ヴィンテージロードレースの新境地「A.V.C.C.」

アメリカンヴィンテージバイクがサーキットでスピードを競い合うA.V.C.C.レースが、去る11月10日に筑波サーキットで開催され、オールドVツインの乾いた響音が鳴り渡った。昨年までと様子が異なるのは、近年類を観ないほどに多くの観客が押し寄せたこと。新たな局面を迎えつつあるA.V.C.C.レース最終戦のレポートと共に、その大きな要因となるひとつのレーシングチームの活躍に注目したい。

老若男女がサーキットに押し寄せた週末。

日本の歴史あるクラブマンロードレースAVCC。’96年からMCFAJが主催し、アメリカ製ヴィンテージのみを対象とするレギュレーションが最大の特徴だ。

昨今の日本のヴィンテージバイクシーンは世界から注目される一方で、オンロードレースに関しては、一般目線ではややニッチな印象なのが正直なトコロ。しかし、今回はレース中、コーナーによってはほぼ空席がないほどに多くの観覧者が訪れた。

その最大の原因は、様々なフィールドで活躍する表現者・長瀬智也氏がプロビルダーと共に結成したジャパニーズチョッパーレーシング(以下JCR)の存在であることに疑いの余地はない。

サーキットを盛り上げることを目標に掲げる彼らが思い描くのは、一過性のブームではなく、レースをモータースポーツとして大衆に根付かせること。決して簡単なことではないだろう。しかし、JCRが夢見る、週末に老若男女がサーキットを訪れ、レースに熱狂する情景はいちバイクファンとしてロマンを感じずにはいられない。

後半のインタビューではJCR結成に込められた思いを伺った。レースが大衆の趣味として浸透する未来の実現を目指す、レーサーたちの言葉に耳を傾けてみてほしい。

シリーズ最終戦の舞台である筑波サーキットはアマチュアレースの聖地として知られるコース。近年バイクレースは観覧を楽しむスポーツとしてはマイノリティな印象だったが、長瀬智也氏率いるジャパニーズチョッパーレーシングの活躍の影響もあり、サーキットのスタンドに観客が押し寄せ、レース全盛の時代の面影を少しずつ取り戻している様子が伺えた
A.V.C.C.はショベルヘッド以前の車両を対象に年式や装備、モディファイの度合いでクラス分けされ、レギュレーションが細かく設定される。シリーズ全体の順位は年間の総合ポイントで決定。ヴィンテージの世界観を重視するレースだけに、H-DやIndianのフラットヘッドが競うトラディショナルなクラスや、4カムのスポーツモデルに限定したクラス、また、H-Dショベルヘッドの市販モデルを対象とする世界的にも珍しいレギュレーションが設けられる
H-DファクトリーレーサーXR750やスポーツスター883を対象とするCSSCを制したのはファーストアローズ伊藤氏。ビッグツインのショベルヘッドが参戦するFSCRと混走で、JCR伊藤氏との熾烈なバトルが注目を集めた
H-D、Indianが競うMODIFIED-B CLASSはNATURAL STEEL WORKS田邊氏が頂点に輝いた
MCFAJ主催のLOCやMax Groupも同日に開催。AVCCに参加したJCSの長瀬氏と西田氏は、より高年式なスポーツバイクが競うMax Groupのレースに数少ないH-Dでエントリー
エントリー車両にはMCFAJのレギュレーションに沿う車両であることを証明するステッカーが配られる。外装にステッカーが並ぶ様はAVCCの経験値の証である

かつてのサーキットの熱狂を夢見て。

ショベルヘッドまでの車両を対象とするFSCRクラスの表彰台をJCRの3名が独占。「1-2-3フィニッシュは自分たちも予想外だけど、レースの神様がちょっとだけ俺たちに笑ってくれたのかな。だからレースはやめられない」と長瀬氏は語った

