FM東京「ビートルズ・スペシャル」でOAされたBBC音源。|ビートルズのことを考えない日は一日もなかった。VOL.24

今回から1983年に入ろうと思っていたが、82年の積み残しを思い出したので、ここでそのいくつかに触れておきたい。82年は話題が豊富である。まずはFM東京の『サントリー・サウンドマーケット』という番組で放送された「ビートルズ・スペシャル」だ。『サントリー・サウンドマーケット』は同年4月から鳴り物入りで始まった、FM東京の大型音楽番組。提供はサントリーで、夜10時からの1時間枠。冒頭の小林克也のタイトルコールが本格派を印象付けていた。そこで大規模なビートルズ特番が組まれ、BBC音源が一挙に公開されたのだ。

5月31日から6月4日の5日間にわたっての放送

88年からリリースが始まった『At The Beeb』シリーズ

私のなかでは83年と記憶していたが、それは勘違いで、調べてみると82年の5月31日から6月4日まで5日間にわたっての放送だったようだ。情報元の『ビートルズ海賊盤事典』によれば、BBC音源は「ビートルズ・スペシャル」のひとつの目玉で、ほかにもジョージ・マーティンのインタビューも流れたとのこと。

BBC音源とは、デビュー間もない頃のビートルズがイギリスBBCのラジオ番組に出演した際に残したアーカイブのことで、それまでも貴重音源の定番として各種海賊盤が出回っていたが、この年の3月にマスターテープを用いて『Beatles at the Beeb』という特番がBBCで組まれ、それをソースにした特番が各国でオンエアされていた。日本でも要望が高まり、「ビートルズ・スペシャル」で特番が組まれたという流れであった。当時の私はまだBBC音源には手を付けていない未開の分野ゆえ、正規ルートでの公開はうれしかった。

デビュー前にカバーしていた曲の素晴らしい演奏

前出の『ビートルズ海賊盤事典』によれば、イギリスは38曲、アメリカは47曲、日本では36曲がオンエアされたという。当時、オンタイムで聴きつつカセットテープに録音したものを繰り返し聞いていたが、カセットの現物は残っておらず、そういわれるとかなりの曲数がかかった気もする。ジョージ・マーティンのインタビューの記憶はすっかり飛んでいた。

というわけで、果たして音源が番組内でどのように紹介されたのかの証拠はないが、36曲もオンエアしたのだから、何回かに分けての放送だったのだろう。「ポップ・ゴー・ザ・ビートルズ」「フロム・アス・トゥ・ユー」といった番組テーマ曲をはじめ、4人がデビュー前に演奏していたカバー「ヒッピー・ヒッピー・シェイク」など、貴重で素晴らしい演奏に感動するばかりだった。また、MCで見せる4人の飾らないキャラクターにあらためて魅了された。

当時はまだBBC音源について詳しく書かれた書物はなく(ケヴィン・ハウレットの著作が出ていたらしいが日本で見かけたことなかった)、海賊盤にしても系統立てされてリリースされていたわけではないので、ほかにどんな音源があるのか全くわからず、雲をつかむような話ではあった。以降、レコード屋で安価なBBCものを見つけては購入していったのだが、その頃よく見かけていたのは『From Us To You』『Beautiful Dreamer』『Broadcasts』あたり。それでもまだ『Beatles at the Beeb』をソースにした、あるいはこの番組制作の際に見つかった音源の横流しによる海賊盤は出回っておらず、バリエーションは少ない。見かけるようになるのは翌83年以降で、時系列に集めた『At The Beeb』シリーズが出ていくのは88年のことだ。そして94年のCDボックス『コンプリートBBCセッションズ』がとどめを刺す。これがすごかった。92年にEMIから2枚組の正規盤がリリースされたものの、内容や音質ともに乏しく、時すでに遅しという印象が強かった。

忘れられない海賊盤、ウイングス『ROCHESTRA』

ジャケが斬新だった『ABBEY ROAD West Minster-1』

海賊盤の話になったついでに当時、レコード屋でよく見かけた海賊盤のレコードを思い出してみる。よく行っていたのは相変わらず西新宿のKENNIEだが、この頃から各所に海賊版を扱う店が増えてきて業界自体が盛り上がっていた気がする。学校の帰り道によく立ち寄った神保町の三省堂近くにも海賊盤専門店が出来ていて(店名は失念)、よく覗いていたものだ。

この時期の特徴は『アビー・ロード』まわりのものが充実していたことだろうか。正規盤のアウトテイク写真が使われた『Return To Abbey Road』『ABBEY ROAD West Minster-1』が目を引いたし、音源も珍しいものばかりだった。1曲目に「ハー・マジェスティ」のフルバージョンを置いたピクチャー盤『ABBEY ROAD SESSION』も魅力的。高価ゆえ買える枚数は限られていたが、中学校時代の友人Aくんが積極的に海賊盤を集めはじめており、たまに家に遊びに行ってはそれを聞かせてもらったりしていた。『アビー・ロード』関連以外では、浅井慎平の写真をジャケットにフィーチャーした『TOUR YEARS』、高層ビルの下に渋滞した車が映るシュールなジャケの『RENAISSANCE』などがこの頃の代表盤だろうか。正式発表の213曲を聴いたあとは貴重音源ばかりが気になっていた。

そしてこの年、に買った海賊盤の中で個人的に忘れられない一枚ある。タイトルは『ROCHESTRA』といって、ウイングスの79年のロンドン公演を収録したもの。例のカンボジア難民救済コンサートのウイングスのコンサートだけを抽出した内容への興味はもちろん、白いカラーレコードが特徴で、一瞬で心を奪われた。この美しいレコードが欲しい、と思ったものの確か5000円くらいしたので、即購入は出来ず、それを見つけた神保町のロックワークショップという中古屋に学校帰りに何度か足を運んで逡巡し、誰かに買われないよう願いながら無事まだあるという確認し、2ヶ月だか経ったあとにようやく購入をしたという思い出がある。

ジャケットはカッコいいが、音の方はオーディエンス録音であまり魅力的とはいえず、その後あまり聞かなくなってしまったが、今でも大事にレコード棚に置いてある思い出の海賊盤である。

この記事を書いた人
竹部吉晃
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竹部吉晃

ビートルデイズな編集長

昭和40年男編集長。1967年、東京・下町生まれ。ビートルズの研究とコレクションを40年以上続けるビートルマニア兼、マンチェスターユナイテッドサポーター歴30年のフットボールウィークエンダーのほか、諸々のサブカル全般に興味ありの原田真二原理主義者。
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