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エンジンの魅力をiPhone/iPadで再現したTrans4motor R開発秘話

以前紹介したTrans4motor Rを開発した、阿部卓己(あべ たくみ)さんにインタビューすることができた。ここに至るまでの開発の歴史、苦労した点、秘められたアプリの機能などについて、興味深いお話をうかがうことができた。

Trans4motor R
https://apps.apple.com/jp/app/id6739180076

開発したキットピークは、なんと30年以上前にMac用アプリを作っていた

阿部さんが代表を務める株式会社キットピークの歴史は古い。

そのルーツはなんと、30年以上前、1995年にリアルタイムのテクスチャマッピング3Dエンジンを自主開発して実現したApple Macintosh向けレースゲーム『Racing Days』に遡る。

取材時ご持参いただいたパッケージの裏を見ると、対応機種にPowerPCとあるのが懐かしい。上段がRacing Daysで、下段が後継のRacing Days Rだが、Rの方はPowerBook 5300、1400、3400でも動くらしい。互換機の名前があるのも時代を感じさせる。

初代Trans4motorから、大幅にアップデートされた『R』

Trans4motorには初代があり、発表は2014年12月17日とのことなので、11年前。対応機種にiPhone 4S以降、5s/5c/6/6 Plusとあるので、そういう時代だ。

そこから、今回、テクノロジーの進化に合わせて、描画エンジンを一新しての登場となった。エンジンの仕組みを描画し、エンジン形式を指定すると、その形状にトランスフォームするというアプリの基本コンセプトは同じだが、描画は非常に美しくなり、できることが格段に増えている。

栄二一型や、マーリンエンジンを再現した飛行機エンジンアプリTrans4motor Sもある

脱線ついでに、もうひとつ脱線しておくと、Trans4motorと、Trans4motor Rの間には、飛行機用のTrans4motor Sというアプリがある。あいにく飛行機ファンには届かなかったようで、人気は出なかったそうだが、描画的にはTrans4motor Rに近いクオリティで、飛行機のエンジンが描かれる。

Trans4motor S
https://apps.apple.com/jp/app/trans4motor-s/id1561448237

筆者は自動車やバイクだけでなく、飛行機も好きなのだが、飛行機用エンジンというのはクルマやバイクとは別に進化していて面白いエンジンがいっぱいある。もちろん、一番気になるのは星形エンジンだが、零戦の栄二一型もこのように見ることができる。

気になる『星形エンジンのクランクってどうなってるの?』という問題も、一部のパーツを消すことができるようになっているので、即座に対応できる。

そう、星形エンジンのコンロッドはご覧のように、親コンロッドがあって、それに6個の子コンロッドが付くカタチになっている。実に不思議なのだが、これでバランスするのだ。栄二一型の場合7気筒の複列で14気筒。飛行風で冷やすために、前列と後列のシリンダーは少しズレて配置されている。こうやって見ていると、当然のことながら下側のシリンダーにはオイルが落ちただろうなぁ……とか、いろんなことを想像してしまう。

星形といえば、プラット&ホイットニーのR-2800。高齢者の方が『グラマンが来てねぇ』と言う際にはF4Uコルセアを表していることが多いのだが、そういう戦闘機に積まれていたエンジンだ。

こちらは1列9気筒を複列備えた18気筒。2400馬力だから重装甲の機体を飛ばすことができる。ゼロ戦の1300馬力がいかにも非力に思える。つらいところだ。

もちろん、星形ではなくV型12気筒エンジンも搭載されている。こちら、ロールスロイスマーリンのパッカードV-1650。これを搭載したP-51マスタングについて語り始めるとキリがないが、トップガン・マーベリックでトム・クルーズが乗っていたP-51Dにもこのエンジンが搭載されているはずである。

V型水冷エンジンは、全面を風に晒して冷却する星形空冷エンジンに対して、スリムに作れるのが特徴。つまり、P-51DマスタングやメッサーシュミットBf109、スーパーマリン・スピットファイアなどは機首がスリムでトップスピードが出る。ただ、後方のシリンダーも均等に冷却するためには、シリンダーの周りにウォータージャケットを持った水冷エンジンである必要があったが、日本の少ない資源と加工技術では、終戦まで安定して水冷エンジンを作ることはできなかった。そういう意味では、マーリンV-1650も羨まし過ぎるエンジンである……。

