2ページ目 - アイアン・メイデン、最新ロンドン公演レポート。心に深く刻まれた結成50年目の奇蹟

  • 2025.07.15

本編ラストはバンドのアンセム「Iron Maiden」

スクリーンから飛び出す巨大なエディ

そしてスクリーンがおなじみの旗を持ったTROOPERエディに代わり、ドラムのカウントからバンドの代表曲「The Trooper」(明日なき戦い)へ。ギター、ベースの4人が一列に並んで盛り上げるなか、旗を持った赤いジャケットのTROOPER姿のブルースが、そしてステージ前方には剣を持った巨大なエディTROOPERが行き交う。

スティーブがモニターに足をかけて客席を指差し曲が終了すると、時計は夜9時半頃。やっとあたりは暗くなってきた。そこにステージの照明が光り、狭い檻の中にはブルース、スクリーンにはギロチン。炎が上がり、印象的なギターのハモリや激しいリズム・チェンジ満載の大作「Hallowed Be Thy Name」(審判の日)が演奏される。そして本編ラストはバンドのアンセム「Iron Maiden」(鋼鉄の処女)。スポットがあたりギター・ソロを披露するデイヴとエイドリアン、ぐるぐると回転しながらギター弾くヤニックがラスト・ナンバーを盛り上げていく。

スクリーンから飛び出す巨大なエディ、スタジアムにこだまする大合唱、炎や煙がふんだんに上がり、大興奮の中曲が終了、メンバーが客席に手を掲げて次々に去っていく。最後にサイモンが残り、客席に手を振り本編が終了する。

シルクハットにコートの出立ちで登場したブルース

一段と暗くなった会場に稲妻のような照明が光り、スクリーンには戦闘機の映像が映し出される。チャーチルのスピーチが響く中メンバーが現れ、「Aces High」(撃墜王の孤独)が始まる。スティーブはウェストハム・ユナイテッドのユニフォーム・デザインのTシャツ、ブルースはパイロットの扮装にスタンド・マイク。この1曲の間ですっかりと暗くなった場内に続いた9枚目のアルバムのタイトル曲「Fear Of The Dark」では、イントロを歌う大合唱が場内に響き渡る。

暗闇にシルクハットにコートの出立ちで登場したブルースが持つランプの灯りが遠くからでもよく見える。切々とした歌い出しから一気にテンポアップするエモーショナルなナンバーを、神秘的な映像が盛り上げる。約7分間その世界にのめり込んだ後にはスクリーンがアルバム「Somewhere In Time」の映像に代わり、大ラスの「Wasted Years」へ。未来的なスクリーンの画像が夜空に映え、スティーブ作のキャッチーなナンバーをカラフルに彩っていく。

英語圏の人間でなくても歌えるわかりやすい歌詞と、ポップで哀愁を帯びたメロディのこの曲は当然ながら大合唱になる。曲が終わった後、2012年の「ロンドン・オリンピック」の開会式と関連づけて「ジェームズ・ボンドみたいにまたここに戻ってくる」とブルースがMC。他のメンバーも客席に大きく手を振り、ステージを後にした。そしてアンコールでも最後までステージに残っていたのは、サイモンであった。

50周年記念で日本に来ない理由はないはず

約2時間20分の公演を終えたメンバー

心配だった脚の疲れを忘れすっかりライブにのめり込み、あっという間に終わった約2時間20分。ステージの音をかき消すほどの大声で歌い続けるオーディエンス、地面に散らばった飲み物のプラスティック・カップ、そろいのTシャツを着込み肩を組んで叫ぶティーンエイジャーの少年と40代くらいの父親。それらの多くは日本ではなかなか見ることのない光景だ。

日本ならばマナーが悪いとされるような行動でも、なぜかここでは気にならない。それはオーディエンスがアイアン・メイデンという存在を自国の誇りにし、ライブという空間を自分らしく自由に目一杯楽しんでいることが伝わってくるからだ。アイアン・メイデンは英国のバンドだ。開演前後を含むライブ全体を通して、それが感じられる空気を全身で浴びることができたことは、英国まで足を運んだ意義があったと思う。後日、ライブ前日に入れなかった「Cart &Horses」で「Trooper Beer」を飲み、マナー・パークにある墓地で、昨年他界したアイアン・メイデンの初代ボーカリスト、ポール・ディアノの墓に手を合わせ、今回の渡英で成し遂げたいことを終えた。

イギリスでのライブは心に深く刻まれた。でも、ルールを守りながらどの曲にも真剣に向き合う観客が多い日本でも、じっくりとこの公演を観たい。曲ごとに変わる豪華な映像美は日本でも再現可能だと思うし、デビュー当時から特別な思いでバンドを支えてきた日本に50周年記念で来られない理由はないはず。私は期待して待っていいと思っている。

「Cart &Horses」で「Trooper Beer」を痛飲
初代ボーカリスト、ポール・ディアノのお墓

山西裕美/株式会社ヒストリアル所属。ティーン誌の編集を経て、現在は女性誌、情報誌、WEBの音楽、映画、美容、旅行、企業取材等の編集・ライティングに携わる。好きな音楽ジャンルは、HR/HM、PUNK、プログレッシブロック、ブリティッシュロック、邦楽全般。

LiLiCo

昭和45年女

人生を自分から楽しくするプロフェッショナル

LiLiCo

松島親方

CLUTCH Magazine, Lightning, 2nd(セカンド)

買い物番長

松島親方

モヒカン小川

Lightning, CLUTCH Magazine

革ジャンの伝道師

モヒカン小川

ランボルギーニ三浦

Lightning, CLUTCH Magazine

ヴィンテージ古着の目利き

ランボルギーニ三浦

パピー高野

2nd(セカンド)

断然革靴派

パピー高野

おすぎ村

2nd(セカンド), Lightning, CLUTCH Magazine

ブランドディレクター

おすぎ村

なまため

2nd(セカンド)

I LOVE クラシックアウトドア

なまため

みなみ188

2nd(セカンド)

ヤングTRADマン

みなみ188

村上タクタ

ThunderVolt

おせっかいデジタル案内人

村上タクタ

竹部吉晃

昭和40年男, 昭和45年女

ビートルデイズな編集長

竹部吉晃

中川原 勝也

Dig-it

民俗と地域文化の案内人

中川原 勝也

清水茂樹

趣味の文具箱

編集長兼文具バカ

清水茂樹

岡部隆志

英国在住ファッション特派員

岡部隆志

2nd 編集部

2nd(セカンド)

休日服を楽しむためのマガジン

2nd 編集部

CLUTCH Magazine 編集部

CLUTCH Magazine

世界基準のカルチャーマガジン

CLUTCH Magazine 編集部

タンデムスタイル編集部

Dig-it

初心者にも優しいバイクの指南書

タンデムスタイル編集部

昭和40年男 編集部

昭和40年男

1965年生まれの男たちのバイブル

昭和40年男 編集部