“抵抗”の物語への原点回帰 『ヤマトよ永遠に REBEL3199』

劇場映画第3ヤマトよ永遠に1980年)の諸要素に新解釈を加え、全26話のシリーズに再構成した本作。ヤマトの物語は抵抗”から始まったと語る福井晴敏総監督と、宇宙戦艦ヤマトを敬愛するヤマトナオミチ監督に新たな船出の決意を聞いた。

とにかく第1作目のスピリットを忘れずにやろうと思った(福井)

福井晴敏/ふくいはるとし(左)

昭和43年、東京都生まれ。小説家・アニメ作家として活躍し『亡国のイージス』や『機動戦士ガンダムUC』で知られる。『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』から脚本、シリーズ構成として参加。今作では総監督も務める

ヤマトナオミチ(右)

昭和48年、山口県生まれ。アニメ監督、日本アニメフィルム文化連盟理事。90年代前半からアニメ制作に携わり、『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』や『マクロスΔ』といった作品に携わる。今作では監督という立場で現場を指揮

ーーいよいよ『ヤマトよ永遠にREBEL3199 第一章 黒の侵略』が上映となります。今作に向けてのお気持ちをお聞かせいただけますか。

福井 こんなにお待たせしてしまってすみません(笑)。まずは、それが第一声ですね。本当は前作の『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち』から1年と空かずにと思っていたのですが2年以上の月日が過ぎてしまいました。でも結果的に『宇宙戦艦ヤマト』50周年に重なったので、そういう導きもあったのかなとも感じています。

ヤマト 僕は昭和48年生まれでして『ヤマト』は再放送で観た世代。アニメオタクからすると教科書的・象徴的な存在で、『ヤマト』は憧れの一つでした。ほぼ同じ年月を一緒に過ごしてきた作品と自分の人生を重ね合わせる部分もあります。それに私は本名が「大和」なので、今、こうやって関わることができるとは思いもしなかったです。運命的なものを感じてます。

ーー福井さんは『宇宙戦艦ヤマト 2202愛の戦士たち』から『ヤマト』に参加されていますが、どのような思い出がありますか。

福井 自分はそれまで『ガンダム』の仕事をやっていたのですが、たまたま『ヤマト』のお話をいただきました。実はその頃ちょうど『ヤマト』の第1作目をDVDで再見していたんです。息子が当時6歳ぐらいでそろそろいいかなと思って試しに見せてみたんですね。そしたら激ハマりしてプラモまで欲しがった。そんなタイミングでこの話がきて「これはいかねばならない」と思いお受けしたんです。でも、ハードなオーダーでしたよ。「『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』にはしないでくれ。でも、『さらば』みたいに泣かせてくれ」という! 自分はとにかく第1作目のスピリットを忘れずにやろうと思った。あの作品の社会性であったり反語性、スピリットを受け継いだまま続編が作られていったらどうなっただろうというのがスタートでした。

ーー今作でも福井さんは「ヤマトは抵抗の物語」と語ってらっしゃいますね。

福井 『ヤマト』は抵抗から始まった作品だと思っています。そして今は特に抵抗しなければいけない時代でもある。たとえばAIに人間の職分を切り売りしていいのか。そして、いつ戦争に巻き込まれてもおかしくない状況になっている。今までだったら答えが一つしかなかったかもしれないけれど、もうそれが通用しない時代で、10年、20年、30年と時間ばかりが経ってしまっている。本当に何か変えないといけなくなったのではと感じています。でも、古臭いと言われようとなんだろうと、やっぱり絶対に守らなきゃいけない人間性っていうものはどこかにあるんじゃないか。失われた30年、お前ら何をしていたんだっていうことに対し、「我々の世代はこう感じていた、こうしたかった、そして今これを守ろうと思っている」と、意見として言わなければならないんじゃないか。それは我々が同世代で再確認する必要もあるし、その下の世代にも伝えていきたい。先程お話したように僕が携わってきた『ヤマト』は1作目のスピリッツを埋め込み、現代性、即時性をもたせてきたつもりですが、今回はそういう意味でも集大成。『ヤマト』の1作目も滅亡することに対する抵抗ではないんですよ。こういう事態を引き起こしてしまうということ、そのものに対して人間は抵抗しなきゃいけない。それこそがテーマなんです。リメイクしつつオリジナルに対して我々の考えを返している。お会いしたことはないのですが、原作の西崎義展さんのオリジナルには毎回どこかでにらまれている感じがあるんです。「ちゃんとやれよ」と言われて「今回こんな作品ができました」と返す。そんなやりとりを心の中で繰り返しています。

50年間ずっとファンがいる作品。「先輩、ここまでやりましたよ」という想いでがんばります(ヤマト)

