェフリー) アーティストとしてサンフランシスコで活動しています。あとジョシュと同じくサインペインターとしても。

「手作りの看板、歴史ある建築、何気ない風景すべて僕にとって興味をそそるもの」

——自身の作品のスタイルを教えてください。

ジョシュ 静物画をメインに描いているんだけど、ただ単にその場の風景を描くんじゃなくて、遊び心やユーモアたっぷりに抽象的に見せるのが好きかな。曲線の形やその反復はヴィンテージサインからの影響が大きいと思うし、グラフィックの陰影や線は大好きなミッドセンチュリーの雰囲気を持っていると思う。とにかく、あるものを異なる形や違った視点で見せることが好きなんだ。

ジェフリー 僕は街で何気なく見かけるものや自分の生活と切っても切り離せない風景に目を向けて、それをアイデアソースにキルティングを使って抽象的な作品を作っている。手作りの看板、建築物、長い歴史を持つ店構え、その他、人間が手を加えた場所などは、すべて僕にとって興味をそそるものなんだ。キルトには、それを作った人の痕跡があり、それぞれにユニークなもの。キルティングの技法は、そこに制限が生まれてくるから、デザインをする時にどれだけモチーフを単純化できるかが重要なんだ。

ジョシュ お互いの作品に共通して言えることは、身の回りにあるものや日頃から見ているもので、作品に繋がってくるものを、出来るだけ単純化するところだと思う。その共通点があるから、このように2人の作品を並べても、ある程度の統一感が保てている。

——どういった経緯で今のスタイルに辿り着いた?

ジェフリー 僕らは同じ学校に通っていたんだ。当時は2人とも陶磁を専攻していて。その頃から同じものに興味があったし、2人ともフォークアートに影響を受けて、そんなものばっかり作っていたよ。フォークアートはとてもシンプルで単純化されたものが多いんだ。

ジョシュ 当時はお互いレタリングや文字を主に描いていたよね。

ジェフリー あと陶器にキルトを貼ってみたりね! “セラミックキルト”って勝手に呼んでたり。

ジョシュ 大学に入ってからは、バリー・マギーやマーガレット・キルガレンの作品と出会って、大きな影響を受けた。それからスティーブ・パワーズにも。それもあって、壁に絵を描くことやサインペインティングにも興味を持って、今の作風に繋がると思う。

ジェフリー 僕は単純にレタリングの勉強をしたかったのが大きいかな。それも2人で一緒に勉強してたよね。ジョシュはイラストレーションを得意としていたし、僕はレタリングが得意だったから、それぞれの強みが違うというところも、お互い高め合いながら制作ができた、いい要因になったんだと思うんだ。

ジョシュ 大学を卒業して、一緒に地元のフロリダに戻ったんだけど、そこに自分たちの陶芸スタジオを持つことは難しかった。どうしたら自分たちの制作意欲を満たせるかと考えていたら、ジェフリーから「コンビニの壁に無償で絵を描かせてもらえないか」って聞いてみるのはどうかという提案があって、最初は何軒か無償で壁に絵を描き始めたんだ。ただただ、2人の溢れる制作意欲を満たすためにね。壁にはポジティブな言葉を使って、サインペインティングをした。そんなことをしていたら、仕事として依頼が入るようになったんだ。

ジェフリー その頃(2013〜2014年)、アメリカではサインペインティングがまた脚光を浴びるようになっていたからね。

身の回りの風景や看板、日用品などをモチーフにしてキルティング技法を取り入れたジェフリー・シンチチの作品はどこかフォークアートのようなぬくもりを感じる。「キルトには、それを作った人の痕跡があり、それぞれにユニークなもの。どれだけモチーフを単純化できるかが重要なんだ」

「ただ単にその場の風景を描くんじゃなくて、違った目線で見せることが好き」

——2人でサインペインティングのユニット「J&Sサインズ」を始めたのもこの頃ですよね。

ジョシュ 2014年だね。ビジネスとしてもすごく良かった。それにサインペインティングは公共の場に存在するという前提があるから、いつでも自分の作品を見ることができる。陶器だと作って販売したら、なかなか自分の作品を見ることはできないからね。

ジェフリー 単純に屋外で制作するというところも良かったと思うんだ。当初からメニューボードなど室内で制作するんじゃなくて、外壁に描いていたから、常に屋外で制作をする。その環境がすごく良かった。

ジョシュ すごく楽しかったよね! アーティストとして活動を始めた頃は何もかもが新鮮で楽しいけど、それがクリエイティブなものではなくて、仕事になってしまうことが多い。だから、僕らもサインペンティング以外で制作意欲を満たすために、それぞれが別の方法で作品を作り始めるようになったんだと思う。

