今、学ぶべきはフレンチトラッドの本質。
フレンチトラッドの解釈は様々だが、その本質を知りたいのであれば、まずは青山学院大の路地脇に佇むこのお店の門を叩くことだ。店主の笹子氏がお店を始めたのは2019年。場所は代々木で、当時はクラシックとアバンギャルドのフラット化を模索していたという。とはいえ、今のスタイルに通じる青写真は既に頭の中で描かれ、1年後の移転を機に具現化。今に至る。
根底にあるのは、イタリアを訪れた際に感動した洋品店の原風景のような個人店や、多感な時期を過ごしたフランスで目の当たりにした生っぽいサブカルチャー。それらを背景に、テーラリングを軸としたフレンチシックを提案する。
各土地の伝統に敬意を払いながら、自分流にDIYしていくことが大切と説く同店は、均一化された中でどう自分を出していくかが試されている今、非常に重要な存在だ。
「ゴダール ハバダッシェリー」おすすめアイテムを厳選紹介!
1.細部まで計算し尽くした気取りと気楽をフレンチの王道的配色で。
清々しいホワイトに落ち着いたネイビーは、まさに“ザ フレンチ”といったカラーパレット。構成するのは、70sのような空気感のコットンギャバジンのダブルジャケットに、王族出身のデザイナーが作るエレガントなシャツ。そして、作りはサルトリアのようなかっちりさがありながら、生地の落ち感やフレアシルエット、玉縁仕上げのウェルトポケットがユニークなスラックス。
そこへサラリとストローハットを取り入れ、キザな部分がありながらも、決して前のめりにならない適度なユルさをほのめかす。その抜き差しの加減がまた絶妙で、さらにエスパドリーユやサンダルを足元に添えれば、いい塩梅のフレンチシックが完成する。
2.ヨーロッパから見たアメリカントラッドを優しい色や素材で演じる。
ネルシャツにコットンパンツにクロコのベルト。聞こえは直球アメリカンカジュアルであるものの、目の当たりにすると違った風情を感じさせる。それは色味やデザイン、素材をわずかに“ズラしている”からにほかならない。ジャケットに起用したのは、イタリアのソラーロと呼ばれる、日差しが強い時に着る玉虫色の生地。シャツのチェック柄も独特で、パンツのクリーミーな色合いもアメリカのチノパンとはやや趣が異なる。
憧れて真似はするものの、そのまま着るのではなくこだわりを見せる。そんな80年代に流行したFDG(エフデジェ)を現代的解釈で表現したような上品でベーシックな装い。これぞ自分の好きなものをかき集めて調理する、同店らしいフレンチカジュアルである。
【DATA】
ゴダール ハバダッシェリー
東京都渋谷区渋谷2-2-3
info@godard-ltd.com
営業/15:00〜21:00
休み/水曜
アクセス/表参道駅より徒歩6分
※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。
(出典/「2nd 2023年6月号 Vol.195」)
Photo/Satoshi Ohmura Text/Ryo Kikuchi