佐野元春ツアー最終公演レポート。時代を意識した最新のロックンロール!

19時開演、21時終演。佐野元春「2024年初夏、Zepp Tourで逢いましょう」ツアーの最終公演はぴったり120分の間に23曲を盛り込んだ。それは常に時代を意識し、言葉と音を追求し続けた佐野元春の魅力が凝縮されたライブであった。

ひたすらストイック、シリアスに、エモーショナル

「君をさがしている (朝が来るまで)」で始まり、2曲目は「ヤングブラッズ」。どちらも佐野元春のキャリアを代表する人気曲だが、いずれもビートを重視したニューアレンジによる演奏で、このツアーのコンセプトと本公演の姿勢をうかがわせる。以降「ジュジュ」「誰かが君のドアを叩いている」「欲望」「インディビジュアリスト」と続くが、過去曲はここまで。7曲目からは最近の曲が占めた。

それはロックンロールアーティストとしてファンに最新のロックンロールを届けたいという行動原則のまま突っ走っているようでもあった。またそれは日本のロックシーンで45年にわたり常に先駆的な役割を果たしてきた佐野元春の矜持でもあり、後の世代に大きな影響を与えてきた理由でもある。来場お礼以外の余計なMCはないがサービス精神は徹底しているし、ファンもそれを支持し身体で感じ取っているようだった。

回顧ムードが皆無。言葉で言うのは簡単だが、これをやれるアーティストはなかなかいない。ベテランであればあるほど、過去のヒット曲に頼ってしまうのは仕方のないところで、イメージの呪縛から逃れられず、ファンとの関係に甘えてしまう人もいるだろう。あるいは過去が素晴らしすぎて神格化されてしまう場合もある。しかし、佐野元春はいずれのパターンとも違う。淡々とした佇まいのなか、ひたすらストイックに、そしてシリアスに、自らのエモーションを現在に焦点を当てて絞り込んでいく。まさにロックンロールとしかいいようのないコヨーテ・バンドの強烈なバンドサウンドを味方にして、ひたむきにマイクに向かうその様子はまるでアスリートのようでもあった。

今この瞬間に歌わなければならないという切実な思い

この公演で顕著だったのは一昨年リリースされた曲の充実ぶりである。ひいてはアルバム『ENTERTAINMENT!』『今、何処』の出来栄えの自信が現れということなのだが、2020年代という不穏な情勢下で作られた曲ゆえ、そこに込めたいらだちや不安、未来と希望などを今この瞬間に歌わなければならないという切実な思いが伝わってきた。それほど佐野元春と時代の結びつきは強固なのである。とくにこの2作は印象的な歌詞、強烈なフレーズが多いが、それを生で聴くことであらためて胸に響いた。その特性が明確に打ち出された公演だったのではないかと思う。

 アンコールでは「80年代の曲は懐かしむためにやるんじゃない。楽しむためだ」と言ったあとに「ヴァニティ・ファクトリー」「悲しきレイディオ」「ダウンタウン・ボーイ」を披露。これも本編同様タイトなロックンロールアレンジである。過剰な思い入れは無用かな、と思いつつも「悲しきレイディオ」のイントロが始まれば気持ちが高揚し、自然と大声でサビを叫んでいた。続く、「ダウンタウン・ボーイ」は少年時代から多くのことを佐野元春ナンバーに学んだ者にとって特別な曲である。40年以上勇気づけられてきた「すべてをスタートラインにもどしてギヤを入れ直してる君」というフレーズを聞いた瞬間、熱いものがこみ上げてくるのがわかった。そして最後、「80年代から戻ってこれなくなるかもしれないよ」と言って歌ったのはデビュー曲「アンジェリーナ」。会場一体となって「今夜も愛を探して。今夜も愛を探して」と叫んで終演を迎えた。

 過去に何度も佐野元春のライブに足を運び、一時は追っかけに近いかたちでライブを見ていたが、ここのところはご無沙汰していた自分が悔やまれた。自分には佐野元春の音楽が必要である。ということをあらためて実感した一夜となった。来年はデビュー45周年、大きなツアーを予定しているというから、今から楽しみである。

PHOTO:アライテツヤ

この記事を書いた人
竹部吉晃
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竹部吉晃

ビートルデイズな編集長

昭和40年男編集長。1967年、東京・下町生まれ。ビートルズの研究とコレクションを40年以上続けるビートルマニア兼、マンチェスターユナイテッドサポーター歴30年のフットボールウィークエンダーのほか、諸々のサブカル全般に興味ありの原田真二原理主義者。
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