『注目の大型新製品の不在』と、非常に多くの来場者
今日、日経平均が史上最高値を更新したというが、我々庶民にはまったくその実感はない。円安で企業の利益は上がるのだが、そのお金は我々庶民には落ちてこず、海外取材に行くと日本の国力の低下、貧しさを感じる。
そんなこともあって、モーターショーや、CP+などの展示会では、日本をターゲットとした新商品の発表がどんどん減っている。新商品を目当てに取材に行く我々としてはネタに困るというのもあるし、多くのユーザーの方としては、やはり『新型』が気になるところではあると思う。
しかし、そういう気持ちとは別に、会場は大混雑で、どのブースも非常に盛況という状況が生まれている。「今日は初日とはいえ、平日なのにみなさん仕事はどうされてるのだろう……?」と不思議になるほどの盛況ぶり。この後、23〜25日の三連休はそれほど混むのだろうかと思うほどだ。
ファンの方々に受け入れられるイベントになっているのだと思う
そもそも、カメラというのは特殊な商材だ。
CP+のキヤノンのブースで撮影した立体写真。
実は、キヤノンのデュアルピクセルCMOS AF IIは、全ピクセルが深度情報を持ってる(RAWデータには、そのデータも保持されている)。
ということは、最新のEOS Rシリーズは、単体で立体写真が撮れるということなのだ。
(えーっ!)#CPプラス2024 #EOSR pic.twitter.com/Oc2DWTkZQq
— ThunderVolt(ガジェットとテクノロジーのメディア) (@ThunderVolt_mag) February 22, 2024
「『ジャパン・アズ・ナンバーワン』は遠くになりにけり」で、家電、パソコン、自動車などは、日本が首位から陥落して久しいのに、いまだにカメラだけは世界のトップブランドが日本に集中している。これは、電気系のみならず、光学系という深いノウハウが必要な部分があるかららしい。
スマホがカメラを駆逐すると言われ、たしかにコンデジは駆逐されたが、レンズ交換式カメラをはじめ、大きな光学系を持つカメラは現在も衰えることはない。生成AIの画像が増えても、カメラで撮られる写真は減っているように見えない。
高価な機材だけに毎年のように買い替えるものではない。レンズぐらいは買うかも知れないが、CP+に来ているカメラファンの多くは、何年も前に買ったボディとレンズを大事に使っている人たちに違いない(レンズ交換式とはいえ、統計上は多くの人は標準ズームと、せいぜい望遠ズームしか持ってないと言われている)。
また、とはいえ保有レンズや、使い勝手という縛りがあるから、多くの人はメーカーをまたいで買い替えることは少ない。キヤノンを買う人はずっとキヤノンだし、ソニー、ニコン、パナソニックなどについても同様のことが起こるはずだ。
となると、自社のファンに満足してもらい、何年かに一度の買い替えタイミングに、引き続き自社製品を買ってもらうために、顧客のロイヤリティをメンテナンスするのが、CP+のようなイベントの価値というところになるのだろう。そして、多くの来場者は非常に満足して、イベントを楽しんでいるように思えた。
用品ブースも大きな注目を集めていた
会場内でのブース面積は、ソニー、キヤノン、ニコン、富士フイルムの順で、それにパナソニック、シグマ、タムロン、OMデジタルソリューションズ(オリンパス)が続く。位置もあるので、一概にこの順にコストをかけているのかどうかは分からないが、ひとつの参考になるだろう。残念ながら、今年もリコー/ペンタックスの出展はなかった。
用品メーカーは、照明、バッグ、ストレージ系などを中心にアジア系のメーカーが増えているように思ったが、全般に盛り沢山で、盛況だったように思う。
用品メーカーの銀一は、今回もPeak Designを中心とした展示。WANDRDというブランドの展示にも力が入っていた。止水ファスナーも使って、しっかりしとした防水性がありそうなのが魅力的。
先日取材したEvotoも出展していて、すごくにぎやかだった。4日分用として用意した紙のカタログが、初日だけで捌けてしまったと、嬉しい悲鳴も聞かれた。Photoshopで緻密に仕上げる場合もあるが、人物写真のカバーしたいポイント(シミやアバタ)を手軽に、テクニックなしに補正できるというのは、多くのニーズを掴んだようだ。
シグマのブースのインテリジェンスの高さ
スマホの隆盛や、Samsungのカメラ進出などで、日本のカメラ業界の先行きを不満に思ったこともあるが、少なくともレンズ交換式カメラにおいては、まだ日本企業の独走は続きそうである。
昨年、4年ぶりに開催されたCP+では、少し寂しさも感じたものだが、今年は感染症の影響もなくなり、非常に盛況だったといっていいだろう。
中でも、筆者が特に気になったのは、シグマのブースだ。
シグマは500mm F5.6 DG DN OS | Sportsと15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYEという、ユニークな長短2本の素晴らしいレンズを発表していた。
しかし、それにも増して、意義深く感じたのは膨大な写真集の展示だ。しかも、それらを自由に手に取ってページをめくることができるようになっていた。
どの写真を見ても、「どうやって撮ったのだろう? レンズは? 絞りは? ライティングは?」と思わされるし、「写真の価値とは何だろう? 解像度の問題ではない。芸術性? いかに心を打つか? どうやったらこの写真を撮れるのだろう?」と深く考えさせられる。
結局のところ、写真は『文化』なのである。
注目の大型新製品はなかったけれども、多く集まった写真ファンの方々や、シグマの展示にそれを教えられたような気がする。
みなさんも、三連休に会場に足を運んで、ぜひ体感してみていただきたい。
(村上タクタ)
昨年の記事はこちら。