「BUZZ RICKSON’S」Director・亀屋康弘さん
BUZZ RICKSON’Sの企画総括を務める亀屋氏。1993年のブランド設立時から商品の企画に携わり、ミリタリー全般に造詣が深いことで知られる。特に革製フライトジャケットへのこだわりは強く「革は着込むことでより美しく、完成へ近づく」と語る。
登場時すでに完成していたがゆえに銘品。
レザーフライトジャケットの銘品として、語り継がれてきたA-2とG-1。いずれもパイロットのために作られたという面では共通しているが、A-2は陸軍航空隊、G-1は海軍航空隊。見た目も素材もはっきりと異なる。もちろん、ミルスペックに準じて作られているが、当時、納入を担当した各コントラクターが持つ生産背景や技術によって、同じ型紙、同じ指示書であっても仕上がりに微差が生じてしまうのは必然。
「ちょっとしたステッチワークだったり、ポケットのフラップの形状だったり、工場の癖や作り手の癖もあることでしょうから。ただそれがA-2ファン、G-1ファンを熱くさせるんです」
タグがなくても細かなディテールを見れば、作られた年代やコントラクターが解読できるという亀屋氏。さすがは、来年、2023年にブランド設立30周年を迎えるBUZZ RICKSON’Sの企画に初期から携わってきたスペシャリストである。
「A-2は見た目のシンプルさでしょうね。極限まで削ぎ落とされた美しいフォルムに着用し続けて浮き彫りとなる良質なレザーの表情。G-1はアクションプリーツやレーヨンライニングによる着心地の良さ。また、メインマテリアルに使用しているゴートスキンは小動物がゆえに繊維質が細かく、硬化しにくいのも特徴。海軍管轄であるため、潮風にあたりますし、ときには波飛沫を浴びて濡れてしまうことだってあったと思います。それらも含めてゴートスキンが使われていたのでしょう」
A-2の型紙が完成したのが1930年。A-2の支給が終了する1944年までの14年間で、基本的な構造は変えずに約70万着が納入された。G-1系統が登場したのは1940年。まだG-1という呼称がなくM-422という型番で登場。以降、M-422A、AN655と名前を変え’40年代末期に初めて、G-1の名前で登場。どちらもレザージャケットとして大きな仕様変更がなかったことは、デビュー時にすでに完成されたデザインだったことを大いに物語っている。それが銘品として語り継がれる大きな理由のようだ。
Type A-2 ¥184,800_
数あるコントラクターの中でも指折りの高い生産性を誇り、計5回の納入を果たしたラフウエア社のA-2。台襟がつけられたやや大型の襟が特徴的。マテリアルにはベジタブルタンニンのホースレザーを使用しており、なめらかな銀面と経年変化が美しいフォルムを形成する。
肩口のエポレット。6枚分の革の厚みがあり、頑丈な作りとなっている。負傷兵を助け出す際エポレットを掴んで引き上げるため、強靭なディテールが要された。
A-2のコントラクターとして有名なラフウエア社が手掛けた最大の特徴である台襟。襟元に打ち付けられたネックフックは風の侵入を防ぐためのディテールである。
Type AN6552 ¥184,800_
米海軍において1940年代に開発されたM-422Aに続くモデルとして採用されたAN6552。G-1へと続く米海軍航空隊が誇るレザーフライトジャケットの基本形となった。メインマテリアルにはゴートスキンを採用している。
フロントに配されたフラップ付きのポケット、とくに左ポケットには、ペン差しポケットが設置され、現代のウエアに通じる使い勝手の良さを窺い知ることができる。
細かな裁断の革パーツは脇の下やアクションプリーツなどに使われることで、革を無駄なく裁断し、いかに効率良く作られたかが理解できる作りとなっている。
【DATA】
BUZZ RICKSON’S(TOYO ENTERPRISE
Tel.03-3632-2321
https://www.buzzricksons.jp
※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。
(出典/「CLUTCH2022年10月号 Vol.87」)
Photo by Masahiro Nagata 永田雅裕 Text by Tamaki Itakura 板倉環
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