AIがさまざまな分野で起こす地殻変動に注目
まず冒頭、Scrum Ventures創業者/ジェネラルパートナーの宮田拓弥氏によるキーノートセッション。テーマは『AIが社会自体を変えつつある中、私たちはどこに価値を見出すのか?』。

宮田氏が、直近の3ヶ月を振り返って感じたのは、やはり一番はAIの驚くべき進化についてだという。1年前からでさえ考えられないほど。 次に宇宙開発、スペースXやアルテミス計画など、これらは米中の競争という新たな局面だが、アメリカの宇宙開発が加速度的に進んでいる。 それから戦争での利用も大きいところだが、ドローン。これは戦争の影響が非常に大きい。このあたりが最新のトレンドだというのは異論のないところだろう。
続いて、宮田氏は彼が仕事に就いてからの30年間について振り返った。

30年前にデジタル化が始まり、スマホ、アプリなどによるそのパーソナル化、モバイル化。それから、VR、位置情報、そして、コンピューターの中でのAIから、リアル社会に影響を与え出すAIと、驚くべき速度でトレンドが変化していっている。
宮田氏によると、Scrum Venturesが今注力しているのは、『テクノロジー』、『街』、『カルチャー』の3つの分野なのだそうだ。

ひとつはもちろん、『AIのさらなる進化』について。Scrum VenturesもApptronikというヒューマノイドを作っている会社に投資している。ApptronikはGoogleが唯一投資したヒューマノイドの会社なのだそうだが、AIと連携することで、たとえばロボットに「カリフォルニア州の法律に沿ってゴミを分別して、そこのゴミ箱に入れて」というようなことが可能になっているのだそうだ。
また別の投資先であるAMI Labsという会社は物理AI、フィジカルインテリジェンスを扱う会社。トヨタ、NVIDIA、Samsungも投資しており、会社ができた瞬間に時価総額が5000億円になったという。LLMの次にトレンドになるのではないかと言われている『ワールドモデル』の論文を書いたNY大学のヤン・ルカン氏が創業者なのだそうだ。もうひとつが、IXANA。こちらはこの日の登壇者なので、後ほど。

ふたつ目は『産業の再定義』。既存の巨大産業をAIネイティブなカタチで変革するスタートアップ。それがEarth AI。

Earth AIは鉱山を開発するスタートアップ。リチウムとかモリブデンとかそういう金属をオーストラリアのような広い国で探す場合、従来の方法だと200回掘って1回、つまり0.5%ぐらいの成功率だった。そこに2億8440万ドル、つまり約400億円を投資するというような世界だった。Earth AIはなんと70万ドル、約1億円の投資で、4回掘って3回、つまり75%の成功率を挙げたのだそうだ。これはたしかに産業構造が変わる。

さまざまなテクノロジーの進化によって、新たな価値創造が行われる。特に、最近の急速なAIの進化によって新たな価値が生まれる速度は速くなっている。この後、行われた4つのセッションを簡単にご紹介しよう。
宇宙開発にロボットが必要な理由
最初に登場したのは、なんとNASAでAI研究のリーダーをしていた経験のあるイグナシオ・G・ロペス・フランコス氏。NASAとはといえば当然のことながら、月へ行くとか、宇宙開発というイメージが強いが、NASAはロボットや自律制御のテクノロジーにおいても非常に先進的な技術を持っている。 今回は、Scrum Venturesのミシェル・ヤン氏が、NASAにおけるヒューマノイドロボットの歴史やユースケースについて話を聞いた。

写真はNASAのバルキリーというロボット。このロボットは2013年に発表されたものだが、それ以前からNASAは長らくロボット開発にリソースを費やしている。

ご存知のように宇宙空間は非常に過酷で、我々人間が活動するには酸素や温度などの環境を常に完全に維持する必要がある。それには膨大なリソースが必要になる。 もしロボットが人間の作業のいくらかを代替できるのであれば、我々が生きられる環境を保持しなくても、作業を進めることができるようになる。
将来、月面や火星に基地を作るとなれば、何百人もの労働者を現地に運ばなければいけないかもしれない。 しかし、ロボットを向こうに運搬し作業させる、もしくはロボット工場自体を月面や火星に作ることができれば、人間の居住環境を大きく広げることなく、開発を進めることができるようになる。

そういった意味で、ロボットのテクノロジーは、宇宙開発においてもとても大切なのだ。
また、地球から遠くなればなるほど、通信の遅延が問題になる。たとえば、月で約2秒、火星になると、最も近い時でも片道約3分、遠い時には約20分以上、往復で40分以上の時間がかかる。このタイムラグを超えてリモートコントロールで操作するのは不可能。 ヒューストンの指示を仰ぐことはできないのだ。つまり、AIを搭載し、自律的に判断ができるロボットが必要になるのだ。
デジタルデバイスを人体を介して接続する次世代通信
次は電波に依存しない通信の話。 Ixanaのアンギック・サルカールCEOが話して、実演された。
軍事用途ではBluetoothは使えない。傍受されるし、妨害されるから。
そこで、兵士が使うデジタルデバイスを人体自体を媒介として接続するという技術を開発しているのだそうだ。

しかし、この技術、軍事用途に留まらない。次世代ウェアラブルデバイスや、AIデバイスの基盤技術として大きな可能性を持っているのだ。

実際に、右手に持ったトランシーバーの音が、スピーカーに接続した銅版に手を近づけたら鳴るのには驚いた。有線並の通信速度が実現可能だそうで、ユニークな技術だと感じた。
『スポーツ』と『街』と『テクノロジー』
Scrum Venturesのジェネラルパートナー兼最高執行責任者である髙橋正巳氏が、モデレーターとして話したのは、Titletown Techのクレイグ・ディックマン氏。

世界で最も人気があるスポーツの一つ、アメリカンフットボールのチーム、グリーンベイ・パッカーズは、市民がオーナーであるという点が非常に特殊で、今注目されている。 ウィスコンシン州のグリーンベイが本拠地で、創設は1919年とNFLでも最古クラス。スーパーボウル優勝4回という名門チームだ。
グリーンベイ・パッカーズは47エーカーの土地を取得し、そこにTitletownという施設を設立した。その場所で、地域に深く根ざした産業と、投資を行っており、マイクロソフトが協力する施設なども設けられているという。

地域社会とスポーツ、そしてテクノロジーが組み合わさる例として、Scrum Venturesも北海道でHFX(HOKKAIDO F VILLAGE X)、渋谷でSHIBUYA FULL BLOOMなどの取り組みを行っており、取り入れられる知見は多そうだ。
AIは創薬をどのように変化させているか?
最後のセッションはAI創薬に取り組むOlio Labsのトム・ローズベリー博士。

ローズベリー博士は、患者の特定の疾病に対してどの医薬品を組み合わせるべきかを科学的に決定するシステムをAIを利用して構築した。電子診療記録と臨床試験データを処理するAIエージェントシステムだ。

また、革新的なマウス実験プラットフォームを構築した。従来4週間3万ドルかかった体重減少実験をわずか24時間200ドルで実験できるプロプライエタリなハードウェアシステムを開発した。 AIが医療で役立つ機会は数多くありそうだ。

最新の技術トレンドが世界に与える影響が凝縮されていた
未来を見通すのは難しい。しかし、Scrum Venturesは常に世界中のスタートアップから情報を集め、分析し、様々な業界の技術トレンドを追い、投資すべきポイントを探り続けている。
SCRUM CONNECT 2026も非常に興味深いイベントだった。
(村上タクタ)
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