
「ローファーは雑に毎日履けて、そして、ディスコで踊れる靴」
恵比寿で30年続く老舗「Ptアルフレッド」のオーナー本江さんは大のローファー好き。学生時代から、彼の足元を支えてきたローファーへの愛を伺う。
「50年も前ですが、学生時代の私は、国産よりアメリカ、そんな考えを持っていたのでスニーカーは『コンバース』や『スペリートップサイダー』、ローファーも『ジーエイチバス』を履いていました。70年代には、『オフィシャルプレッピーハンドブック』がでたこともあり、本に載っていたことを真似してボロボロの靴にガムテープを巻いていたほどに、アメリカに強い憧れを抱いていました。
革靴も様々履いてきましたが、一番に履いていたのはローファーです。毎日のスタイリングでも、ローファーを履く時は、ローファーに合わせてスタイリングを考えていたほど、自分のスタイルの中心となるアイテムでした。20代の頃は、よくディスコなんてところに行っていたのですが、マイケル・ジャクソンの「スリラー」で『ジーエイチバス』のローファーを履いて踊っていたという話は有名だと思いますし、私もディスコに行く時はいつもローファーを履いて行っていました。スニーカーよりもきちんとしていて、革靴よりも動きやすい、ちょうど良い靴でしたね。
その時から、いまもあまり変わりませんが、私にとってローファーはサンダルのようなラフな存在で、革靴とはまた認識が少し違っていたと思います。ローファーの由来でもある“怠け者”という言葉ではありませんが、気楽に、雑に履いてこそローファーなのではないでしょうか」。
今回、ご用意いただいたローファーでも一番に目に入ったのは4足の「パラブーツ」。すべて同じモデルの[ランス]でした。
「40年くらい前に、雑誌か何かでナイジェル・ケーボン氏がやけにボリュームのあるローファーを履いているのを見かけて、『なんだこれは』と思いましてね。仕事柄、話を聞ける人も多かったので、調べていくうちにその靴が『パラブーツ』の[ランス]だと分かったのです。これまで履いていたローファーとは違い、モカ縫いとソールが印象的で、履いてみたらその歩きやすさにも感動し、何足も買い直して履いています。
ローファーは楽に履ける靴だというところが魅力だと思っていますが、紐がないからこそ、フィッティングが難しい。このスウェードのローファーは『ジェイエムウエストン』なのですが、店でフィッティングしてもらい購入したものの、本当にぴったり過ぎて、血だらけになりながら履いていました。スウェードだったので多少の柔らかさはありましたが、人生の中でも、特別きつい思い出のあるローファーですね。
しかし、ここ20年ほどですね、僕も年齢を重ねましたので、ローファーは楽な靴なのだから、なるべく我慢をしないようにしています。もちろんゆるゆるで履くことが良いというわけでありません。
仕事柄、ローファーフィッティングの相談を受けることもあるのですが、どれくらいの頻度で履くかによっても足の馴染みは違いますし、週に1度しか履かないのであれば馴染むまでに時間がかかると思いますので、ゆるすぎるものはもちろん避けつつ、靴を足に合わせるのではなく、中敷や靴下の厚みで調整するサイズをおすすめすることが増えてきました。自分もソールを歩きやすいものに変えたり、履き心地を大事にしています。楽さが、ローファー本来の魅力ですからね」。




(出典/「2nd 2025年6月号 Vol.212」)
Photo/Ryota Yukitake,Takahiro Katayama,Shunichiro Kai,Yoshika Amino Text/Shuhei Sato,Yu Namatame
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