
HOVERAir X1 RPO/PROMAX
https://jp.hoverair.com/pages/x1-pro-and-promax
細部にいたるまで技術を詰め込んだCEOのWangさんがプレゼン
HOVERAirの発表会に行くと、いつもZERO ZERO ROBOTICSの創業者兼CEOであるMQ(Mengqiu) Wangさんが、情熱的に語ってくださるのが楽しい。長身でスマートなアジア系美男子で、出身は中国で、アメリカへ進学し、カーネギーメロン大学でコンピュータサイエンスの修士号、スタンフォード大学で博士号を取得。FacebookやTwitterで初期の従業員を務めたのち、アリババのデータサイエンティストという優秀な人物だが、とにかくエンジニアで、HOVERAirの素晴らしさを伝えたくてたまらないという感じなのが好感が持てる。
一般にHOVERAirはドローンだと思われているだろうけれども、Wangさんによると作りたかったのは『空飛ぶカメラ』とのこと。たしかにHOVERAir X1 Smartを使ってみると、ボタンひとつで浮き上がって写真や動画を撮ってくれるし、いくつかの操作もプリセットがメイン。スマホで操縦することも一応可能だが、少なくとも筆者は1年ほど使ってみて、自分で操縦はしなかった。
対してHOVERAir X1 RPO/PROMAXは『空飛ぶアクションカメラ』だというのがWangさんの表現。
たしかに、4K/8Kで、より高速で、強力に飛ぶので、自転車で走ったり、スキーをしたり……というアクションシーンで、より迫力のある映像を撮影することができる。アクションカメラだと基本的には誰かが操縦しなければならないが、HOVERAir X1 RPO/PROMAXの場合は追尾や並走、フロントフォロー(前側で追尾)を設定すれば、それだけで撮影してくれる。その点が非常にユニークだ。
機体登録が必要だが、リモートID搭載なので、比較的簡単
商品を詳細に紹介する前に、日本の法規制について説明しておこう。
HOVERAirが一番売れているアメリカや、開発された中国ではドローンの規制は緩やかなので、このあたりの説明が漏れがちになるが、HOVERAir X1 RPO/PROMAXは、HOVERAir X1 Smartと違って航空法の規制の対象となる(HOVERAir X1 Smartは99g以下なので、トイとして扱われて規制は緩い)。
HOVERAir X1 RPO/PROMAXは日本向けに『リモートID』が内蔵されているので、このIDをDIPS 2.0で機体登録し、登録番号を表示する必要がある。また自動飛行や市街地飛行をするならDIPSから事前に申請する必要がある。ただし、このサイズなら免許は不要。最初に登録する手間はあるが、さほど面倒というわけではない。
静止画4,000×3,000、8,000×6,000ピクセル、動画4K、8Kの高性能
では、HOVERAir X1 RPO/PROMAXについて詳細を説明していこう。HOVERAir X1 RPO/PROMAXはこれまでのX1 Smartでは物足りなかったシーン――高速移動や暗所、そして高精細な撮影――をカバーするために作られた。そもそも重量があるから、HOVERAir X1 Smartより横風などにも強い(HOVERAir X1 Smartはちょっと風があると飛ばすのが困難だった)。
まず、最大のポイントは性能の大幅な向上である。飛行と画像を司るプロセッサー性能はX1 Smart比で5倍。X1 Smartは軽量化のために、冷却ファンも積まれていなかったが、X1 RPO/PROMAXはその高度な処理を支えるためにファンを使って冷却される。飛行速度は42km/h。瞬間的には60km/hまで出るので、自転車の走行なら十分カバーできるだろう(公道では飛ばせないので、撮影シーンは主にオフロードになると思われるし)。
映像性能もアップデートされている。静止画解像度はX1 PROが4000×3000ピクセル。X1 PROMAXは8000×6000ピクセル。動画はX1 PROが4K/60fpsに対応し、X1 PROMAXにいたっては8K撮影(※横位置のみ)を実現する。しかも1/1.3インチの大型CMOSセンサーに加えて7層構造の高性能レンズを搭載し、明暗差の大きいシーンでもディテールを損なうことなく描き出す。4段階のNDフィルターにも対応し、強い日差しの下でもシャッター速度をコントロール可能となった。
