
『折りたたみスマホ』ではなく『開きたくなるスマホ』
実は流出したモックアップを見た時に、不自然だと思った。閉じた状態では左側の角が尖っていて、右側の角には大きく角Rが取られているのは不細工だと思ったのだ。

しかし、実際に手にしてみると、それは『右側を開きたいと感じさせるデザイン』だったことに気がつく。
左右の角が同じように四角いと、そこに『開きたい』という欲求は生まれない。だから『折りたたみスマホ』だったのかもしれない。
iPhone Duoは『開きたくなるスマホ』だ。そして、開いた瞬間に、外側のディスプレイに表示されていたグラフィックが半透明になり、ぼやけて、内側のディスプレイに広がったようなトランジションが表示される。ハードウェアのデザインとして『開く』ことを誘って、ソフトのデザインとして『開く』ことを楽しみに変えるのだ。

閉じた時の画面の縦横比は、初代iPhoneに近い
まず、外側のディスプレイをよく見てみよう。
ディスプレイサイズは5.4インチ。解像度は1,398×2,034ピクセル、460ppi。最近の縦長のスマートフォンのトレンドからすると野暮ったい気もする。縦横比はおおよそ2:3。

最近の流れからすると、たとえばXのタイムラインのようなコンテンツは見づらいように思う。天気予報や、動画アプリのメニューなどでも上にグラフィック、下に詳細情報という縦長の画面を利用したコンテンツが多くなっており、このままではフィットしない感じもある。
しかし、思い出していただきたい。ジョブズの作った初代(〜iPhone 4s)は、同じ2:3の画面比率だったのだ。その後、手に持てる幅を維持しつつ大画面化して欲しいというニーズに応じて、縦横の比率は伸びていくが、2:3という縦横比は、iPhoneの歴史においては初心に戻ったという比率でもある。
ただ、現在の縦長画面に慣れた身にとってはコンテンツの縦サイズが足りず、横幅が広いようには感じる。そこを上手く埋め合わせる工夫はホーム画面を見れば一目瞭然。一番下のドックや一番上のステータスバーなどのコントロールを右端に寄せて、縦の表示スペースを確保しているのだ。完成したものを見ると当たり前のように感じるが、ドックの配置変更はけっこう大胆な発想だ。それをアップルは『親指で届きやすい(右手で持つ前提?)』と簡単に表現している。

このデザイン変更は、ミュージックアプリ、写真アプリ、Siri AIなど、多くの標準アプリで踏襲されている。おそらく、市販のアプリでも対応可能なものはこれに倣うことになるのだろう。
開いた時の画面の縦横比は、初代Macintoshに近い
開いた時のトランジションのワクワク感は冒頭に述べた通りだ。
左右非対称だったiPhone Duoは、開いた状態で完全に左右対称になる。ジョブズの愛した角Rを大きく取ったディスプレイがそこに登場する。そして、その比率はおおよそ3:2(2,670×1,878=約1.42:1なので、厳密には3:2(1.5:1)ではないが、近似値として)なのだ。古いアップルファンならこの角Rを持つ3:2のディスプレイとして初代Macintoshを思い出すかもしれない。当時はブラウン管だったのでいやおうなく角は丸かったのだ。

このサイズはコンテンツを見るのに適している。また、縦横に持ち替えることで、2:3と3:2を切り替えることができる。正方形に近いサイズや、4:3と違って、明確に縦と横に持ち替えた時の使い勝手が違うのも魅力的だ。
複数のアプリを使う際にも2分割で使えるようになっている。iPadのSplit Viewのような細かいサイズ変更はできないが、本をメタファーに持つ『折りたためる』デバイスとしては、むしろその方が分かりやすいのかもしれない。

そういえば、本で思い出したが、この3:2という画面サイズは、読書にも適している。デモ機にはApple Booksの英文字コンテンツしか入っていなかったが、外側ディスプレイから本を開くようにして見開きに展開できるのは非常に快適だった。まるで実際の本のようでもある。

KindleやSony Readerのような一般的な読書アプリが現行アプリでこのような挙動で動くのかどうかは分からないが、もしそうでないなら、ぜひアップデートでの対応をお願いしたい。会場では試せなかったが、マンガコンテンツもフィットするはずだ。ただ、iPhone Duoの左開きは、英文コンテンツの場合都合がいいが、縦書き小説やマンガのように右開きを前提としたコンテンツの場合、どういう挙動になるのか気になる。

もしかしたら、左利き用に、反対側にヒンジを取り付けたiPhone Duoを望む声が上がるかもしれない(生産量からいうと無理だとは思うが、逆さまに持つことができれば良いなど、ソフトウェア的な対応は可能だと思う)。
『閉じる』と『開く』の中間的な使い方も工夫されている
『開く』という動きを活かしたインターフェイスはそれだけではない。『へ』の字型に曲げて立たせると、充電している時のようにスタンバイ機能として写真やカレンダー、時計などのウィジェットを表示できるし、映画や番組コンテンツを表示できる。

NetflixのアプリはL字型に座らせて置くと、起きている方(上側)のディスプレイに映像、寝ている方(下側)のディスプレイにコントローラを表示できる。操作をせずにしばらく映像を見ていると、コントローラの方は『フワッ』と暗くなって消える(タップすると再表示する)。もちろん、開いて大画面で見た方が楽しめるかもしれないが、軽食をつまみながら軽い気持ちで見るなら画面が小さくても好きな傾きで見られる方が良いかもしれない。

