世界最高峰のニットメーカー「JOHN SMEDLEY」が編むもの。

イングランド中部、リーミルズの自社工場で240年以上前からニットウエアを作り続ける〈ジョン スメドレー〉。1784年に創業した同ブランドが編んできた歴史と伝統が息づく場所で彼らが編むものとは。

240年の伝統と魂が息づくファクトリー

英国のトラッドブランドとして群を抜く歴史を持つのが〈ジョン スメドレー〉だ。英国王室御用達の証である「ロイヤルワラント」を現在2つ(国王チャールズ3世、カミラ王妃)保持。240年を超える伝統が息づく同ブランドの拠点は、イングランド中部のダービーシャー州、リーミルズである。まるでひとつの村を形成しているかのような広大な土地に、歴史を感じさせるレンガ造りの厳かな建造物がズラッと建ち並ぶ。

膨大なアーカイブを管理し、その歴史的価値を伝える役割を担うアーキビストという肩書きを持つジェーンさん曰く、「最高級の素材こそがジョン スメドレーの心臓」。ニュージーランド産のウール、カリフォルニア産のシーアイランドコットンをはじめとする厳選された素材だけを使用し、ハイクオリティーなニッティングマシン、そして熟練職人の手によって最高峰のニットウエアは完成する。工程は大きく4つに分かれており、①原糸の後加工、②ニッティング、③ウォッシュ&ダイ、④ハンドソーイングだ。基本的には、身頃、袖などの各パーツはマシン、そしてリンキングと呼ばれる各パーツを結合させる工程や襟付けなどの細かい作業は、熟練の職人自らが手縫いで仕上げる。また、完成したニットを洗いにかけるかかけないかがモデル毎に決められており、かける場合は独自のレシピで調合したソープを入れて、仕上がりの風合いを管理。ほかにも拡大レンズで編みの不十分な場所はないかを確認し、さらに生地に光を当てて、再び編み地の確認をするなど、品質管理にも余念がない。

ファクトリーに足を運び、強く感じたのは伝統を守りつつも変化を恐れない姿勢だ。現在採用しているニッティングマシンの多くは、日本製の最新のコンピュータ制御機。1950年代から使用するヴィンテージ編み機も一部の製品等に採用しているが、編地の精密さと品質の向上を図るために近代的な技術も導入している。変わらないのは、すべてのプロダクトに職人の“手作業”が加わるという点だ。ボディのネックの処理を担当する職人は勤続36年。「このひとつの作業にプライドを持ってやっているの」と彼女は言う。〈ジョン スメドレー〉が編んでいるのは単なる商品としてのニットウエアではなく、その歴史と伝統、そしてプライドなのである。

上は工場の配置図。下は「FAMILY TREE」と呼ばれるスメドレー家の家系図で、産業革命の時代である1784年から続くファクトリーということもあり、非常に細かく長い。アーキビストとしてブランドの歴史の研究やアーカイブの管理を担当するジェーンさん(左)と9代目ブランドマネージャーのミリアムさん(右)。

工場に到着してまず驚かされたのはその広さ。部署や工程ごとに建物が別れており、まるでひとつの村を形成しているかのようだった。工場がこの場所に建てられた背景には、当時必要不可欠であった“水力”を確保するためであった。ダービーシャー州、リー周辺を流れる小さな川「Lea Brook」の存在がその理由なのだという。

ハイゲージのニットは編み機で編み立てた後、首元や袖のリブ、パイピングなどをハンドフィニッシュで仕上げる。また、編み地を拡大レンズで細かくチェックし、編みが甘い箇所は手作業にて丁寧に修復していく。

デザインチームからプロダクトチームまで、約320名が勤務し、連携・意思疎通が取れるようになっているのもポイント。ニッティングを担当するのは女性の職人が多く、ジェーンさんによれば彼女たちはみんな家族のような関係性のなのだとか。

工場内には非常に多くのマシンがあるが、〈ジョン スメドレー〉の製造工程では、日本の島精機製作所のコンピュータ横編み機が使用される。品質管理と生産性向上のために設備投資は惜しまないのだという。

ジョン スメドレーといえば、真っ先に思い浮かぶのがハイゲージのニット。上質で洗練されたムードを放つニットウエアの核をなす“編み”はやはり重要だ。シーアイランドコットンをはじめとする選ばれた上質な素材を使用し、丁寧に編み立てられていく様は惚れ惚れするほど。マシンで効率化を図りつつも、必ず職人の目と手を介在させているのが印象的であった。

240年の歴史が詰まった場所、アーカイブルームへ

アーカイブルームに保有されているアーカイブの数は2万4997点(6月の取材時)! 最も旧いのは1860年代のモノであり、アウター、スウィムウエア、ナイトウエア、アンダーウエアなどのカテゴリー毎に品番を振って管理されているのだという。

Vネックのセーター、英国軍に納入したアンダーウエア、デザイン製のあるクルーネックセーターなど様々なプロダクトが並んでいた。ニットをはじめとするウエアだけでなく、旧い編み機や什器、過去のブランドネームなど、歴史的価値のある資料が管理されている。

歴史的価値のある文書や記録を収集、整理、保存、公開する専門職として設立されたのが“アーキビスト”という役職。その重要なポジションを務めるジェーンさんが、希少アーカイブが並ぶアーカイブルームを案内してくれた。

希少なアーカイブプロダクツ

ボタンでサイズを調整できるウエストバンド仕様のニットパンツ。1860年代に製作された非常に旧い個体で、やや厚手のウールニットを使用。また、裾がリブ仕様になっている。

メリノウール製のタートルネックニット。袖と裾がリブ仕様で、フィッティングはややタイトな設計。ブランドがファッションとしてのプロダクトを作り出す前の時代にあたる1970年代製。

1930年代に登場した、最も歴史のあるモデルのひとつである3つボタンのポロシャツ[アイシス]型の1971年製。上質なシーアイランドコットンを採用し、台襟なしの大ぶりな襟が特徴。

〈ジョン スメドレー〉は第一次、二次大戦ともに英国軍にアンダーウエアを供給。このニット製のヘンリーネックTシャツとショートパンツはともに1942年に製造されたものだ。

ブランドのシグニチャーモデルである半袖ポロ[アイシス]と同じ襟型の長袖モデル[ドーセット]。ニュージーランドの提携農場で採取したエクストラファインメリノウールは、高い保温性・調湿性・通気性・抗菌性を持ち、上質なドレープ感と光沢を放つ。同素材を100%使用し、30ゲージのハイゲージに編み立てた上質なニットは、〈ジョン スメドレー〉の顔であり、英国ニットの最高峰とも呼べる存在だ。6万6000円

コーデュロイパンツ3万7400円/J.プレス オリジナルス(J.プレス & サンズ 青山TEL03-6805-0315)、中に着たTシャツはスタイリスト私物

【問い合わせ】
リーミルズ&カンパニー
TEL03-5784-1238
www.johnsmedley.jp

この記事を書いた人
みなみ188
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みなみ188

ヤングTRADマン

1998年生まれ、兵庫県育ちの関西人。前職はスポーツ紙記者で身長は188cm(25歳になってようやく成長が止まった)。小中高とサッカーに熱中し、私服もほぼジャージだったが、大学時代に某アメトラブランドの販売員のアルバイトを始めたことでファッションに興味を持つように。雑誌やSNS、街中でイケてるコーディネイトを見た時に喜びを感じる。元々はドレスファッションが好みだったが、編集部に入ってからは様々なスタイルに触れるなかで自分らしいスタイルを模索中。
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