木型を知り尽くした男が選ぶ、木型から見る名作靴5選。

いくら心臓部を担うとは言え、完成形あっての木型。革靴という形になったからこそ魅力に感じたり、気づかされたりしたことも多いと言う。ここでは、これまで木型職人・松田哲弥さんが見てきたなかから木型の観点から見ても素晴らしいと感じた名作を紹介。

取材したのは・・・「ハロゲイト」松田哲弥さん

2020年に生まれた革靴ブランド「ハロゲイト」のモデリスト。独立して18年目、これまでにおよそ100を超えるブランドの木型を手掛ける。

1.オールデン|ほかのブランドにはできない実用性への特異なアプローチ。

「『足に近い』という意味では、やはりオールデンの右に出るものはいないでしょう。ローリングがそこまで強くなくても、ヒールのあご(トゥに近い側)を高くすることで、踏まずに沿わせるイメージで木型を作っていると思います。いまこれと同じことをやろうとしても大量生産に向かないので断られることが多いです」

2トリッカーズ|英国の木型の特徴を 再認識させてくれた一足。

「これよく見てみると先っぽのメダリオンがトゥに巻き込まれているんです。メダリオンの模様を変えないとしたら、シワの入り方の関係上、ここから位置を動かせないんだと思いますが、『単純に木型を伸ばせばいいじゃん』と思って いました。私的見解ですが英国らしく実用重視で木型を考えているのかなと思いましたね」

3ジェイエムウエストン|言葉では言い表せない木型とデザインの奇跡的バランス。

「完全に木型にデザインが乗っかっているように感じます。表現が難しいですが、『これ以上いじる箇所はどこにもないです』みたいな、完成されたツラをしているイメージです。木型とデザインが歩み寄って奇跡のバランス感で合致したというか……。とにかく『なんかいい』んです。それってすごいことだと思います」

4.クロケット&ジョーンズ|ちょっとした木型の工夫で完成形が大きく変わることを学んだ。

「横から見てみると分かるんですが、土踏まずの位置にある革が、クイッと足に吸い付くように上がっているんです。これは木型の段階で、踏まず部分の角を削って丸みを出しているんですね。革靴として完成した際にグッと足裏に向 かって鋭角に潜りこむようなデザインになり、エレガンスと実用性の向上につながります」

550s製のハンドメイドシューズ|木型と革靴の関係がもっと密だった!? 時代。

「この年代の手製靴は革質もいいですし、個人的に一番美しいと思います。あと、ヴィンテージなのに木型の形がはっきりと残っている革靴が多い。推測ですが、昔は完成してから何か月も木型を入れっぱなしにしていたんだと思います。でないと木型の形は簡単には残らないはず。いまは大体長いところでも一週間ですが」

【問い合わせ】
ハロゲイト
https://harrogate.jp/

(出典/「2nd 202211月号 Vol.188」)

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