実車を再現する苦労

話が逸れ過ぎた。

ともあれ、このTrans4motor Sの技術を使って新たに作られたのがTrans4motor Rである。

苦労した点をうかがうと、実車資料の少なさを挙げられた。

なにしろ、メーカーから実車エンジンの図面が出ているわけではない。整備マニュアルなどにもエンジンの内部の寸法などが正確に出ているものでもない。ボア×ストローク、バルブ径などの公開されている数値をもとに推測して作らなければならない。ただ、正しく推測しないと、動かした時に不自然になる。

バイクの場合はギアの歯数などが表記されている場合もあるが、クルマの場合は減速比しか書いていないことが多い。そこで、その減速比から辻褄の合う歯数を計算して出したという。

ギア比も変更することができる。

バイクマニアにとって特に不思議なのは、ここにRC211Vがあることである。

RC211Vというのはホンダのワークスマシン。つまりF1のようなレース用の超少量生産車だ。もちろん、内部構造なども門外不出となっている。筆者は、バイク雑誌編集者時代に、ワークスマシンの撮影のアシスタントをしたことがあるが、一昼夜に及ぶスタジオ撮影の間中ホンダの広報担当者の方が横について、ある一定角度の写真を撮らないように監視されていた(単純に言えば、真横の写真があると図面を起こせるから)。当時はまだ、GP500の時代で、このMotoGP時代のRC211Vについては知らないが、それでも同等以上に秘密であることに変わりはない。

特にRC211VはV型5気筒という独特のシリンダー配置で、その点火順なども秘密だったが、阿部さんは当時のバイク雑誌など可能な限りの資料を集め、謎を解明していったという。

ギア比にいたっては、当然のことながらワークスマシンのギア比など絶対に秘密なはずだが、バイク雑誌に写っていた分解写真のギアパーツの写真を拡大し、歯数を数えて反映したという。このアプリをホンダのエンジニアの方が見たら、驚かれるのではないだろうか?

エンジン音は、メカニズムからリアルタイム生成

もうひとつ興味深いのは、音だ。

エンジンの回転数は、回転計を指で操作するか、iPad/iPhoneを傾けることで、スロットル操作をすることで操作することができる。ギアもギアパネルでタップすることで操作できる。すると、そのエンジンの回転数に応じて、それなりにその車種っぽい音がするのだ。

操作できるのだから単なる録音ではない。しかし、NSXはNSX、ドゥカティはドゥカティっぽい音がする。不思議だ。

これについて聞いてみると、サウンドデザインラボ合同会社と一緒にアルゴリズムSDL法という手法で、音を合成するのだそうだ。合成するのは単発音、次数音、ランダムノイズ、ウィンドノイズ、ギアノイズ。

単発音は、当然のことながらエンジンの爆発音だ。これに次数音、つまり0.5〜8次の16段階の倍音を組み合わせるのだという。おそらくはそれが、ピストン往復のノイズや、バルブの駆動音、カムの動く音、カムチェーンの鳴る音などを再現するのだろう。そこに車種ごとの調整が加えられているので、たとえばどんなマフラーを付けているのか、ボディやカウリングがどうなっているのか? などの影響を補正できるようになっているようだ。

どうりで、なんとなくその車種っぽい音がするわけである。

近いうちに縦置きクランクのバイクも登場

近いうちに、筆者の好きな縦置きクランクのエンジンもサポートされるそうで、それもとても楽しみだ。できたら、モトグッツィや、BMW Rシリーズのエンジンサウンドを楽しめそうだ。

バイク、クルマ用のTrans4motor Rと、飛行機用のTrans4motor S。年末年始の時間のある間に、自分好みのエンジンをいろいろ作ってみるのも面白いかもしれない。

エンジンマニアの方は、買ってみて損のないアプリなので、ぜひお試しいただきたい。

Trans4motor R
https://apps.apple.com/jp/app/id6739180076

Trans4motor S
https://apps.apple.com/jp/app/trans4motor-s/id1561448237

(村上タクタ)

エンジンマニア垂涎のiPad/iPhoneアプリ『Trans4motor R』がめっちゃ楽しい!

エンジンマニア垂涎のiPad/iPhoneアプリ『Trans4motor R』がめっちゃ楽しい!

2026年08月28日

この記事を書いた人
村上タクタ
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村上タクタ

おせっかいデジタル案内人

「ThunderVolt」編集長。IT系メディア編集歴12年。USのiPhone発表会に呼ばれる数少ない日本人プレスのひとり。趣味の雑誌ひと筋で編集し続けて30年。バイク、ラジコン飛行機、海水魚とサンゴの飼育、園芸など、作った雑誌は600冊以上。
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