ーーヤマトさんはリメイク・シリーズの本作で監督を務めるにあたりどのような想いがありますか。

ヤマト 何せ50年間ずっとファンがいる作品です。きっと自分よりも詳しいお客さんがたくさんいる。そんななかでこの作品と向き合って、ちゃんと提示できる作品にするというのは自分一人だけの力では難しいと感じました。たくさんのスタッフや専門家の皆さんの力によって成立するものだと思うんですね。複雑なフローの作品でもあるんです。写実的な部分も踏まえつつ、同時に印象的な部分も作品の中で成立させていく。いろいろな仕事を多くの人にお願いしてきました。「福井さんがこうおっしゃっているから」と福井さんのお名前も使わせていただきながら(笑)、皆さんの力を借りて、日々苦労しているという状態です。これだけ歴史のある作品ですから本当に身が引き締まる想いです。精一杯やれることを考えていますね。

ーー最後に今作の一番の見どころを教えてください。

福井 容量限界までいろいろ詰めこみました。まだ第一章なので、これでもおとなしい方(笑)。これからもっと大暴れしていきます。でも絶対に期待は裏切らないものになっていると思います。また今回が“初めての”『ヤマト』という人も大丈夫です。現実を忘れることも映画の大事な役割ですが、「今自分の現在位置がどこにあるだろう」ということを教えてくれるのもまた、映画の役割だと思っています。自分が生きている世界を客観化できる。この作品は、『ヤマトよ永遠に』という原作の楽しいポイントは押さえつつも、現実の客観化をしっかりとやっています。いろいろなことが起きている時代ですが、「世の中の流れは本当にこれでいいのか、どこが踏ん張りどころなんだろうか」というようなことを一度落ち着いて考えられるような作りになっているんです。初めての方のためにとてもていねいなあらすじ動画を作りました(笑)。それを観たらより今作を理解いただけると思います。

ヤマト 突き詰めればきりがない世界ですけど、今のアニメ業界ではこういう作品を作ること自体もどんどん難しくなっていっています。働き方の問題もあるし、技術も世代もどんどん変わっていっていく。こんなハードな作品を作る土壌が失われていっているのも事実なんです。そのなかで精一杯、ファンの方のお眼鏡に叶うよう努力していくしかない。「先輩、ここまでやりましたよ」という想いで頑張りたいと思います。また初めて観てくださる方も観やすい作品です。今作はある意味オーソドックスな部分も多く、最初は細かい設定などよくわからなくてもおもしろさ感じていただける内容だとも思います。いろいろわかるようになったら自分なりに探っていただき、このキャラはどういう設定なんだろうと後々チェックしてもらうのもおもしろい楽しみ方ですね。

ーー『ヤマト』がこれだけ長期間続く作品になるとは、オリジナルを作られたスタッフ達もきっと想定されてなかったと思います。

福井 そうですよね。時代も情勢も変わりました。僕らが『2202』を作っていた頃と比べても人件費などかかるお金は大きくなっている。そういうところの長尻を合わせるなど、アニメ業界は本当に大変なことも多く、完成まで時間がかかってしまいました。でも、結果的にリメイク・シリーズから入ったお客さまと時間を共有できている、その強みもあると感じます。小学6年生ぐらいで『2199』を観たという人はもう大人になっているでしょう。彼らがまた新しいお客さまとしてこれからも長く続いていくと思いますし、そういう人たちがいつまでも待っていてくれる作品にしたいと思っています。

ヤマトよ永遠に REBEL3199 第一章 黒の侵略

ガミラス本星とイスカンダル星が消滅した事件から二年が経過した西暦2207年。謎の巨大物体グランドリバースが地球の新首都へと降下し、その多脚戦車や敵兵に首都は制圧されてゆく。その時、旧ヤマト艦隊クルーに極秘指令が下った…。侵略者の驚くべき正体とは!? 人類の命運を賭けて、未踏の時空へと宇宙戦艦ヤマトの航海が始まる。

スタッフ原作:西﨑義展/製作総指揮:西﨑彰司/総監督・シリーズ構成・脚本:福井晴敏/監督:ヤマトナオミチ/脚本:岡 秀樹/キャラクターデザイン:結城信輝/メカニカルデザイン:玉盛順一朗、石津泰志、明貴美加/CGプロデューサー:後藤浩幸/CGディレクター :上地正祐/ 音楽:宮川彬良、兼松 衆、宮川 泰/音響監督:吉田知弘

アニメーション制作:studio MOTHER/アニメーション制作協力:サテライト・YANCHESTER/配給:松竹ODS事業室/製作 宇宙戦艦ヤマト3199製作委員会

719() 上映開始

Ⓒ西﨑義展/宇宙戦艦ヤマト3199製作委員会

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昭和50年男 編集部
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昭和50年生まれの男性向け年齢限定マガジン

昭和50(1975)年生まれの男性に向けて、「ただ懐かしむだけでなく、ノスタルジックな共感や情熱を、明日を生きる活力に変える」をテーマに、同世代ならではのアレコレを振り返ります。多彩なインタビューも掲載。
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