Adobe CCといえば、どんどん新しい機能が発表されて、もはや追えてない人も多いのではないだろうか? しかし、デザイナー、イラストレーター、カメラマンなどのクリエイターの方は、新機能を取り入れれば仕事がググッと速くなって、これまでできなかったことができるようになるかもしれないので、ぜひ新機能を追いかけて欲しい。
※提携先キュレーションメディアでは、埋め込まれた動画が見られないかもしれません。その場合はリンクされているdig-itの元コンテンツをご覧下さい。
クリエイターが仕事に使うための生成AI
まずは、こちらをどうぞ。Adobe MAX Londonで紹介された新機能が、ググッと要約された動画だ。
総括すると、Adobe独自の生成AIエンジン、Firefly(ファイヤフライ)がさらに進化し、もともとビットマップ画像を想定したFirefly Image Modelはバージョン4に、さらに動画用のFirefly Video Model、ベクターモデル用のFirefly Vector Modelもどんどん進化。いわゆる、一般的な画像生成AIと違って、PhotoshopやIllustrator、Premiere Proなどのクリエイターの使うワークフローに組み込まれることで、クリエイターが実務に使えるワークフローとなっていることが特徴だ。
さらに、業界と一丸となって取り組んでいるコンテンツクレデンシャルに対応したAdobe Content Authenticity(パブリックベータ)が登場することによって、生成AIも含めて混沌としつつある著作権の問題を解決しようとしていることにも注目だ。たとえば、自分が作ったクリエイティブに、「自分が作った。連絡先はこちら」という消せない情報を埋め込むことができるのだ。さらに、「生成AIの学習には使うな」「このクリエイティブは生成AIを利用せずに製作している」といった情報を埋め込むこともできるのだ。
発表されたことの総まとめは、こちらのAdobe CC道場で使われていた画像が分かりやすい。仲尾さんありがとうございます。
Firefly ImageはModel 4に、Model 4 Ultraも登場!
では、特に注目すべきポイントについて、さらに細かくご紹介していこう。
まずは、Adobe Fireflyについて。
まず、Photoshopなどのビットマップ系グラフィックアプリで使われるFirefly Imageに最新版のModel 4に加えてModel 4 Ultraが登場した。Model 4は従来と同じ用途で使えるがより進化したモデル。Model 4 Ultraは時間がかかるが、より高精細な画像の生成が可能だ。
テキストから生成することもできるし、複数の写真のイメージをミックスすることもできる。
Firefly Video Modelは動画の生成が可能になり、Firefly Vector Modelはベクターデータの生成が可能になった。
たとえば、このグラフィックは、左上のシンプルなベクターデータを『エスニックな文様で』と指示して生成塗りつぶししたもの。Illustratorデータなので、ここから自分でアレンジを替えたり、詳細を煮詰めていったりと、実務でいろいろと便利に使えそうだ。また、『パターンを生成』で、包装紙のような連続したパターンも自動的に生成できるようになった。
Fireflyボードもユニークな機能だ。アップルのフリーボードのように、クラウドに共有される巨大なボードなのだが、複数の人が画像を貼り付けて、それを生成AIを使いながらマッシュアップできる。アイデア出しにとても便利そうだし、オンラインでこれを使いこなせるチームで使えば、とても楽しそうだ。
また、なんとAdobe以外の、GPT image generation、Google Imagen 3、Veo 2、Fluxなどのモデルが使えるようになった。
これまでの『Adobeの生成AIは権利処理のクリアな学習データから生成されている』という主張と、微妙にズレる気もするが、『クリエイターのニーズに応え、利便性を重視した』とのことで、Adobeが現実的な姿勢を取っているともいえるだろう。後述するコンテンツ認証イニシアチブを利用すれば、これらの利用履歴も画像に含めることができるのだと思う。
ともあれ、Adobe Fireflyの進歩が今回のAdobe MAX Londonでの発表の最重要ポイントであることは間違いない。
Adobeの生成AIの他社との大きな違いは『すごい画像が作れる』ではなく、『今使ってるワークフローで、必要な画像をAIの力を使って生成できる』というところだろう。いくらすごい画像が作れても『今作ろうとしている画像』が作れなければ意味がない。そういう意味で、Adobeのサービスはやはりクリエイターのためのツールなのだ。
もちろん、Adobe Stockの画像を中心に、著作権者に対価が支払われ、権利処理がクリアな画像や動画からのみ学習しているというのも大きなポイントだ。プロが商業利用し、企業のためにクリエイティブを行うためには、権利処理がクリアでなければならない。Adobe FireFlyの大きな進化は、クリエイターに受け入れられるものになっていると思う。
あなたの制作物を守るAdobe Content Authenticity登場
権利といえば、コンテンツ認証イニシアチブに対応した、Adobe Content Authenticityがパブリックベータとして多くの人が使える状態で公開されたのもクリエイターにとっては大きなニュースだろう。
このサービスは画像や動画などの成果物に、あなたが製作したというサインに相当する情報を埋め込み、さらにBehanceやインスタ、X、LinkedInなどの連絡先も埋め込める。コンテンツ認証イニシアチブは、カメラメーカーや、ニュースサイト、SNSサービスなどの企業がコミットしているオープンな規格だ。
Adobe Content Authenticityを使えば、自分の写真やイラストなどに自分が製作したものだという印を埋め込むことができる。しかも、複数のファイルに一気に埋め込むことも可能だ。
また、Adobe Frescoなどで作った手描きのイラストで「これは生成AIを使ったのではなく、手で描いたイラストだ」と主張したいこともあるだろう。そういう場合には『生成AIを使っていない』というタグを埋め込むこともできるのだ。
Photoshopもさらに便利に進化
各アプリにも、Fireflyのエンジンを使った機能がいろいろと組み込まれた。
Photoshopで特徴的なのは、オブジェクト選択ツールがより詳細に動作するようになったことだろう。特定の人物を選ぶこともできるようになったし、その人の『上着』『顔』『髪の毛』『靴』などのパーツを個別に選択できるようになった。
これで、上着の色を変えたりすることも簡単な作業になった。
動画の世界でも生成AIがさらに便利に
Premiere Proでも生成AIを使った機能がどんどん追加され、作業時間を短縮してくれそうだ。
たくさん撮影した画像から、文言を使って検索できるようになった。これまで、複数パターン撮影した映像から、自分が今使いたいクリップを探すのはなかなか手間だったが、これは便利になりそうだ。
また、生成延長でどうしても間尺を合わせるために必要だった動画を生成したり、オーバーラップさせたい背景音を延長したりできるようになった。
延長できる長さはごくわずかだが、実際にプロフェッショナルの現場で必要とされている長さなのだという。
みんなが使えるAdobe Expressも生成AIで便利に
非クリエイターのクリエイティブ支援に特化したAdobe Expressも生成AIを使ってどんどんできることが増えている。ちょっとしたバナー製作や、インスタなどにシェアする短い動画の製作なら、明らかにAdobe Expressが便利になってきた。PhotoshopやIllustrator、Premiere Proなどの特殊技能を持たない一般ユーザーにこそ、生成AI利用のメリットは多いのかもしれない。
さらに、詳しい情報を欲しい方はぜひこちらの動画を
発表された機能が多すぎて、カバーし切れないが、詳しく知りたい人は、ぜひAdobe MAX LondonのKeynote公式動画(英語)をどうぞ。
Adobe MAX London Keynote公式動画(英語)
https://www.adobe.com/uk/max-london/2025/sessions/max-london-keynote-gs1.html
日本語で概要が知りたければ、Adobe公式のCC道場が、概要について説明してくれているので、ぜひ。
(村上タクタ)