筆者は普段EOS R6 Mark IIのサブ機としてEOS R10を使ってるので、EOS R8を借りるついでに、EOS R50も借りてみた。
が、失敗したのが、その時に「レンズキットで」と言うのを忘れていたので、送られて来たのはボディ単体だった(泣)あらためて借りても良かったのだが、まぁあくまでR8のついでだったので、申し訳ないR10で使ってるRF-S18 -150mmで試用した。横着してすみません。
10万円以下で買う方法がある唯一のEOS Rボディ
タイトルに10万円を切ると書いたが、キヤノンオンラインストアでボディ単体は11万1100円(税別)。値引きのある家電量販店などで買ってようやく、9万9990円というような値段になる。ちょっと盛ったタイトルですみません(だが、ギリギリウソではない(笑))。
なぜ、「10万円」と書きたかったかというと、一眼カメラに興味が少しある……という方に「10万円で買えるなら欲しいな」と思って欲しいという下心があったからだ。
だが、さらに申し訳ない。上記の価格はボディ単体の価格で、実際にはレンズが必要。一番安価なRF-S18-45 IS STM レンズキットで12万6500円。RF-S55-210mm F5-7.1 IS STMが追加されるダブルズームキットは15万6200円だ。
おそらく、本来キヤノンは最初の計画時はRF-S18-45 IS STM レンズキットを市場価格10万円以下にしたかったのだと思う。だが、昨今の円安でそうはいかなくなったのだろう。
上位モデルと同じセンサーやAFがお得
EOS R8がEOS R6 Mark IIのコストダウン版であるのと同じように、EOS R50はEOS R10のコストダウン版と捉えていいと思う。EOS R10のボディ単体はキヤノンオンラインストアで13万2000円なので、それよりは2万0900円安いことになる。
2万0900円足してEOS R10を買うか? それともEOS R50を買うのか? が多くの人が迷う部分だと思う。
EOS R50の価値は最も安価で、もっとも手に取りやすいEOS Rであるということにある。搭載センサーEOS R10と同じ約2420万画素のAPS-Cセンサー。画像エンジンはDIGIC X。つまり、一眼モデルならではの美しい画像を楽しめる最小のボディだということだ。
さらに、一番価値が高いのは上位モデルと同じデュアルピクセルCMOS AF IIを搭載していることだろう。これにより、被写体を認識して確実にフォーカスしてくれる。特に価値が高いのが、人物、それも瞳を認識してくれること。絞りを開いた被写界深度の浅い状態でも、確実に人の瞳にフォーカスし続けてくれるのは素晴らしい。
ソフトウエアだから一度開発すればコストは同じとはいえ、8倍近い価格のEOS R3と同じデュアルピクセルCMOS AF IIが搭載されているというのは、本当に価値が高い。
また、RFマウントを持つ一番安いボディだということにも価値がある。本機のために買ったレンズの多くは(RF-S以外は)上位モデルでも使うことができる。たとえば、本機にRF100-400mm F5.6-8 IS USMを装着したらこんな感じ。十分に実用的だ。
さらに、APS-Cセンサーなので、画角としては 1.6倍の160-640mmになる。それはそれで使い勝手があるという人もいるだろう。
EOS R50は、EOS R10より2万0900円だけ安い
では、R50の価格に惹かれた人が、R50で満足するべきか、それともあと2万0900円を出してR10を買うべきかという話題に移ろう。
先ほど述べたように、単純にスペック表を比較すると、EOS R50(右)とEOS R10(左)の差は小さい。
マウント、センサー、バッテリー……などは共通だ。
違うのは操作系統。R50にはマルチコントローラもなければ、サブ電子ダイヤルもない。
せっかくの一眼レフだから、自分でいろいろ設定を変更させつつ撮影しようと思っても、ちょっと操作系統がプアではある。ただ、EOS Rシリーズのレンズには、もうひとつコントロールリングが設けられているから、まず初心者の方にとっては十分だともいえるだろう。
もちろんコントロールリングやサブ電子ダイヤルが設けられているEOS R10の方が操作系が充実しており、撮影しながら絞りやシャッタースピード変更することができるので便利なのはもちろんだ。
ただ、R50の方は絞りやシャッタースピードを変更して工夫するよりは、アドバンスA+や、クリエイティブフィルターを使って撮影して欲しいということなのだとは思う。
クリエイティブフィルターはスマホのアプリでの加工のようなものだが、元画像の質が高いので、加工してみても画質の良さが感じられる。
2420万画素の画像を元に、こういういろいろな効果を施して楽しめるのだから、これはこれで楽しい。設定次第でバエる写真も撮れることだろう。
レンズを交換できる楽しみが開ける
マウントが同じだから、カメラに興味が出て来たらレンズを買い足していけるというのも楽しみなポイントだ。たとえば、こちらがRF-S18 -150mmで撮った写真(絞りはF6.3)。
対して、使い勝手の良い単焦点レンズであるRF35mm F1.8 MACRO IS STM(APS-Cなので、35mm換算で56mm相当の画角になる)でF1.8まで開けて撮影すると、こんな感じに『ボケ』を楽しむことができる。
こういう絵が撮れるなら、写真撮影も楽しくなってくると思うのだが、いかがだろうか?
ストロボに関しては少々要注意
ただ、ちょっと困るなと思ったのが、そのままでは従来型のストロボが使えないということだ。よく見ると、ストロボシュー部分の端子が省略されいてる。
従来型ストロボを利用するためは変換アダプターであるAD-E1が必要。AD-E1は5380円(キヤノンオンラインストア価格)するので、安価なR50を買う理由がまた少し減ってしまう。
敷居はEOS R50の方が低い。だが、ThunderVolt読者には、2万0900円を払ってもEOS R10を勧めたい
最小のRFマウントボディであることに意義はあると思う。実売価格で10万円を切るのであれば、我が子の写真をきれいに撮りたい。運動会の写真を望遠レンズでバッチリ押さえたい……と考えている人にとっては値打ちがあると思う。
ダブルズームキットの望遠レンズは、RF-S55-210mmであるからAPS-Cの本機で使うと35mm換算で、336mm相当になる。これなら、運動会のゴールラインからスタート地点を狙える。さらに、EOS R3ゆずりのデュアルピクセルCMOS AF IIを使えば、我が子の顔どころが瞳にフォーカスしたまま電子シャッターで秒間15コマ/秒、電子先幕で秒間12コマ/秒の撮影が可能だ。これは運動会無双カメラかもしれない。
そういうイメージで考えると、本機をEOS R Kissと呼んでもいいようなものだが、どうやらワールドワイドでネーミングを共通にしたいのと、Kissに付きまとう『ママ撮って!』のイメージを嫌ったのだと思われる。つまり、男性にも買って欲しいということだ。
しかし、本機の内容は実質的にEOS R Kissと言えるもの。一眼の画質と、レンズ交換によって得られるパフォーマンスは欲しいが、難しい設定はやりたくないという人にはお勧めた。
ただ、筆者は2万0900円の差であれば、あとあと絞りを絞ったり、シャッタースビードを加減したりする楽しみを学べるようにEOS R10を勧めたい。ガジェットが好きでより深い沼に入りたいと思っているThunderVoltの読者の方ならなおさらだろう。
入り口の敷居はEOS R50の方が低い。しかしEOS R10には、奥深くに広がっている道に至る方法が用意されているのだ。
(村上タクタ)