【ジャパントラッドを担う、注目の10人】「CHAMPION」ヘインズブランズ ジャパン アクティブウェア商品部 部長・立浪和晴さん

誰もが知るチャンピオンの傑作スウェットの歴史を紐解き、現代へと蘇らせる。創業100周年の節目として企画された、この特別な作品は、なぜ日本で作られることとなったのか。陣頭指揮をとった責任者である立浪和晴さんに、その意義をお聞きする。

「ヘインズブランズ ジャパン」アクティブウェア商品部 部長・立浪和晴(たちなみかずはる)さん|国内で企画されるチャンピオン製品のほぼすべてを司る責任者。アーカイブにも精通するほか、未来のヴィンテージにも成りうる現行製品の企画にも注力している

アーカイブを真実と呼べるほど忠実に復刻した製品を作ろう。

キング・オブ・スウェットシャツとも称されるチャンピオンのリバースウィーブ。誰もが知る不動の定番だが、じつはこの傑作に関して正確な知識を有している人は、その知名度に比べると案外少ないのかもしれない。

理由はその少し複雑な成り立ちにある。考案したのはアメリカの老舗紳士服店ヒッキーフリーマンでカッターとして働いていた経験を持つ、営業マンのサム・フリードランド氏。顧客から洗濯による縮みを指摘され、それを解決するため同氏が1934年に考案したのが、縦向きだった生地を横向きに使うリバースウィーブ製法だった。

サム・フリードランド氏|リバースウィーブ製法を考案した伝説的営業マン

しかし1938年に特許を取得したものの、さらなる運動性の向上や、横方向の縮みを解消するため、身頃の両脇にエクスパンションガゼットというリブ状のパーツを備える手法を再考案。1952年にリバースウィーブ製法の特許を再取得することとなる。

つまりリバースウィーブには、ファーストパテントセカンドパテント以降の、2つの製品が存在しているのだ。この2つの歴史的名品をチャンピオン自らの手で完全復刻しているのが、2019年に誕生したトゥルートゥーアーカイブスというライン。

「チャンピオンが創業したのは1919年。2019年は創業100周年の節目の年でした。それならば何か特別な製品を作りたい。そう考えてならアーカイブを真実と呼べるほど忠実に復刻した製品を作ろうと思い立ったんです。

このラインはすべて日本製というわけではありません。ただ基軸に据えたファーストパテントとセカンドパテントの2つのリバースウィーブ製品は、どうしても日本製にせざるを得なかったんです。

というのも、オリジナルのヴィンテージとまったく同じ生地感を再現するためには、糸の紡績段階から特別にオーダーしなければならなかったし、一発で完成するはずもなく、何度かトライ&エラーを繰り返す可能性も極めて高かった。それならばやはり細かなニュアンスまでやり取りできる日本の工場と一緒に物作りしたいな、と」

かくして国内工場とタッグを組み、オリジナルの糸から開発することになった立浪さん。

「当時のカタログを見ると、シルバーグレーという色名が記載されているんですが、入手したオリジナルはシルバーというよりは、むしろほんのり生成りがかっていて、グレーの杢感も荒々しかった。糸に紡ぐ前のワタの状態にも、紡績にも趣向を凝らす必要がありました」

さらに編み立てにも相応の工夫が。

「生地を編み立てる際も特別な編み機を使用しています。おかげでオリジナルの生地と遜色ない、ふっくら嵩高(かさだか)な生地感とタフなハリ感を両立させることに成功しました」

詳細は下に譲るが、この糸や生地のほか、細かなディテールや独特なパターンまでオリジナルを踏襲することで、名前通りアーカイブの真の姿に肉薄。愛好家にも響くヴィンテージの佇まいを見事なまでに再現している。

「アメリカ本国で企画&製作される製品はやがてヘリテージになる。日本サイドが発信する製品で同じように歴史の一部になろうとすると、質に徹底的にこだわる他ない。そうなると日本での物作りが最も効率的なのかもしれません。現にこの2つの製品はアメリカサイドからも大変好評を博しています」

いつか時を経て、この日本で作られた2つのリバースウィーブが、チャンピオンの真のアーカイブとして認知される時が来るかもしれない。そうなれば同じ日本人として、これほど誇らしいことはない。

H2:オリジナルとトゥルートゥーアーカイブスを比較!

再現度の高さは写真の通り。上写真を見てオリジナルと復刻版を瞬時に判別するのは、極めて難しいはずだ。正解は右の2着がオリジナルで左の2着が復刻版。タグや生地の風合い、きつめの袖リブ、シームレスショルダー、筒状のスウェットからパターンを起こす独自製法等々、細部まで徹底分析して完全再現している。ちなみに右はすべてファーストパテントのディテール比較だが、セカンドパテントの方も、すべてオリジナルを忠実復刻している。

【オリジナル】

タグ
生地
袖リブ
パターン

【トゥルートゥーアーカイブス】

CHAMPION TRUE TO ARCHIVES(リバースウィーブ) 1stパテントモデル(右) 2ndパテントモデル(左)|チャンピオンの創業100周年の節目に誕生した復刻ライン。代名詞である2つの時代のリバースウィーブ製品は、国内工場との連携によってオリジナルと見紛うほどの再現度を誇る。各2万2000円
タグ
生地
袖リブ
パターン

