2ページ目 - 松浦祐也の埋蔵金への道。第6回「冬の川にゃ入るもんじゃねえし、先人の言う事は聞くもんだ」

でも、そうか。小判発見が63年前だから、関係者も生きてるか微妙な年数だよなあ。ウエダ隊員が「マツーラさん、これですわ」と、自分の手柄のようにドヤ顔で学芸員さんが送ってくれた資料を見せてくる。そこには当時の小判発見場所を含む、詳細な資料が添付されていたのだった。「バカタレが! ここに全部書いてあるじゃねえか! 最初からコレを確認しておけ!」。

昼飯に美味い十割り蕎麦を堪能した一同は、第4捜索地へ。先ほどの先輩図書係員の方が「そういえば昔、つぶて石の近くで小判を見つけたって聞いたことがある」と、貴重な情報を教えてくれたのだ。早速「つぶて石」を目標とし、付近を捜索する。ここは川も浅く、足場が砂の岩盤で沈むこともない。タコメガネを使用して、探知機を振る。岩盤の割れ目を探っていたら強い反応が出る。場所が場所だけに、一同期待して歓声をあげた。アタシはずぶ濡れになりながらも割れ目に無理やり手を突っ込んで、指先に触れる硬いモノを引っ張り出したら「錆びた鉄筋」だった。なんでこんな所に鉄筋があるかなあ。川に入って捜索しているアタシは楽しくて時間を気にしないのだが、岸で待つユキタケ隊員が「マツーラさん、そろそろ移動しましょう」と言うので渋々、川から上がった。

学芸員の方が送ってくれた資料によると、小判発見場所は荒砥鉄橋の上流200メートルの荒砥側だった。アタシが探そうとした場所(第2現場)は、鉄橋の下流部で対岸の鮎貝側。微妙にズレているので護岸工事区域からも外れていそうだ。「第5捜索地は小判発見現場だ!」。オンボロエスティマを「畔藤排水機場」まで突っ込み停車、道具を抱えて堤防を越える。「おお、ここが正しき発見地か!」案の定、護岸工事からは外れていてアタシは自分の読みの鋭さに震えた。

ココはいかにも「出そう」な雰囲気がある。バキバキに期待して川岸まで走るが、探知機を振ろうとして手が止まってしまった。ゴーイチ隊員が悲しそうに呟く。「あ、工事されちゃってる」。大石がたくさん入ったネットが、大量に川岸へ積み上げられてしまっていたのだ。もう護岸工事済みじゃないのさ! 何か手がかりや痕跡がないか、藪を漕いで必死に探すものの、もちろんなーんもない。陽も沈み、風が出てだいぶ気温も下がってきた。

諦められないアタシだけが川岸をウロウロして「ゴミを捨てるなよお!」って、絶叫しながら探知機を振り回していて、隊員達は捜索に加わろうともしない。悔しくて悲しくて笑えてきた。アタシは涙を隠しながら「本日は捜索終了! ホテルに帰って明日の朝から引き続き捜索をする!」と宣言せざるを得なかった。

米沢市内まで引き返し、ウエダ隊員が手配した激安ホテルに入る。夕食はホテル近くの韓国料理屋「鶏の宮」で本格的韓国料理を堪能した。アタシは2軒目に繰り出そうとする隊員達と別れ、ひとり部屋に戻って本日手に入れた資料を精読する。集中して資料にあたっていると、今まで気にもしなかった文言に引っかった。手元には4つの資料があるのだが、その全てに共通して書かれている「ある事」に気付いたのだ。

それは小判の発見状況で、表現の差はあれど「川底から小判を見つけた」と記述されていた。あれ、川底から? それじゃあ、いくら岸で探知機を振っても小判は見つけられない? つまり「川中に潜って川底を探す」のが正しい捜索方法で、アタシがやっていた「岸で探知機を振って探す」ってのは、意味のない捜索だったのか! ゾッとした。濡れながら寒さに耐えて行った本日の捜索は、全くの無駄だったのだ。レジェンド・トレジャーハンターの八重野充弘さんが言っていた「土を掘るより資料を掘れ」というお言葉が、まさにいま理解できた。この不始末を、忠実な隊員達にどうお伝えしようか。

衝撃の事実を知らない3人の隊員が、バカ面さげてゴキゲンで帰ってきた。ニコニコのウエダ隊員が「えっと、明日6時からの捜索ってどうします?」「……やるよ。可能性はゼロじゃないからさ……でも6時は、ちょっと早いかもな」「じゃあ、7時にしますか。楽しみっすねえ」と言う。ユキタケ隊員が「あの鉄筋には期待しちゃいましたよ」とか言ってるし、ゴーイチ隊員は「探知機が鳴るたびにドキドキするんですよね」なんてはしゃいでいる。幸せそうに今日の話をしている隊員達を前に、もちろんアタシは衝撃の事実をお伝えすることが出来なかったのであります。

(出典/「2nd 2024年6月号 Vol.205」)

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