履きやすさと美しさを兼ね備えた、一生モノの革靴&ブーツ。

  • 2023.02.28

服とは本来道具である。衣服の起源を辿れば諸説あるが、体温調節や身体保護などの理由から始まって、いつも道具としての必要性に迫られたからこそ、服は発展を遂げてきた。道具服の楽しみ方は人それぞれ。服や情報が大量に消費されるこんなご時世だからこそ、ファッション巧者の業界人たちに思い入れのある一生モノ道具服から、彼らが育ててきた革靴&ブーツを見せてもらった。

1Brooks Brothers(ブルックスブラザーズ)のローファー|会社員・佐藤惟吾さん

アメトラの定番の一足としてお馴染みのオールデン製ペニーローファー。こちらは内張りを施さないアンライニング仕様で、一枚革で仕上げられている20足以上革靴を所有する佐藤さんが、日常で愛用している一足が、オールデンが生産を担っていたブルックスブラザーズのローファー

10年程前にニューヨークの本店で入手して以来、ソールをハーフラバーにして何度もリペアしながら履き続けている。「やっぱりオールデン製ならではの、ちょっと武骨な雰囲気が魅力ですよね。ドレスからカジュアルまで対応してくれるから、オンオフ問わず活躍しています」

しかも、「なるべく自然の経年変化を楽しみたい」と、メンテナンスはブラッシングくらい。その結果、部分的に傷が付いていたり色が抜けたりしているが、それがほどよい風合いとなっている。

「コードバンだけど水や汚れもあまり気にしません。ピカピカよりも、履き込んだ質感が好きなんです。それにアンライニングだから柔らかく、素足で履いても気持ちいい。ほとんどスニーカー感覚ですね。むしろ自分的にはスニーカーよりも歩きやすい。かなりラフに接しているけど、一生モノの大切な一足です」

愛用歴:10年ほど
購入場所:ニューヨークのブルフルックスブラザーズ本店
購入時の価格:7万円くらい

2Paraboot(パラブーツ)のランス|「Pt.アルフレッド」店長・本江浩二さん

40年ほど前にナイジェル・ケーボン氏が履いていたのが知ったきっかけ。廃盤となってしまったが、ファンが多いことから2009年に復刻された

恵比寿にある名店Pt. アルフレッドのオーナーであり、40年以上に渡って、ファッション業界で働く本江さん。長年、現場での実体験を積み重ねている本江さんが選んだのは、まさに質実剛健という言葉がぴったりなローファーだ。

「一般的な機能服や道具という観点だと、少し外れるかもしれませんが、街の洋服屋が推す実用的な道具として、パラブーツのランスほど万能なアイテムはありません。パラブーツらしく登山靴にルーツを持つノルヴェージャン製法で生産されているので、兎にも角にもタフですし、ローファーでも気兼ねなく履けるのが一番の理由。

さらにリスレザーとネーミングされたオリジナルのカーフは、しっかりとオイル分があるので、多少の雨なら気になりませんし、傷や汚れにも強いんです。デザイン面では、カジュアル寄りな見た目なので、スラックスからミリタリーまで合わせられて、年中履けてしまうユーティリティ性も、このローファーをリコメンドした理由です」

愛用歴:13
購入場所:Pt.アルフレッド
購入時の価格:79200

3Tres Outlaws(トレスアウトロウズ)のカスタムウエスタンブーツ|「ランデブー オーグローブ」オーナー・前淵俊介さん

1995年に設立された工房。右と左はヌバックにレザーのシャフトを組み合わせた別注品。センターはクロコダイルを用いたスペシャルオーダー

セレクトショップの草分け的な存在であるシップスの前身「ミウラ&サンズ」からキャリアをスタートし、世界中から良質なプロダクトを買い付けるバイヤーとして活躍する前淵さん。世界各国の服作りや歴史に精通する前淵さんが選んだのは、カウボーイカルチャーを色濃く感じるウエスタンブーツだ。

「ウエスタンブーツは、10代の時から大好きなアイテムで、本場テキサスをプライベートで訪れ、老舗店へオーダーしたこともあります。今回のブーツは、ルグローブ時代に特別オーダーしたトレスアウトロウズ。ウエスタンブーツはカウボーイにとって、ワークブーツでもあり、正装にも使うドレスシューズでもあります。

この別注品は、後者をイメージして、装飾性を高めたレザーや刺繍のパターン、トゥやカカトの形状などを細かくオーダーしました。サイズを合わせれば走れるくらい快適です。デニムではなく、あえてスーツに合わせるのが自分のスタイル。ファッションでも道具でも一級品ですよ」

愛用歴:20年くらい
購入場所:ルグローブ
購入時の価格:15万〜50万円くらい

4RED WING SHOES(レッドウィングシューズ)の2268 エンジニア PT91|「古着屋ジャム」福嶋政憲さん

1991年にアメリカ工業規格をクリアした製品に付与されるPT91。シャフトが細くファッショナブルに使えるうえ、茶芯が浮き出る経年変化も人気の理由だ

名作として名高いレッドウィング PT91のオーナーは、日本各地に全13店舗を展開する古着屋ジャムの代表である福嶋さん。古着店として独立する際に前職の先輩から譲り受け、以来普段履きとしても、そして本来の目的でもある作業靴としても愛用しているという。

「レザーやジージャンといった古着らしいアイテムとの相性が良く、冬の登場機会が多いのですが、新店立ち上げの際の内装現場でも大活躍。スチールトゥ で安心感があるし、傷も気にせずガツガツ履けるのが良いですね。茶芯が出るのがPT91までとされており、経年変化も魅力のひとつです」

愛用歴:15
購入場所:前職の先輩から
購入時の価格:0

※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。

(出典/「2nd 20232月号 Vol.191」)

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