ヘビーオンスの真髄がここにある。
ジャパンデニムは、世界中のデニムファンから愛されるシーンへと成長したが、その中でも創業20周年を迎えるIRON HEARTは異彩を放つ存在と言える。
というのも、多くのジャパンブランドがヴィンテージデニムの造りや色落ちを目指すなか、IRON HEARTのアイデンティティは何より、創業以来変わらず生産し続ける“ヘビーオンスデニム”である。代表作である21オンスを初め、現在はセルビッジのヘビーオンスデニムだけで全5種類のオンスをラインナップ、ヘビーオンスの枠の中で様々なアプローチを試み、愛好家の欲求を満たしているのだ。
ヘビーオンスデニムが誕生した背景には、“バイク乗りのためのデニム”というコンセプトがある。タフで走行風に負けず長く穿き続けられるモノ。バイク乗りが求めるスペックのデニム=ヘビーオンス、というのは代表の原木氏がハーレーで全国を走り回る経験から導き出したひとつの答えである。
筆者の知人で、長年21オンスデニムを穿くバイク乗りは、「最初は重いなと思っていたが、穿き続けて馴染んでくるとコレじゃないと安心感が感じられなくなってしまった」と語る。それこそが、ヘビーオンスがバイク乗りから支持される理由なのだろう。
しかし、丈夫なだけでは現代のデニム好きは満足しない。穿き込んだ先の自分なりの経年変化がデニムの醍醐味であることは、デニムに少なからず興味を持ち、このページを読み進めている読者であれば言うまでもないことだろう。十分な耐久性と安心感があり、色落ちも楽しめるヘビーオンスデニムであることがIRON HEARTのデニムの絶対条件なのだ。
まず闇雲にオンスを上げると生地が硬く、穿き心地が損なわれてしまうため、IRON HEARTのヘビーオンスデニムは主に経糸単糸×緯糸双糸を用いる(一般的には経緯共に単糸)ことで、肉厚でありながら履き心地が柔らかい生地を実現。
つまり、ヴィンテージを追いかけるのではなく、独自のデニムを追求し糸からオリジナルレシピで作ることで、屈強かつ味わい深い色落ちをするデニムを完成させたのだ。
生地の厚みによって股や膝裏などに刻まれる皺が太くなるため、力強いアタリが出て、ヘビーオンス特有の色気を醸し出す。それはバイク乗りだけをターゲットにしたものではなく、デニムファンにとっても魅力的なIRON HEARTの個性として支持されている。
さらにIRON HEARTは“Life Time Guarantee”を約束しているため、修理可能なダメージは何度でもリペアを繰り返し、半永久的に一本のデニムを穿き続けることができる。それには、長く穿き続けられるデニムという理念に加え、リペア跡すらもそのデニムとユーザー独自のヒストリーとして楽しんでほしいという原木氏の思いが込められている。
デニムは経年変化によって履く人のライフスタイルを映し出す。タフで力強い色落ちを実現する育てがいのあるヘビーオンスデニム穿き込んだ人にしか体験できない至高の喜びがあるはずだ。ヴィンテージをイメージソースとしたデニムでは味わえないヘビーオンスデニムの真髄がここにある。
様々なオンスが選択可能。これぞIRON HEARTの強み。
IRON HEARTのヘビーオンスデニムと言えば創業時から続く21ozが代表作だが、それだけでなく14オンスから25オンスの全5シリーズをラインナップ。猛者揃いの日本のデニムブランドの中でも随一の層の厚さを誇る。
シルエットは3種類をラインナップ。
全ての生地において、シルエットはストレート/タイトストレート/スリムの3種類が基本となる。ヴィンテージのサンプリングではなく、バイク乗りのスタイルや所作にフィットするIRON HEARTが導き出したシルエットである。
どの生地を選ぶのか、それが問題だ。
デニムを穿き込んだ先の表情は経糸と緯糸の関係や綾が大きく影響する。IRON HEARTのセルビッジデニムは全5種類の組み合わせを展開。それぞれ異なる経年変化をするので、一本を育て上げたらまた別の生地を試したくなるはずだ。
経糸/インディゴ、緯糸/インディゴ
ブラックに近いような濃い藍色で、迫力のある色落ちを実現する。
経糸/インディゴ、緯糸/生成
アイアンハートのスタンダードと言える右綾デニムの表情。
経糸/インディゴ、緯糸/ブラック
緯糸のみブラックを使用することで、深みのある独特な色味を演出。
