世界でも類を見ないレザーアーティスト「MOTO」創業者、本池秀夫の革と歩んだ50年。

革という素材を使い、時に昔のアメリカの日常の一瞬を切り取ったミニチュアの世界を作り、時に動物の生をダイナミックに表現した作品を作る、世界でも類を見ないレザーアーティスト、本池秀夫さん。本誌読者の方なら、ご存知の方も多いのではなかろうか? そんな本池さんがMOTOというブランドを創設したのが1971年のこと。革と向き合い、50年。彼の生み出したMOTOも、本池秀夫という男のイズムを受け継ぎ、様々な挑戦を続けている。ここでは、創業者である本池秀夫さんの軌跡を振り返りながら、MOTOの原点、そして未来を紹介していく。

当時を懐かしむように語ってくれた本池秀夫さん。とはいえ、決して立ち止まることはない。次なる創作への意欲も衰えてはいない。2年前に、等身大のレザーでできたアート作品「サイ」を作り上げ、次の作品を画策中だとか

「旧いもの」そして「アメリカ」それが僕の原点だった。

「革という素材の魅力はね、温かさ、そして触った時の感触にあるんですよ。本来、捨てられる部分ですからね、革は。もともと生きていたものが死んで、また再び生き返らせる。僕の作品の前で、見た人がみんないろいろ語るわけです。僕は、それが“生きている“ということだと思うんです」

本池秀夫さんは鳥取県米子に生まれた。近くにアメリカ軍の基地もあり、進駐軍やGIが闊歩していた街。ハーレーダビッドソンWLAのサイドカーにメールバッグを積んだ兵隊を見たこともしばしばだった。憧れと畏れ。本池少年はそんな日常を、ポケットに入れた革の端切れを握りながら見つめていた。革を触ると、なぜか安心できたという。本池秀夫さんの「旧いモノ好き」「アメリカ好き」は、この街の風景が出発点だったかもしれない。

そんな彼が上京するのは18歳の時。東京の青山セントラルビルに、住居兼アトリエを構えた。そこには、後に日本を代表することとなるアーティストやデザイナーなどが集まっていた。中でも印象的だったのは、後のゴローズの創業者、高橋吾郎氏だったという。

「吾郎さんが僕に言うんだよ、『ハーレー、すごく面白いからお前も買え!』って。吾郎さんがその場でバイク屋に電話して、買うことになった(笑)」

初めて買ったハーレーは、’85年式のFLH。これが、後に本池さん生涯の趣味となるバイクとの出会いだった。そんな仲間との触れ合いの中で刺激を受けながら、1971年、革を作る会社としてMOTOを創設する。本池さんが20歳の時だった。

その後、寝袋ひとつ持って、ヨーロッパ放浪に出かけたという本池さん。見るもの全てが新鮮で刺激的だった。スペイン、南仏、イタリア……ローマでふと立ち寄った骨董品屋で、本池さんは運命の出会いを果たす。それは、人形作家が作った磁器の人形だった。

「佇まいが生きてるみたいでね、素晴らしかった。これを革で作ったら面白いんじゃないかと」

革人形作家、本池秀夫の誕生だった。とはいえ、世界中に革で人形を作る人間は一人もいない。全ては手探りのスタートだった。もともと、ノーマン・ロックウェルの世界観が好きだったということもあり、旧きよきアメリカの日常を、革人形で切り取った。当時の衣服や靴、バイクなど、全てヴィンテージを参考にしながら作り上げていく。彼の作品が、よりリアルで精緻なのは、こうした背景があるからなのだ。そして、これこそが、現在のMOTOへと続く原動力ともなっている。

2021年、アート活動50年の集大成として、故郷である鳥取県米子に「本池美術館」を開館させた。彼の作品が並ぶ、世界で唯一無二の「レザーアート」のミュージアムだ。それと同時にクラフト活動も本格的に再開させた。それがMOTORのネイティブシリーズ。本池さんがシルバー彫金を行い、彼の世界観を表現している。

世界で類い稀なるレザーアーティスト、本池秀夫。そして、彼が作ったMOTO。これからの未来が、楽しみで仕方がない。

2021年、MOTO創業50周年を迎え、クラフト活動を本格的に再開させた本池秀夫さん。まさに原点回帰。いまシルバーの彫金の真っ最中。この作品が手に取れる我々は幸せだ
1937年式のインディアン4(フォー)に跨る本池さん。クラッチやギアなど、全てハーレーと位置が逆なので、現在練習中なのだとか。財布とバッグは、クロコダイルとイタリアンレザーを使ったMOTORの新作

MOTO、その先の未来へ。

現在、MOTO、そしてMOTORは、本池秀夫さん、次男の作人さん、三男の良太さんが携わっている。ちなみにMOTORは、MOTOのROOTSを意味し、本池秀夫さんの趣味であるモーターサイクルカルチャーや、モノ作りに影響を受けたミリタリーやネイティブアメリカンをテーマにした、ウエアを中心としたライン。創業から50余年を迎え、本池秀夫さんの哲学を受け継ぎつつも、新たなる挑戦を続けていくMOTO、そしてMOTOR。革の可能性を広げる実験的なアイテムや、エキゾチックレザーなどを使ったもの、シルバージュエリーなど、その未来から、目が離せない。

自宅ガレージで談笑する本池秀夫さん(中央)、次男の作人さん(右)、三男の良太さん(左)。お二人にとって、秀夫さんは父であり、同志であり、なんでも話せる友人でもある

MOTORの新作であるネイティブシリーズと、クロコダイルを使ったライン。ネイティブシリーズは、本池秀夫さんも商品製作に携わっている。クロコダイルシリーズは、ベジタブル鞣しのクロコを使用し、レザーはイタリアンバケッタレザーを採用。エイジングも楽しみなアイテムとなっている
こちらはMOTOのスペシャルライン。クロコダイル、パイソン、エレファントなどのエキゾチックレザーを墨染めしたモデルだ。11〜12月のクリスマス時期限定受注商品
MOTORの新作、ウォッシャブルホースラフアウトパンツ。米軍のカーゴパンツをモチーフに、洗える馬革を採用したモデルだ。15万4000円

【問い合わせ】
MOTO
http://www.motostyle.jp

(出典/「Lightning 2025年1月号 Vol.369」)

この記事を書いた人
モヒカン小川
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モヒカン小川

革ジャンの伝道師

幼少期の革ジャンとの出会いをきっかけにアメカジファッションにハマる。特にレザー、ミリタリーの知識は編集部随一を誇り、革ジャンについては業界でも知られた存在である。トレードマークのモヒカンは、やめ時を見失っているらしい。
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