ジョシュ ジェフリーはすでに2020年頃からキルトを使った作品の展示をしていたよね。

ジェフリー 最初は本当に趣味だったんだけどね。

ジョシュ 僕は全くペインティングといったものをやったことがなかった。パンデミック中に、サインペインティングの仕事がほぼなくなって、なんとかして自分の制作意欲を満たしたかった。ちょうど妻が絵の具や筆を持っていたということもあって、絵を描き始めたんだ。そんなとき、ジェフリーはキルトの作品を作り続けていた。出来上がった作品をインスタグラムに投稿してみたら、ポートランドにあるギャラリーから連絡が入ったんだ。それが、2人で初めて行う展示のきっかけになったんだ。それから、2022年には日本のパシフィカコレクティブスの貴島さんから連絡をもらって、初めて日本で2人展を開催した。今年も貴島さんが主催で2度目の展示と初来日もすることができたんだ。

——最後に、今後の活動予定やアーティストとしてのこれからの展望を教えてください。

ジョシュ 僕は妻と一緒にサインペンティングの仕事をやっているけど、アーティストとしてもっと展示やプロジェクトに関わっていきたいと思っている。特に、自分がワクワクするものをどんどんやっていきたい。サインペインターとしてではなく、これからはアーティストとしての仕事にもっとトライしていきたいね。

ジェフリー ここ数年、やりたいと思っていることを制作できる環境があることにとても感謝している。そして、それを今も続けていられるという現状にもね。ただ、まだアーティストとして、入ってくる仕事に全てイエスと言わなければならない状況だから、もう少し余裕のある形でやっていきたいな。でも、このような展示が行えることが夢だったんだよね。だから、これが続いていくことが自分にとってはゴール!

アールデコデザインやヴィンテージの看板などに影響を受けたというジョシュ・ストーバのペインティングはどこか小さな喫茶店の壁に飾ってありそうなノスタルジックさがある。「お互いの作品に共通して言えることは、身の回りにあるものや日頃から見ているもので、作品に繋がってくるものを、出来るだけ単純化するところだと思う」

ジョシュ もっと海外で展示ができたらいいよね。旅をすることがこんなに楽しんだって、初めて日本に来て思った。人や作品との新しい出会いが嬉しいんだ。次回は、サンフランシスコにあるパークライフっていうギャラリー兼ショップで個展をやるよ。今のところ、8月か9月の予定。

ジェフリー 僕はサンフランシスコにある小さいコーヒーショップで個展をやる予定。昔からあるコーヒーショップだから、雰囲気も含めてすごく楽しみにしている。

『Thank you for shopping』終始ハッピーな空気に包まれた、初来日の2人展。

日本では約2年ぶり、2度目の開催となった2人展。パンデミックも終息した今回はついにアーティスト本人も初来日を果たし、インディペンデントなフードショップが出店するなど、会期中は和やかなムードが流れた。

イベントを彩ったフードショップには、下北沢の大人気パン屋「カイソ」やタコス屋「タンゴ」が出店。アメリカンインディー感満点のフードも展示の雰囲気にピタリとマッチ。

展示の主催である九段下のインテリアショップ「パシフィカコレクティブス」謹製のオリジナルラグ(各1万9800円)やプリントTシャツ(各5500円) は現在もウエブで販売中!https://pacificacollectives.shop/

※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。

(出典/「2nd 2023年9月号 Vol.198」

LiLiCo

昭和45年女

人生を自分から楽しくするプロフェッショナル

LiLiCo

松島親方

Lightning, CLUTCH Magazine, 2nd(セカンド)

買い物番長

松島親方

ランボルギーニ三浦

Lightning

ヴィンテージ古着の目利き

ランボルギーニ三浦

ラーメン小池

Lightning

アメリカンカルチャー仕事人

ラーメン小池

上田カズキ

2nd(セカンド)

アメリカントラッド命

上田カズキ

パピー高野

2nd(セカンド)

断然革靴派

パピー高野

村上タクタ

ThunderVolt

おせっかいデジタル案内人

村上タクタ

竹部吉晃

昭和40年男, 昭和45年女

ビートルデイズな編集長

竹部吉晃

清水茂樹

趣味の文具箱

編集長兼文具バカ

清水茂樹

中川原 勝也

Dig-it

民俗と地域文化の案内人

中川原 勝也

金丸公貴

昭和50年男

スタンダードな昭和49年男

金丸公貴

岡部隆志

英国在住ファッション特派員

岡部隆志

杉村 貴行

2nd(セカンド)

ブランドディレクター

杉村 貴行

2nd 編集部

2nd(セカンド)

休日服を楽しむためのマガジン

2nd 編集部

CLUTCH Magazine 編集部

CLUTCH Magazine

世界基準のカルチャーマガジン

CLUTCH Magazine 編集部

趣味の文具箱 編集部

趣味の文具箱

文房具の魅力を伝える季刊誌

趣味の文具箱 編集部

タンデムスタイル編集部

Dig-it

初心者にも優しいバイクの指南書

タンデムスタイル編集部

昭和40年男 編集部

昭和40年男

1965年生まれの男たちのバイブル

昭和40年男 編集部

昭和45年女 編集部

昭和45年女

“昭和カルチャー”偏愛雑誌女子版

昭和45年女 編集部

昭和50年男 編集部

昭和50年男

昭和50年生まれの男性向け年齢限定マガジン

昭和50年男 編集部