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政府『デジタル市場競争会議』がiPhoneのApp Storeの自由化を進めると何が起こる?

以前にもレポートした通り、政府の一部に『公正な市場競争を行うため』に、App Storeを介さずにアプリを買えるようにするべきだと迫る議論があり、年度内にあわよくば駆け込み成立を図ろうとしているとの話もある。App Storeが自由化されたら何が起こるのか、よく分かる動画を拝見したので、その内容をレポートしておこう。

安心してアプリをインストールできる環境が壊れる

みなさんは、日々、メールやメッセージを開く時に、「スパムではないかな?」と気をつけていらっしゃることと思う。不用意なリンクを踏むと、やっかいなことになるのはご存知の通り。また、SNSでも、よく分からない海外からの友達申請が数多くあり、うっかり承認してしまうとこれまたやっかいごとに巻き込まれる。

しかし、iPhoneのアプリだけは安心して使える。これはアップルが膨大な手間ひまをかけて審査してくれているからだ。「審査を通すのが大変」という話は聞くが、それだけ微に入り細に入り審査が行われているということでもある。実際に、ベテランのiPhoneアプリ開発者の方は、その審査に感謝しているという。

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2025年10月27日

これがもし、App Storeを介さずにアプリを買えるようになったら、我々はこのささやかな安心さえも失ってしまう。我々はアプリを買う時に非常に慎重にならないといけないし、うっかりインストールしたアプリを介して、個人情報がダダ漏れ……ということにもなりかねない。

いわゆる『サイドローディング』可能な状態にする……ということだが、最近、サイドローディングという言葉に反発が多いと悟ったのか、政府は『アプリ代替流通経路』と姑息な感じで呼び方を変えているが、まぁ、問題の根本は同じことだ。

当初導入するといわれていたEUでさえも、履行期限が3月に迫る中、サイドローディング可能化強制はさすがに危険と思ったのか、昨秋からセキュリティの調査を始めているという。施行状況や影響もわからないまま、EUに続き日本だけが危険の中に突っ込んでしまいかねない状況だ。

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2025年10月27日

ダークウェブで売っているハッキングアプリ

多くのAndroidユーザーの方は、 Androidストアのみからアプリを購入していることと思う。

ただ、Androidの場合は、他のアプリストアからアプリを購入したり、セキュリティレベルを下げて直接インストールすることもできる。この場合、どんなことが起こるのか、調べている研究者の方に勧められて動画を拝見した。

ただし、ハッキングの方法を解説している動画なので、ここではリンクを公開しない。また画面キャプチャは製作者の方の許可を得て行っているが、一部アプリ名などは筆者の判断でモザイクをかけた。

まず、こちら。ダークウェブではハッキング用のAndroidアプリが販売されている。

160〜220ドル(約2万3000〜3万1000円)で、ハッキング用のアプリが販売されているのだ。このアプリをインストールさせることに成功しさえすれば、対象者の情報は筒抜けになるということだ。

日本語サイトで販売されているアプリもある。調べた人によると価格は7万7000円。このお金を口座に振り込むことで、このアプリを入手可能なのだという。


機能はこちら。位置情報の追跡、音声の録音、アドレス帳の閲覧、SMS記録の閲覧、電話記録の閲覧、インストールアプリのリスト、クリップボードや通知の閲覧……など、ありとあらゆることが可能になっている。


また、ハッキングをサービスとして提供している会社さえある。

同様のアプリのソースを購入することも可能

同様のアプリは、GitHubにも公開されている。研究者の方は、このコードを入手し、偽装してインストールすることが可能なAndroidアプリを制作してみたという。少々時間はかかったそうだが、上記アプリと同様のアプリを開発可能だったという。

このアプリをインストールすることで、上記のような情報を外部に容易に送信することができるようになるという。上の画面は、インストールしているアプリの一覧の情報を取得したところ。

そして、下は電話帳の中身を取得したところ。

これらのことが容易に可能になるという。もちろん、ヘルスケアアプリの内容も、これから導入されるというマイナンバーの情報も取得することができるはずだ。

もちろん、こういうアプリをインストールしなければいいだけのことではあるが、ではこのアプリが『便利なキーボードアプリ』とか、『格安で商品を買えるクーポンを得られるアプリ』『ムフフ❤️な動画を無料で見放題なアプリ』などに偽装されていたらどうだろう? 「ちょっとグレーな動画を見るためのアプリ」だと思ってセキュリティレベルを下げてインストールしたら……ということが起こり得ないと言えるだろうか?

誰がアプリストアの開放を望んでいるのか?

日本の国際競争力の低下は残念なことだ。我々がアップルのApp Storeや、Google Playに課金するために、国内の資本が海外に流出してしまうというのも由々しき問題だとは思う。しかし、それのために、我々の安全なスマートフォン環境を売り渡してもらっては困るのである。

AndroidユーザーでもGoogle Play以外のストアを利用しているのはわずか3%である。iPhoneのセキュリティレベルを下げたところで、『公正な市場競争』が実現するわけではない。

答申で「30%の売上を搾取されてる」というアプリ開発者だって、私の知る限りではApp Storeの存在に感謝こそすれ開放して欲しいなんて言ってる人はいない。

では、誰が内閣官房デジタル市場競争本部に、この法案を通せと要望しているのだろうか? 不思議でならない。AndroidでGoogle Play以外のストアといえば、『Amazonアプリストア』、ハードウェアメーカーが提供する『Galaxy Store』『HUAWAY AppGallery』、そして通信キャリアが提供する『dマーケット』『auスマートパス』あたりである。それとも、他に、iPhone用のアプリストアを立ち上げたい人がいるのだろうか?

誰が、この法案を要望しているのか、筆者にはさっぱり分からないが、さまざまな不安の残る中、サードパーティのアプリストアを広めるために、我々の安全を売り渡してしまうような真似はやめて欲しいと、心の底から思うのである。

日本の国際競争力を高めるために、他にもっとやるべきことがあるような気がするのだ。

(村上タクタ)

この記事を書いた人
村上タクタ
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村上タクタ

おせっかいデジタル案内人

「ThunderVolt」編集長。IT系メディア編集歴12年。USのiPhone発表会に呼ばれる数少ない日本人プレスのひとり。趣味の雑誌ひと筋で編集し続けて30年。バイク、ラジコン飛行機、海水魚とサンゴの飼育、園芸など、作った雑誌は600冊以上。
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