これに加えて、物理的な2軸ジンバルと、AIによる手ブレ補正を組み合わせたハイブリッドスタビライズが可能。滑らかな映像を、初心者でも簡単に撮れるという点は非常に大きい。
新登場『ビーコン&ジョイスティック』で手動操作もイージーに
HOVERAir X1 Smartはスマホでコントロールだったが、HOVERAir X1 RPO/PROMAXは小さな液晶画面が搭載されており、さまざまなプリセットが可能。もしくは、別売りのビーコン&ジョイスティックを使えば、追尾、片手での操縦、両手での操縦、スマホを使ったFPV操縦なども可能になる。1.78インチのOLEDディスプレイ付きで、最大500mの距離まで伝送可能。
AIを利用した半自動操縦によるワンボタンでの簡単なフライトと、意のままに扱う手動操縦、どちらにも対応しているところが実に素晴らしい。
このビーコンとジョイスティックは、旧モデルであるX1 Smartにも対応しており、すでに購入済みのユーザーにも恩恵があるのがうれしい。
雪原でも水上でも。耐寒仕様&地形対応
新モデルでは、環境適応性も強化されている。新開発のThermo Smart Batteryがオプションで用意され、マイナス20度でも稼働可能。水上や崖上、雪原など、過酷な環境でも問題なく使用できる。
これもオプションだが、1万2000mAhのバッテリーを内蔵したPower Caseを使うと2.5回分のフル充電をサポートできる。たとえば、スキー場の5分の滑走で約30%のバッテリーを消費し、リフト待ちの15分の間ケースに入れておくとフル充電することができる。これを繰り返すと午後いっぱい(およそ3時間を想定)の撮影が可能だという。
高性能と使いやすさを両立する独自技術が満載
Wangさんがアピールする高度なテクノロジーにも驚かされる。
まず、フライト制御や、画像処理には、高度なAI処理が利用される。これにより、指示されたフライトパターンを行いつつ、障害物を避けたりもできる。また、 PROMAXでは、後方には近接センサーを搭載。最大秒速3mというスピードでも、障害物検知と自動ブレーキにより安全性を確保する。
また、HOVERAir X1 Smartでは水面の反射などは感知できず、水上などで飛ばすと墜落する危険があったが、HOVERAir X1 RPO/PROMAXは最新センサーと独自のセンサーフュージョン技術により水上、雪上、崖上などでのフライトを行える。
フレームは日本向けのHOVERAir X1 Smartの時に独自開発されたHEM(Hyper-Elastic Material)を使っており、おそろしく強固で柔軟性が高い。この素材の強さがあまり自慢だったのか、製品には『壊せるものなら、壊してみろ』的なことが書かれた部品が同梱されている。こういうアピールもユニークなところ。
HOVERAir X1 Smartの5倍の処理能力を持つプロセッサーも、-20度でも使える特殊な組成を持つリチウムポリマーバッテリーもWangさんの自慢だ。これらの積み重ねにより、HOVERAir X1 RPO/PROMAXは高度な性能と、使いやすさの両立を実現している。
空撮の“面倒さ”を解消した次世代ドローン
PROモデルには32GB、PROMAXには64GBの内蔵ストレージが搭載されており、どちらもSDカードで最大1TBまで拡張可能。バッテリーは最大16分の連続飛行が可能。風力階級5(10.7m/s)にも対応し、強風の中でも撮影を続行できる。つまり、現場での「撮れなかった」を最小限にするための工夫が、各所に施されているということだ。
従来のドローンの課題は、操作の難しさと法規制の煩雑さにあった。HoverAirシリーズは、この2点を徹底的に解決することに注力してきた。実際、これほど簡単に離陸し、空中を自動で追尾し、鮮明な映像を撮影できる製品は他にない。日本の法規制に対してもリモートIDを内蔵するなど可能な限りの対応をしている。
新しい『空飛ぶアクションカメラ』である『HOVERAir X1 RPO/PROMAX』。製品をお預かりしてきたので、近日中に機体登録やフライトに関するレポートをお伝えできればと思う。
(村上タクタ)
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