経糸/ブラック、緯糸/ブラック
色落ちの経年変化を味わいやすい硫化染めを採用したブラックデニム。
経糸/インディゴ、緯糸/生成(左綾デニム)
左綾デニムは生地のコシ感とメリハリの強いタテ落ちが特徴だ。
14oz/IRON HEART流のスタンダードデニム。
世界のデニムのスタンダードを意識した14オンスは、昔ながらのデニムを好むユーザーの支持を獲得している。とはいえ、一般的な14オンスデニムに比べればしっかりとした質感に仕立てられ、IRON HEARTのアイデンティティが貫かれている。
634S-14ii ¥26,400_
経糸、緯糸共にインディゴロープ染の糸を採用したストレートシルエット。濃いフラットなインディゴの色味からスタートして、ダイナミックなエイジングを楽しめる。
634S-14ib ¥25,300_
緯糸にブラックを使用する14ib。ロールアップした際の裏面がブラックに近い顔つきが特徴。一般的なインディゴデニムとは異なる個性的な一本を穿き込みたい方におすすめだ。
18oz/ヴィンテージライクのヘビーオンスデニム。
IRON HEARTの他のデニムは緯糸に双糸を使用するが、経糸緯糸ともに単糸を使用した18オンスはヴィンテージの顔つきに近いヘビーオンス。ヴィンテージ同様の生地作りを得意とする工場にて最も厚いデニム生地に挑戦し、右綾18オンスが誕生した。
634S-18 ¥24,200_
作りはヴィンテージデニムのスタイルでありながら18オンスのタフさを併せ持つ一本。目が詰まった生地に仕立てられているため、ヘビーオンス特有の力強いアタリも楽しめる。
666S-18 ¥24,200_
上の634S-18と同素材を使用したスリムストレートはスタイリッシュな着こなしに似合う。細身ゆえに股や膝裏のアタリが出やすく、よりダイナミックな色落ちを味わえる。
19oz/左綾の特性を活かしたヘビーオンスの色落ち。
19オンスはシリーズ唯一の左綾デニム。左綾は緯糸が目立ち、インディゴの色が薄くなりがちだが、こちらは緯糸をベージュで染めることで濃い色味を実現。19オンスの荒々しさに加え、硬く締まった経糸の縦落ちが強調され、ダイナミックなエイジングを味わえる。
21oz/ヘビーオンスデニムを浸透させた代表作。
21ozデニムは創業時から20年続くロングセラー。経糸に4番、緯糸にはそれまでのデニムの常識を破る5番の太さの糸を2本束ね、ゆっくりと織り上げた独自の仕様。ヘビーオンスの安心感と力強い色落ちが癖になる、ブランドの原点と言える生地なのだ。
634S-21L ¥28,600_
21オンスデニムのストレートシルエットはIRON HEARTを象徴するアイテム。タフでありながら適度に柔らかく、バイク乗りを中心に根強く支持されている。こちらは左綾モデル。
666S-21 ¥28,600_
タイトストレートの21オンス。ヘビーかつ細身のシルエットのために、穿き始めはやや手強いが、そこから自分の体にフィットさせていく喜びは一般的なデニムでは味わえない。
25oz/猛者に愛される最肉厚モデル。
21オンスでも十分ヘビーだが、さらにヘビーな穿き心地を求める愛好家の声に応え、普段履きできる限界を目指して開発されたのが25オンス。綾目の存在感が強く、唯一無二の荒々しいエイジングの表情を生み出す。ヒゲなどのアタリの太さがその証だ。
634-XHS ¥33,000_
21オンスデニム以上に厚さと重さはあるが、風合いは柔らかくごわつきは少ないので予想以上に穿きやすく、ヘビーオンスファンならチャレンジするべき1本。
555-XHS ¥33,000_
25オンスデニムのスリムは、履きこむほどに身体にフィットする細身のシルエットで、もはやレザーパンツのような25オンスの安心感を味わったら病みつきになるはず。
【DATA】
IRON HEART
Tel.042-696-3470
http://www.ironheart.jp
※情報は取材当時のものです。
(出典/「CLUTCH2023年6月号 Vol.91」)
Photo by Shunichiro Kai 甲斐俊一郎 Hiroaki Yoda 依田裕章 Text by Yuta Kinpara 金原悠太
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