【問い合わせ】
ヘインズブランズ ジャパン カスタマーセンター
TEL0120-456-042

※情報は取材当時のものです。

(出典/「2nd 20235月号 Vol.194」)

この記事を書いた人
2nd 編集部
この記事を書いた人

2nd 編集部

休日服を楽しむためのマガジン

もっと休日服を楽しみたい! そんなコンセプトをもとに身近でリアルなオトナのファッションを提案しています。トラッド、アイビー、アメカジ、ミリタリー、古着にアウトドア、カジュアルスタイルの楽しみ方をウンチクたっぷりにお届けします。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

100本限定生産の「エイトG」大戦モデルは、春にぴったりの履き心地とメリハリのエイジング

  • 2026.04.02

無骨なまでに肉厚なデニムで知られるエイトG。その中でも比較的穿きやすく、この時期にぴったりの一本が、第二次世界大戦期のディテールを落とし込んだ大戦モデルだ。特濃インディゴで染め上げた糸ならではの、メリハリの効いたエイジングは、自分だけの一本になること間違いなしだ! ワイドシルエットが生む、クラシカル...

【Tricker’s × 2nd別注】英国の伝統と歴史が宿る質実剛健なカントリーブーツをネイビーで

  • 2026.03.18

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 革靴の名門「トリッカーズ」とのコラボが実現。ストウ ネイビーカーフ 革靴の聖地として名高い英国・ノーサンプトンにて1...

横浜発アメカジブランド「HEATH」による、定番アメカジのマストアイテム5選はこれだ!

  • 2026.04.03

横浜を拠点に、定番からちょっとアレンジの効いたアメカジを提案するHEATH。人気ブランドのアイテムをセレクトするだけでなく、オリジナルのモノづくりにも注力しており、そのコストパフォーマンスの高さには定評がある。今回はその中から絶対に手に入れておきたいマストアイテム5選を紹介しよう。 【横濱デニム】デ...

横浜・裏元町に店を構える、元毛皮店がつくる、「H LEATHER」のデイリーウエア。

  • 2026.04.01

2024年に横浜・裏元町に店を構えた『Hレザー』。元毛皮店として長年培った革への知見を背景に、軽く柔らかなシープレザーのウエアを展開。ショップにはレザージャケットやシャツなどの製品が並び、日常で楽しむレザーの魅力を伝えている。 レザーをもっと日常に育てる楽しさを伝えたい [caption id=""...

革好き店主の本気、見せます! 「Fresno(フレズノ)」限定別注レザージャケットに注目だ

  • 2026.03.31

千葉・柏にお店を構える Fresnoは、アメカジ全般を網羅しながらも、革ジャン好きの心をくすぐる、特別なセレクトショップ。店主自らがこだわり抜いた“Fresno限定別注レザージャケット” は、このお店でしか手に入らない一着だ! 革ジャン好き、集まれ! アメカジの宝庫は柏にあり 千葉・柏に店を構えるセ...

Pick Up おすすめ記事

「バンソン」のタフネスを、春夏へ。伝説の映画『EASY RIDER』とのコラボアイテムにも注目だ

  • 2026.04.02

バイカーブランドの代名詞、VANSON。今春は軽やかな布帛アイテムでイージーな装いを提案。そして伝説の映画『EASY RIDER』とのコラボレーションも登場。自由なスピリットを、そのまま服に落とし込んだラインナップを紹介する。週末のライドにも、街の散歩にも、着ることで体感できるフリーダムさを、VAN...

横浜・裏元町に店を構える、元毛皮店がつくる、「H LEATHER」のデイリーウエア。

  • 2026.04.01

2024年に横浜・裏元町に店を構えた『Hレザー』。元毛皮店として長年培った革への知見を背景に、軽く柔らかなシープレザーのウエアを展開。ショップにはレザージャケットやシャツなどの製品が並び、日常で楽しむレザーの魅力を伝えている。 レザーをもっと日常に育てる楽しさを伝えたい [caption id=""...

プロの現場から支持を得るモデルが今春アップデート! アシックスのワーキングシューズ「WINJOB CP314 BOA」の実力とは?

  • 2026.03.30

世界最古のモーターサイクルブランドとして知られるロイヤルエンフィールド。ミドルクラスで世界屈指のシェアを誇る同ブランドのメカニック、清水さんにアシックスのワーキングシューズ「WINJOB CP314 BOA」を体験してもらった。 [caption id="attachment_894934" ali...

横浜発アメカジブランド「HEATH」による、定番アメカジのマストアイテム5選はこれだ!

  • 2026.04.03

横浜を拠点に、定番からちょっとアレンジの効いたアメカジを提案するHEATH。人気ブランドのアイテムをセレクトするだけでなく、オリジナルのモノづくりにも注力しており、そのコストパフォーマンスの高さには定評がある。今回はその中から絶対に手に入れておきたいマストアイテム5選を紹介しよう。 【横濱デニム】デ...

ワークブーツでありながら軽量で快適。“道具としてのブーツ”を極めた「SURE BOOTS」の機能美

  • 2026.03.31

言わずもがなブーツは我々にとっての必需品だ。だからこそ、多様なブランドとプロダクツが存在することは既知のことと思う。しかし、“ワークブーツ”という道具に、ここまで実直に向き合った1足が今までにあっただろうか。その気取らない美しさを見よ。 どこまでも素朴で武骨 それでいて軽量で快適 日本有数の革靴産地...