NHSはブランド名でもモデル名でもない

NHSとは「National Health Service」の略称で、ブランドやモデルの名前ではない。英国の国民保健サービスの一環として、視力矯正を必要とする人々に眼鏡が無償または安価で提供されていた時代があり、その制度を通じて流通したフレームが現在“NHS眼鏡”と呼ばれている。
支給を希望する人は、用意されたカタログの中からデザインを選ぶ仕組みだったという。眼鏡は1940年代後半から1980年代半ばごろまで作られ、さまざまな形やサイズが存在する。
英国のミュージシャンにも愛用者がおり、実用品として生まれながら、現在では英国らしいヴィンテージアイウェアとして評価されている。
素朴な佇まいが魅力の定番モデル“524”

NHS眼鏡の中でも、当時特に人気を集めたとされるモデルが“524”である。
デザインはシンプルで、フレームも意外なほど薄く軽い。華美な装飾はなく、日用品として効率よく作られたことが伝わってくる。それにもかかわらず、現代の装いに合わせると、その簡素さがかえって新鮮に映る。
完成度の高い高級眼鏡とは異なる、少し野暮ったく素朴な表情。それがいまのファッションに取り入れると独特の個性になる。いわば古着における“グッドレギュラー”のような魅力を備えた眼鏡である。
サイズや製造工場の違いを掘る面白さ

全国民を対象とした眼鏡だったため、NHSのフレームには豊富なサイズが用意されていた。524だけでもレンズサイズは複数あり、ブリッジ幅にもいくつかのバリエーションが存在する。
見た目が似ていても、サイズが変われば掛けたときの印象は大きく異なる。自分の顔に合う個体を探すことも、NHS眼鏡を選ぶ楽しみのひとつだ。
さらにフレームの内側には品番や製造記号が刻まれており、その記号から製造工場を判別できる場合もある。“MX”であればMERX社製というように、同じモデルでも作られた背景を探ることができる。
年代や製造元、サイズによって生じるわずかな違いを見比べながら、自分好みの一本を探す。こうした奥深さは、タグや縫製、工場の違いを楽しむヴィンテージウエアにも通じるものがある。
王道のヴィンテージ眼鏡とは少し違う、素朴で実用的な英国のNHS。まだ評価が定まり切っていない今だからこそ、注目しておきたいアイウェアである。
【DATA】
Klein Eyewear(クラインアイウェア)
東京都渋谷区宇田川町35-4 オーク・ヴィレッジ1F
TEL:03-5458-8185
営業時間:12:00〜20:00
定休日:日曜日
Instagram:@kleinvintageeyewear
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