写真や動画を撮影する時や、ビデオ会議をする時にも、両面にディスプレイがあるというメリットを活かすことができる。

iPhone Duoを開いて、Duo Preview機能を使えば、撮影する人はもちろん、撮影される人も自分がどう撮られているのかを見ることができる。キッズキューは外側のディスプレイにスヌーピーのアニメーションを表示する機能。子供を笑顔にして撮影できるかもしれない。

Duo FaceTimeは自分の顔と、自分の見ている光景の両方を相手に見せる機能。内側を2画面にして、撮影しているものと相手の顔の両方を表示することができるからこその機能。LINEや、他のビデオ通話アプリも対応して欲しいところ。
開いた状態では、折り目はほとんど感じられない
アップルが以前『折りたたみスマホ』の欠点として挙げていたのがヒンジ部分のディスプレイのウネりだ。昔より小さくなったが『アップルとしては許容できない』とのことだった。
iPhone Duoの実物を見ると、この点はかなり改善されており、ウネりほとんど感じられない。iPhone DuoはApple Pencil(USB-C)に対応しているから、中央のヒンジ部分を通ると線が曲がる……などという製品は許されないだろう。

ディスプレイは上下のガラスに加え内側に複数の樹脂層を持ち、折りたたむ際にそれぞれの層が交互に動くことで、ヒンジのウネりを感じさせないようにしているそうだ。発表会会場で見た限りではそれはかなり成功している。もちろん、製品の個体差もあるかもしれない(すべての個体が展示品ほどの仕上がりかどうかは分からない)し、経年劣化する可能性もあるので、ここは継続レポートしなければならない部分だろう。
たしかに、多くの人が指摘しているようにiPhoneは『折りたたみスマホ』としては、『後追い商品』だ。先陣を切って革新を起こしているわけではない。しかし、『折り目の問題』や『表裏あるからこその分かりにくさ』などの問題をひとつひとつ潰してから製品にしている。後追い商品ではあるが完成度は高い。『マネ』ではなく『昇華』させた『後出しジャンケン』は強いのだ。
もちろん、筆者もアップルには先陣を切って革新的な商品を出して欲しいとは思う。しかしこのしたたかさも、アップルの強さのひとつではある(筆者も微妙な気持ちはあるが)。
ともあれ、『開く』ことをドラマティックな魅力に変えたiPhone Duoは、触ってみると欲しくなる『120点』の製品だと思う。
日本の価格設定が、いくらなんでも高すぎるという不幸
ただ、欠点や気になるポイントがないわけではない。
まずはなんといっても値段だ。256GBで36万4800円、512GBなら39万9800円。AppleCareも2980円/月、もしくは2万9800円/年と、非常に高い。一般的なノートパソコンを大きくしのぐ価格をスマホに投じられる人はそう多くはあるまい。それはアップルも分かってはいるはずで、今後もあくまで本流はiPhone 18 Proや、iPhone 17であることに変わりはないはずだ。
とはいえ、USでの価格は256GBで1,999ドル(税別)、512GBで2,199ドル(税別)で買えるので、そう聞くとずいぶん安く感じる。税込と税別表記の違いもあるが。円が安いからだともいえる。日本国内産業を保護するための施策かもしれないが、ガジェット好きとしてはつらい相場だ。
日本が税込表記であることを差し引いても166円/ドルだから、現在(9月10日)の実勢相場である約153円と比べると割高な気がする。しかし、長期的に見て、ずっと円安だったので、製品価格決定の相場としては円安時代の相場が使われてしまったということだ。
これは、この商品に関していえば、少々不運なタイミングだったといえるだろう。このまま、円高で安定して、価格改定されたりするといいのだが……。
気になる点は他にもあるが……
欠点はそれだけはない。
アップルの純正アプリはiPhone Duoのインターフェイスに対応しているから使いやすいが、世間の多くのアプリは縦長のスマホを前提にデザインされている。iPhone Duoのフォームファクターは、実際に使い始めてみると使いやすいアプリばかりではないだろう。
また、日本では満員電車で片手でつり革を持ちながらスマホを使うというようなシーンが多いが、本機は片手で開くのは難しい。筆者は手が大きいので無理ではなかったが、一般的には片手で使うのは難しいだろう。
また、タッチ&トライ会場で試した限りでは、閉じても開いても比較的キーボードは大きく表示された。ディスプレイの広さを活かすためには、もっとキーボードが小さくてもいいと思う。これは3:2もしくは、2:3という画面サイズの欠点だと思う。

ことに、日本語ユーザーにとって重要なフリック入力のキーボードは必ずしも最適化されていないと感じた。ここは実機を預かって設定を詳細に掘らないと分からないところだが、左右に寄せるとか、左右に分割するなどの設定が欲しいところ。アップデートで改善されていくかもしれない。
非常にケースを付けにくい形状ではあるので、『iPhoneケース』という文化と、どう折り合いをつけていくのかも気になるところだ。
さらに、ボディはチタンになっているが、筆者が使った感じだと、iPhone 17 Proはアルミボディになって大きく冷却性能を増したので、チタンボディの冷却性能には若干の不安も感じる。ベイパーチャンバーを搭載しているので、大丈夫だとは思うが、『折りたたみ』という形状自体、熱がこもりそうで心配だ。
本機の販売は、iPhone 18 Proよりだいぶ遅く、10月16日予約受付開始、23日発売。実機を借りてのレポートもまだしばらく先になるが、実機レビューが可能になれば、そのあたりも掘り下げていきたいと思う。
(村上タクタ)
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