サーキットのバイクレースを盛り上げ、レースの魅力を広く伝えるという目標の下に、JOYRIDE SPEED SHOP西田裕氏、CHALLENGER RACING長瀬智也氏、ROUGH MOTORCYCLE GARAGE伊藤毅氏が集い結成したレースチーム。バイクブーム全盛のサーキットの熱狂を夢見て3人のレーサーは走り続ける。全てはスピードに魅せられし先人たちが築き上げた日本のレースシーンを守り、発展させるために。

Tomoya Nagase #47 CHALLENGER RACING

JCRの立役者であり、ロックバンドKODE TALKERSのボーカリスト/ギタリストとして活動する長瀬智也氏。A.V.C.C./FSCR最終戦3位に輝き、Max Group/Max-10にもXR1200で参戦。長瀬氏のレースへの情熱がサーキットに革命の兆しをもたらしている。

Yutaka Nishida #77 JOYRIDE SPEED SHOP

圧倒的なスキルでFSCRの首位のポジションを守り続けるJOYRIDE西田氏。JCR内で最も長い約20年のレースキャリアを誇るJCRの大黒柱と言える存在。Max4のレースは残念ながら車両トラブルによりリタイアになったが、欧州のスーパースポーツにH-Dで挑む姿は注目の的となった。

Takeshi Ito #52 ROUGH MOTORCYCLE GARAGE

横浜の旧車専科ROUGHの伊藤氏は混戦となるCSSCクラス首位のレーサーを抑え、西田氏に次いでゴールを切った。両者クラス順位には影響ないものの、観客にとってはビッグツインショベル vs ファクトリーレーサーXR750のバトルはAVCC最終戦のハイライトの一つと言える。

バイクレースが教えてくれること。JCRが目指す未来。

——JCR結成の経緯を教えてください。

長瀬/元々3人とも異なるチームで出場していたんですが、3人の共通していることがツアラーキングのオールドハーレーでレースをやっていることと、サーキットを盛り上げたいという気持ち。あとはなんといっても誰よりもレースを楽しんでいるところです。なかなかレースは誘うようなものでもないので奇跡的に3人が集まったのなら一つのチームにまとまろうといった経緯で作りました。

西田/カスタムショーの企画を通じて長瀬君とやりとりしている時によくレースの話をしていて、長瀬くんが改めてレースフィールドに戻ろうとしていることが素直に嬉しかった。それで、以前から親交があった毅(伊藤氏)と長瀬君が仲良いことを知っていたから、3人で練習できるじゃんって、そこからウチで集まったり、練習するのが恒例になって、話が進んでいきました。自分たちがレースを楽しめるこの時間を大切にしたいのはもちろんですが、レースを守っていく意味でも興味を持つ人を増やすために、シーンを盛り上げていく活動を考えています。

伊藤/3人で’80年代の筑波サーキットの映像を見た時があるのですが、筑波サーキットの観客席が埋まっていたんです。今、野球や相撲はテレビで放送されても、バイクのレースはなかなかない。休日に野球を観に行こうとか、ディズニーランド行こうみたいなノリで、サーキットにレースを観に行こうっていう選択肢が普通になったら最高ですよね。僕たちはレースの楽しさを実感しているからこそ、この世界を広めたいし、先輩たちが守り続けてきてくれたものを守っていきたいという思いもあります。レースがモータースポーツとして一般に認められて、サーキットのスタンドを見に来てくれる皆さんで埋め尽くすことが一つの目標です。

左/ROUGH MOTORCYCLE GARAGE伊藤毅氏、中央/CHALLENGER RACING長瀬智也氏、右/JOYRIDE SPEED SHOP西田裕氏。3人共チョッパーを愛することがチーム名の由来

——ヴィンテージハーレーで速さを競うレースに挑む理由とは?

