電気風呂を極めた男の話。

愛好家が増殖中のスーパー銭湯やサウナなどに代表される入浴カルチャー。そんな時代が来る以前からほぼ毎日銭湯に通っているのが、ジャパンデニムでは知らない人はいないフルカウント代表の辻田幹晴さん。

まさにライフワークとして銭湯に通い続ける大先輩が教える銭湯のあれこれ。個人的におすすめの銭湯から入浴の仕方、さらには楽しみ方まで、長年銭湯に通い続けてきたことで到達した「入浴道」をお届け。今回は銭湯にある「電気風呂」についての辻田さんならではのストーリーをお届け。

電気風呂を克服し、気がつけば詳しくなってる自分がいました。

銭湯でたまに見かける電気風呂の電極板にピッタリ背中をくっつけて、電流を身体に巡らせ小刻みに揺れている高齢者。

1番びっくりしたのは、潜った状態で頭を電極板にくっつけている人を見たとき、一瞬「えっ、生きてる? この人大丈夫なのか?」としばらく見守っていたら、サクッと立ち上がり気持ちよさそうな顔をしていたので、安心したのと同時にあまりの衝撃に興味が湧いてしまい声をかけてみました。

「おじさーん、それ頭までいって大丈夫なん?」と、すると「お兄ちゃんもやってみ! これが1番気持ちええんやから!」

「……ほんまに? また今度やってみるわ!」と言ったものの、まだ試したことはありません。

以前電気風呂は苦手で、とはいえ幾度かトライはしたこともありましたが、電極板から20cmくらい離れてないと、身体が硬直してしまい、ちょっとした恐怖を感じてしまうため、自分には向いていないんだと勝手に決めつけていました。

しかし、この老人を見たことがきっかけで、頭に当てられるのならいけるでしょと思い、自分も電気風呂に入れる大人になりたいと思い、思い切って電極に近づいてみたところ、なんなくクリアできたわけです。

ん? 電気風呂は気合いでなんとかなる、そう、若かりしころ、水風呂に入ると心臓麻痺になるような気がして、恐る恐る入ってたころと全く同じ感覚だったんですね。

今や、水風呂に躊躇なく入れるのと同様、電極板に背中を付けるのが当たり前になっております。

「電気風呂と水風呂を交互に入る、温冷浴ならぬ電冷浴がいいよ」と友人に勧めて(自慢)していた矢先、関西の銭湯の顔役とも言われている桶美師匠くんからあるとんでもない人を紹介されました。

それは東京の公衆浴場、全電気風呂168カ所を制覇しElectric Bath Handbookという究極のオタク本を出版し、電気風呂の魅力を伝えているけんちん氏でした。

彼曰く、電気風呂は今や大きく分けて小西と坂田という2社しか製造しておらず、その違いは電極板のデザインの違いがあるのと、電気の感覚が少し違うのだと話してくれました。

肝心の効能については、電流の刺激によって筋肉を収縮させ、血行を促進する効果があります。ということでした。

私の銭湯通いが高じて、フルカウントならぬ「フロカウント」というブランドまで作ってしまいました。これは毛筆で書かれた「湯守」の文字を濃淡のあるプリントで再現した「The LOAD OF THE BATHS」Tシャツ。4950円(FULLCOUNT)

好きになったものはなんでも極めてみたいと思う性分の自分も、電気風呂がある銭湯では必ず入るようになり、今では小西製と坂田製の違いも電流で感じ取れるようになりました(笑)。

ある日、電極板のデザインは坂田なのに電流のアタリは小西っぽい電気風呂にあたり、不思議に思っていたところ、けんちん氏に銭湯で会う機会があり、そのことを聞いてみると。

「あそこは小西の電極板が割れたか何かで、坂田の電極板に交換されているので、辻田さんの感じた通り小西で正解です。もう辻田さんも電気風呂マスターですね!」と免許皆伝をいただき、誇らしい気持ちになりました。電気風呂ひとつを取っても、長年銭湯に通っているとストーリーができるものです。

3回目の連載でかなりコアな話をしすぎたので、次回は流行りのプライベートサウナか何かのレポートでもしますので、皆様ぜひとも楽しみに。

この記事を書いた人
辻田幹晴
この記事を書いた人

辻田幹晴

温冷浴マスター

ジャパンデニムの雄「フルカウント代表」。40歳のときに癌を患い、そのとき医師から体を温めて基礎体温を上げることと、血流を良くすることが癌の予防になると言われたのがきっかけで銭湯に毎日行くように。かれこれ16年、ほぼ毎日銭湯に通う。今流行りのサウナーではなく、(サウナにも入るが)色々経験した結果、最近はぬる湯にハマっている
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

トラッドの相棒にドゥニームのジーンズを! ウエアハウスが1988年のクラボウデニムを再現

  • 2026.09.17

1980〜90年代に日本のセルビッジジーンズの先駆けとして一世を風靡したデニムブランド「ドゥニーム」。同ブランドの創業当時のレシピをもとに、再始動を手掛けたのが「ウエアハウス」だ。彼らの徹底的な研究・解析によって生み出された至極の1本は、まさにオーセンティックそのもの。そして、本当の意味での“良い色...

