
実はTDKは身近で、しかもすごい会社
『TDK』と言えば、我々世代の多くの人にとって『カセットテープの会社』だろう。若い世代の人なら『何の会社か知らない』という人も多いかも。
しかし、実は、我々の大好きなiPhoneにもTDKの部品は大量に使われている。たとえば、iPhoneのオートフォーカスの動作を検知しているのは『トンネル磁気センサー』というゴマの数分の一という小さなセンサーだ。その他、コンデンサー、コンバーター、各種磁気フィルター、センサー類など磁性体をはじめとしたTDKの数多くの部品がなければ、ITデバイスは成り立たないほどだ。
実は、このYTCをティム・クックが訪問した時にTDKの方とお話して、そのご縁で今回の内定式の取材に呼んでいただいた次第。

冒頭に挨拶をされたのは、代表取締役社長執行役員CEO・齋藤昇さん。齋藤CEOは、TDKの特徴を『ベンチャースピリット』だと語られた。齋藤CEOは非常に話し上手。ティム・クックへのプレゼンの時には、自社のプレゼンムービーに合わせて踊り出したりと、聴衆の気持ちを掴むのもとてもお上手。実は就職活動の時は、お笑いを目指そうとして某エンタメ企業に履歴書を送ったことさえあるとのこと。話し上手なはずだ。
CEOが毎回内定式に出席するわけではないようだが、今回は「ぜひ内定者と直接話したい」と、この日の式に参加したという。
以下のTDKに関する話や、内定式に『ポルシェ・エクスペリエンスセンター東京』を使った理由も齋藤CEOが語ったお話を元にしている。

さて、TDKの作っているのはiPhoneなどスマートフォンの部品だけではない。スマホ、スマートグラスなどのいわゆるガジェットはもちろん、普通の自動車も今やセンサーなど電子デバイスの塊だし、それがEVになるとさらにその倍ほどの部品が使われるようになるという。また、TDKの関連企業ではバッテリーも作っているそうなので、さらに関わる領域は広がる。TDKは自らの技術を『TDK is in everything, everywhere』と表現することがあるが、まさに世界中のあらゆる電子デバイスの中に使われているのだ。

また、最近、猛烈な需要に基づいて増築されているAIサーバーにおいても、積層セラミックコンデンサー、インダクター、温度・電流センサー、電源装置、HDD磁気ヘッドなど、数限りない部分に大量にTDKの部品が使われているし、将来的にAIの高速化を実現するためのスピンメモリスタという素子や、マイクロ波アシスト磁気記録、熱アシスト磁気記録などの技術にも取り組んでおり、実はAIが普及すればするほどTDKの部品の需要が増す構造になっている。
『カセットテープの会社』などというのはとんでもない時代遅れの認識で、いまや、スマートデバイスから、EV、AIなど多くのデバイスの土台を支えている日本を代表する先進技術を持つ企業のひとつなのだ。
大卒初任給は、いまや30万円!
という将来性豊かな会社に入ろうという人たちだから、会社を見る目もあるし、実際、非常に有能な人たちが狭き門をくぐり抜けて入っている。
今年の採用人数は118人。学部卒が42人、高専卒が2人、修士卒が68人、博士卒も6人いるという高学歴集団だ(人数は9月30日時点)。調べたところ、TDKの2026年実績の初任給は高専卒27万1000円、学部卒30万円、修士了32万4000円、博士了36万3000円とのこと。厚労省発表の統計によると初任給の平均値は2025年実績で大卒26万2300円、大学院卒(修士、博士の区別なし)29万9000円だから、 TDKがかなり高い給料で優秀な人材を確保しようとしていることが見て取れる。

内定者からの質問では、社風や、待遇などに対するものが多かったが、「どのぐらい勤めばここにあるようなポルシェを買えるでしょう?」というものがあって、面白かった。もちろん、明確な回答はなかったが、長年勤めている社員や役員には、ポルシェオーナーもいるとのこと。
ちなみに、調べてみると卒業年次の4〜5月に面接を受けはじめて、2〜3回の面接で最終面接にたどり着くのだそうだ。今どきは、最終面接以外はオンラインが多いというのにも、我々の世代からすると隔世の感がある。

学生の会話に耳を傾けると、研修がいつまで、どこであって、その後、それぞれどこに配属されるかが話題の中心だった。TDKの大学卒、大学院卒の場合、配属先は秋田県をはじめ、千葉県、山梨県、長野県など、全国の研究開発・生産拠点、または東京オフィスが中心になるとのこと。
地方の拠点になった場合も、カフェ、フィットネスジム、カーシェアなどが入った非常に立派なワンルームマンションのような寮があるそうだ。寮の整備を街づくりとして考えている、という説明もあった。こうした話は、入社後の不安に対する具体的な答えになる。内定式は、同期や先輩の顔を知ると同時に、自分の生活を少しずつ想像する場所でもあるのだ。
『ポルシェ・エクスペリエンスセンター東京』が会場になったは、TDKがポルシェ・フォーミュラEチームのオフィシャルテクノロジーパートナーだから
ちなみに、この場所が内定式の会場に選ばれたのは、TDKがフォーミュラEのポルシェ・フォーミュラEチームと、ポルシェ コアンダ eスポーツ レーシングチームのオフィシャルテクノロジーパートナーになっているから。

クルマを動かすのは、エンジンやモーターだけではない。車両の状態を捉えるセンサーや、電気を扱う部品、それらを使った制御が走りを支えている。電動化や運転支援が進むほど、電子部品の仕事は広がっていく。
取材で今後注力する分野を尋ねると、齋藤CEOは『AIエコシステム』を挙げた。ただし、AIといってもデータセンターやサーバーだけではない。AIスマートフォン、スマートグラス、モビリティのADAS、つまり先進運転支援システムも含むという説明だった。TDKはモビリティには10年以上前から注力しており、電動化が進むなかでTDKの貢献は大きくなっていくと考えている。
