時代や流行に捉われず革に向き合い続けて55年

鳥取県米子市に生まれ、物心ついたころから革に魅入られた男、本池秀夫さん。弱冠20歳にして1971年にモトを創業し、レザーのみを使って精巧な革人形やジオラマアートなどを製作。ノーマン・ロックウェルから影響を受け、いまにも動きださんとする旧きよきアメリカの日常の一瞬を切り取っている。
たとえば靴、たとえば洋服。作品で必要となるディテールの表現のためにヴィンテージをコレクションするようになった本池さんは、やがて実際に革ジャンや革靴、革小物を製作するようになった。また、レザー同様に独学で作り方を会得したというシルバージュエリーも人気。レザーとジュエリー。いまはこのふたつが主軸となり、モトのプロダクツを構成している。
2021年には地元・米子市に「本池美術館」を開館し、革工芸において、日本で初めての県無形文化財保持者として認定。本池秀夫さん自身のみならず、長男の大介さんによる漆を使った作品や、次男の作人さんによる自由なレザーの表現を追求した作品なども展示される
そして本年、ブランド創業から55年を迎えるモト。レザージャケット、ブーツ、ジュエリーなど、周年を記念して製作されたプロダクツの数々を、モトが持つ唯一無二の世界観ごと楽しんでいただきたい。



ダブル型のライダースジャケットはイタリアにある名門タンナーのバケッタレザー製。透明感のある表情と、茶芯による経年変化が楽しめる。オプションとして925シルバー製のアポロコンチョを装着可。エンジニアブーツは1940〜50年代の希少なデッドストックをもとにした17インチのシャフトが目を惹く。コンビネーション鞣しならではのコシのあるしなやかさで、見た目に反して履きやすい。ジャケット297,000円〜、ブーツ165,000円

MOTOの定番トラッカーズウォレットを、エレファントやクロコダイルなどの特別なレザーでオーダーできる受注会が開催される。期間は10月3日(土)から10月11日(日)まで。ロング、ミドル、新型のミニサイズ。計3サイズのボディと個性的なレザーの組み合わせが楽しめる。すべて価格未定


ニュージーランド産のディアスキンにコンビネーション鞣しを施した1930〜40年代のムードを醸すカーコート。しなやかな鹿革は着込むと下地のキャメルが表れる茶芯仕上げ。周年仕様としてフランネルの裏地を採用。ボタンもシルバー925に変更可。330,000円〜


ブランド初期から展開しているスポーツジャケットは、コンビ鞣しを施した茶芯のゴートスキンで、柔らかさと力強さを兼備。周年企画として、手染めしたうえで色を抜きフェードさせるオプションを用意。非常に手間のかかる特別な試みだ。264,000円〜

荒々しい表情としなやかさを兼ね備えるクードゥーレザーを採用したグッドイヤー製法のエンジニアブーツ。ブラックとナチュラルの2色展開。写真左は本池秀夫さんの私物で、経年した雰囲気も◎。各132,000円



イーグルは周年を機に挑む完全新作。抽象化された立体感が特徴。フェザーには新たなサイズが追加された。 従来の大と中のちょうど中間となる絶妙なサイズだ。より多彩なレイヤリングが楽しめるようになった。
創業55周年、MOTOの現在地。無人島で本池さんが教えてくれたモトの未来
1971年の創業より55周年を経て、今MOTOがたどり着いた場所とは。創業者である本池秀夫さんへのインタビューもふまえ、改めて見つめ直してみる。



本池秀夫さん案内のもと向かったのは、とある無人島。数年前バイクでこの島を通り過ぎた際、島越しに見えた名峰「大山」の景色に一目惚れ。昨年、ついに所有に至ったという。
「最初は木や草でまったく前が見えない状態でしたが、ユンボを買って自分ひとりで島を開拓しました(笑)」。御年75歳にして、このパワフルさと好奇心である。今後どれほどの目標を掲げているのか尋ねてみた。
「大きな目標はありません。『今を生きる』それだけです」。
バイク、無人島、レザー、そしてモト。本池さんからすれば、そのすべてがフラットで、直観的にやりたいと思ったことを実行しているだけとのこと。本池さんは続けてこう語る。
「そう思うようになったきっかけは、55歳の時に肺がんになったこと。ステージⅣで余命宣告までされましたが、奇跡的に回復。あとの人生はおまけだと思って、その時々を精一杯楽しめればそれでいい。そう思うようになったんですよ」。
では、モトの今後についてはどう考えているのか。
「同じく、ゴールはありません。これまでの55年と何も変わらない。ただ、当初自分が美術館を建てることになるなんて思っていなかったように、周りの方々の協力や自分の衝動的な行動で、結果的になにかが変わることはあるかもしれませんけどね」。
激変していく時代や流行に左右されることなく、ただ革に導かれるかのようにして作品と向き合い続けてきた本池秀夫さん。次の5年、また次の5年と、モトは何を我々に見せてくれるのだろうか。楽しみに待ちたいと思う。
【問い合わせ】
MOTO
http://www.motostyle.jp
photo/Hirotsugu Hoshikawa 星川洋嗣 text/Shuhei Takano 高野周平
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