日本の技で蘇る、旧きよきアメリカンベーシック。100年前の起毛機を使った「DISCUS」のスウェット

  • 2026.09.18

「ディスカス アスレチック」の「MADE IN JAPAN」プロジェクト。和歌山で受け継がれる約100年前の起毛機とそれを支える職人の技。そのこだわりから生み出されるスウェットの魅力を追った。 スウェットの裏側に宿る百年起毛 1973年、アメリカで誕生した「ディスカスアスレチック」。その歴史を日本の...

Why Banana Republic? 2nd編集部イチ押し「バナナ・リパブリック」アイテムと、ブランドの魅力を徹底解説

  • 2026.09.16

1978年にアメリカ・カリフォルニア州で創業したバナナ・リパブリック。クラシックとモダンが共存する唯一無二のスタイルや歴史を紐解くことで、我々が彼らのプロダクトを手に取るべき“理由”が見えてくる。(記事をご覧いただいた方への特典を最後に紹介しています) [caption id="attachment...

究極のクラシックを背負う。英国発バッグブランド「Billingham」のカメラバッグ『System-1』

  • 2026.09.24

英国生まれのバッグブランド「ビリンガム」。そして同ブランドを代表するモデル[システム-1]。"用の美"を極めたその実用性とルックスは昔も今も、服好きの心を捉えて離さない。 “機能美”を極めたクラシックバッグの筆頭 創業は1973年。写真を撮るのが大好きだったという創業者のために妻がカメラバッグを手作...

無垢の金属、輝く伝統。純金や純プラチナを使った「市松」の究極の逸品

  • 2026.09.25

純金や純プラチナなど、純度100%の軟らかい金属をアクセサリーにするためには非常に高い技術が必要だ。それを可能にするのが「市松」。約30年にわたって培った“叩く”技術が可能にする唯一無二のリングの輝きに迫る。 熟練の技なくしては完成しない究極の逸品 原材料高騰の影響もあって、希少性が高まっている純金...

Pick Up おすすめ記事

毎日に、最良の定番。B.V.D.の「GOLD」は昔ながらの良さと、いま欲しいバランスを兼ね備えたTシャツ

  • 2026.09.16

長く愛されてきた定番には、変わらない理由がある。B.V.D.の「GOLD」もそのひとつ。肌着として培ってきた心地よさをそのままに、今の気分で一枚でも着られるリラックスフィットが加わった。昔ながらの良さと、いま欲しいバランス。その両方を備えた、新しい定番のかたちを見ていこう。 変わらない着心地にゆとり...

トラッドの相棒にドゥニームのジーンズを! ウエアハウスが1988年のクラボウデニムを再現

  • 2026.09.17

1980〜90年代に日本のセルビッジジーンズの先駆けとして一世を風靡したデニムブランド「ドゥニーム」。同ブランドの創業当時のレシピをもとに、再始動を手掛けたのが「ウエアハウス」だ。彼らの徹底的な研究・解析によって生み出された至極の1本は、まさにオーセンティックそのもの。そして、本当の意味での“良い色...

究極のクラシックを背負う。英国発バッグブランド「Billingham」のカメラバッグ『System-1』

  • 2026.09.24

英国生まれのバッグブランド「ビリンガム」。そして同ブランドを代表するモデル[システム-1]。"用の美"を極めたその実用性とルックスは昔も今も、服好きの心を捉えて離さない。 “機能美”を極めたクラシックバッグの筆頭 創業は1973年。写真を撮るのが大好きだったという創業者のために妻がカメラバッグを手作...

2ndとEDWIN両チームの世代の異なる4人が集結! EDWINと考えるトラッド学

  • 2026.09.15

本誌でも何度も紹介してきたEDWINのコンセプトショップ限定アイテムは、普遍的なデザインとそのクオリティの高さから2ndが理想とするトラッドスタイルともばっちりハマる。今回は初の試みとして、2ndとEDWIN両チームの世代の異なる4名で“EDWINで作るトラッド”を考えてみた。 20代らしくアクティ...

無垢の金属、輝く伝統。純金や純プラチナを使った「市松」の究極の逸品

  • 2026.09.25

純金や純プラチナなど、純度100%の軟らかい金属をアクセサリーにするためには非常に高い技術が必要だ。それを可能にするのが「市松」。約30年にわたって培った“叩く”技術が可能にする唯一無二のリングの輝きに迫る。 熟練の技なくしては完成しない究極の逸品 原材料高騰の影響もあって、希少性が高まっている純金...