1978年に訪れた米国西海岸が原体験
ジャパンデニムブランドの雄として、本場のアメリカやヨーロッパからも絶大な支持を得ているザ・リアルマッコイズ。その理由は、ベースとなる旧きよきアメリカンクロージングの選定から生地、縫製まで徹底的にこだわった、世界最高峰のクオリティから生まれる風格にある。「僕はデザイナーでなくディレクター。目的を持って作られた機能服を愚直に再現してますからね」と代表の辻本さんが語る裏にこそ、氏のアメカジの原体験がある。
「僕が18歳だった1978年に初めてロサンゼルスへ渡りました。当時はまだアメリカへの渡航が一般的ではなく、ビザも必要でしたし、為替もけっしてよくなかったですね。大学生だった僕はラッキーな臨時収入があって、何もわからないまま漠然と渡米したんです。そこで1カ月ほどモーテルで暮らし、様々なカルチャーショックを受けたことが大きな転機になったことは間違いありません。今日持ってきたリーバイスの501は、その時に手に入れたもの。501XXレザーパッチは古着、当時の現行品だった501の66後期はデニムショップで買ったと記憶しています。当時はヴィンテージと評価されておらず、XXを意識して買ったわけでなく、かっこいいと思ったものがヴィンテージだったんです(笑)。西海岸滞在中に衣料などを仕入れて、日本に戻ってからフリーマーケットで売ったんですよ。この経験が自身の商売の指針となり、ナイロンやザ・リアルマッコイズに繋がっていったと思いますね」
右も左もわからず、勢いだけで渡った憧れのアメリカ。そこで手に入れた501は、今でも辻本さんにとっての定番だ。
「501がすごいのは、5ポケットパンツのオリジンであり、万人が似合うプロダクトであること。同じ501でもジャストサイズは言わずもがな、2〜3サイズ大きく穿いてもファッション的には正解ですし、細く穿きたいなら1〜2サイズ下げたりしてアレンジできる汎用性が最大の魅力。僕の理想とするプロダクトです」
リーバイスといえば、名実ともに世界一のジーンズブランドだ。今の動向に関しても素晴らしいと辻本さんは評する。
「世界一のジーンズメーカーでありながらも、当時の縫製や仕様にこだわったリーバイスビンテージクロージングを展開するなど、企業姿勢も素晴らしい。僕の憧れであり、目標でもあります」
その後、辻本さんはアメリカ、フランス、ドイツでも暮らし、様々なカルチャーやプロダクツに触れていく。81年には伝説のショップであるナイロンを立ち上げた。90年代のヴィンテージ&リプロダクトブームを牽引する存在で、関西のアメカジ好きでは避けて通れないほどの名店だ。辻本さんの優れた審美眼が詰まったセレクトは、他店とは一線を画していた。
「ナイロンの名前の由来はニューヨークとロンドン。NYとLONの2つを組み合わせた造語なんです。これは僕のファッションのルーツがアイビーなのも大きかったかもしれませんね。機能性や合理性も大事にするし、カジュアルに着こなす中にも品やルールを守ろうという意識は自然と根付いています」
たしかに辻本さんのスタイルはシンプルながらもサイズ感や生地感に細かくこだわる、いぶし銀なスタイルだ。そこには辻本さんの考えるアメカジが詰まっている。
「目的を持って作られたプロダクツだけがヴィンテージになる」
「僕の中でヴィンテージとアンティークを分ける明確な持論があって、前者は目的を持って作られたもの、後者は商業的に作られた装飾品やデザイン。例えばロレックスのサブマリーナ。ステンレスは潜水時計として生まれたが、金無垢になると装飾品の要素が強くて、本質を無視してると感じます。僕は洋服に関してもミリタリー、ワーク、スポーツといった目的を持って作られたものに魅力を感じるし、ヴィンテージとして受け継がれる価値があります。そういうものをミュージシャンやアーティストが取り入れたことがアメカジの始まりだと思いますね。フライトジャケットにジーンズという組み合わせがアメカジではなく、ファッションとして着こなすための創意工夫が根底にないと。僕が手掛けるザ・リアルマッコイズは、ヴィンテージを愚直に復刻させるから、“ユニフォーム屋”と自称しているのです。細かなモディファイは行いますが、ベースとなるヴィンテージの本質を崩すようなデザインやシルエットにするような、ファッション的なアプローチはしないと自戒の念を持っています。その分、生地や仕様、縫製など、徹底的にクオリティにこだわり、長く愛用してもらえることが第一なんです」
ヴィンテージへ敬意を払い、今の技術や知識を駆使して、プロダクツの品質や完成度を徹底的に追い求める。そのストイックなもの作りの裏には辻本さんの夢がある。
「僕の夢は、30〜40年後にザ・リアルマッコイズがヴィンテージとして受け継がれていること。だから頑丈に作るし、機能性も欠かせません。リーバイスのジーンズに穴が空いても捨てないように、僕たちのプロダクツがそう思ってもらえるようになるのが目標であり、夢なんですよ」

70年代らしいアイスブルーのエイジングとなったリーバイスの501は、辻本さんが初めてアメリカへ行った1978年に購入したもの。街のデニムショップで新品として購入しており、自身でここまで穿き込んだ。当時の現行品は、今で言う66後期に当たり、独特な青味の強いエイジング。この旅で古着としてリーバイス501XXのレザーパッチをたまたま選んだというおもしろい。まったく知識はなかったそうだが、そこでXXを選べるセンスがさすがだ。
(出典/「
photo/Hirotada Arimori 有森弘忠 text/Shuhei Sato 佐藤周平
関連する記事
-
- 2025.07.08
「The REAL McCOY’S」CEO 辻本仁史さんの、一生手放せないヴィンテージ。
-
- 2026.09.07
誇り高き男の作業着、カウボーイや溶接工らが着用していたワークウエアが現代に甦る
-
- 2026.07.29
「The Real McCoy’s」日本が世界に誇る最強のメイドインジャパン