西田/旧いハーレーは現行車に比べたら性能的に足りていないものが色々あって、それを人間が補って走る必要があります。自分とバイクに合うパーツやチューニングを見つけて走るのが、新しいバイクとは異なる楽しさですね。

長瀬/旧いハーレーってものすごいクセが強いバイクなんですよ。しかも今回走ったFSCRのクラスで言えば、アメリカの旅をするために生まれたバイクでスピードを競うわけです。旧いハーレーだと今のレーサーのようなパワーはないですし、そのパワーを使い切って走る気持ち良さがあります。

伊藤/単純に好きなバイクで走りたいっていうことと、その難しさを楽しんでいます。タイムだけ速くなれば良いわけではない気がして、車体的にも技術的にも好きなバイクで速く走れるようになる過程を楽しんでいます。

——危険が伴うレースを続けるモチベーションは?

西田/前回の自分を超え続けたいっていうことですね。それがわかりやすくタイムで出るのがサーキット。僕はバイクを作るし乗るのでテストも含めて、以前の自分をちょっとでも超えたいし、上手になりたいと常に思っています。

伊藤/なんでレースをやるかって、シンプルに楽しいからです。40代後半になってもまだオートバイが上手に乗れるようになりたいと思っていて……(笑)。チームで切磋琢磨しながら挑戦して、ライバルであり仲間でありっていう遊びを楽しんでいるのかな。西田さんからサーキットのレースの魅力を教えてもらって、要はハマっちゃったわけです。一緒に走る仲間もいるし、今となってはやらない理由が見つからない。

長瀬/二人が言った通りですが、同じことの繰り返しではなく、過去の自分を超えようとすることが大事なのは自分の仕事にも共通するからすごく共感します。レースはある意味自分の走りをクリエイトすること。そういう意識の人が作る作品は素晴らしくないわけがない。だからやっぱり彼らの作るバイクは僕にとっては最高で、そういうモノや気持ちに日々感動させられているんです。

——JCRの今後の展望を教えてください。

長瀬/あくまでもAVCCのオールドモータークラスのレースを守ることが前提ですが、色々なレース、耐久レースなどにチャレンジしたり、イベントを主催したり、アイデアが出てくる限り具現化していきたいと思っています。今までレースをやっていたけどやらなくなってしまった人や、バイクに全く乗ったことのない人たちにまで、僕らのレースを楽しんでいる姿が届いたら嬉しいです。

大衆車をサーキット仕様にアップデートしたAVCCレーサー。

#47 H-D PANHEAD Racer|Tomoya Nagase

JOYRIDE西田氏の長年のレース経験によるノウハウを落とし込んだパンヘッド。シートやステップ、ハンドル位置などオーナーである長瀬氏の体型に合わせて入念なポジション調整が行われている。心臓部はFSCRのレギュレーションである88ciに合わせてストロークダウンしたS&S製パンヘッドで、ヘッドはバルブ周りやポートのファインチューンが施される高回転仕様。LOVE EAR ARTによる’80s STREETをコンセプトとしたカスタムペイントがアイデンティティ。

#77 H-D SHOVELHEAD|Racer/Yutaka Nishida

純正ヘッドにこだわり、西田氏が自身の愛機としてビルドしたショベルヘッド。S&Sのケースにビッグボアシリンダーを採用し排気量は88cu.inに設定。車高のハイアップやステップ位置、マフラーの形状などバンク角を稼ぐためのディテールが特徴。ショベルヘッド用のハイカムを採用する高回転仕様だが、他の2台に比べてミッドレンジのトルクがやや細いスペックのため、極力スピードを落とさずにコーナーを走り抜ける乗り手のテクニックが要されるストイックな1台。

#52 H-D SHOVELHEAD Racer|Takeshi Ito

ROUGH伊藤氏がビルドしたショベルヘッドレーサー。S&Sケース、クランクにビッグボアシリンダーを採用する排気量88cu.in。前回までは純正ヘッドをモディファイしていたが、今回はヘッドをS&Sに変更し、エボリューション用に近いハイカムをインストール。ステップ周りはワンメイドで、経験値を重ねる度に必要なバンク角に合わせてフロントフォークやリアサスペンションの延長を重ねた、オーナーと共に進化するレーサーだ。

(出典/「CLUTCH Magazine 2025年2月号 Vol.98」)

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