雑誌「2nd」の看板スタイリスト・吉村祥吾の「撮影前夜、事務所にて」第9回

『セカンド』の看板スタイリスト吉村祥吾さんが一体のコーディネイトを組むまでの、理論と感覚が入り混じる紆余曲折を、文字化するスタイリングドキュメンタリー第9回。前回はこちら。

スタイリスト・吉村祥吾さん|1986年生まれ。2016年より『セカンド』で継続的にスタイリン グを担当。普段着のマイルールは「TPOに合わせて、靴から決める」

「ブリティッシュモダン」をテーマに組んだコーデ

編集部 今回は、ロンドン生まれのアイウエアブランド「キュービッツ」のページに登場するコーディネイトです。最初にブランドの方と「英国だけれどカントリー調ではなく、ロンドンっぽいスタイルがいい」という話になり。そこからふたりで考えた結果、英国トラッドをベースにしながら、都会的なスタイルをイメージした「ブリティッシュモダン」をテーマに進めていきました。

吉村 お互いに話す中で、まずはブリティッシュっぽいアースカラーで組んでみようというアイデアが思い浮かびましたね。

編集部 でも、落ち着いたアーシーなカラーリングで全体を統一するだけで、ブリティッシュモダンスタイルになるんですかね?

吉村 う〜ん、それだけだと野暮ったい印象になってしまう可能性があります。

編集部 では、このコーディネイトではどうやってモダンさを出したんでしょうか?

吉村 素材ですね。カバーオールを清涼感のあるリネン素材にすることでリラックス感を出しています。ただ、それがロンドンスタイルとして成立しているのはブラウンという落ち着いたカラーだからこそだと思います。ジャケットが明るい色味やフレンチモールスキンのように光沢感のある生地感だと、やっぱり“フレンチらしさ”が強くなってきますよね。

編集部 ダークトーンを取り入れることでフレンチ感をうまく抑えつつも、素材感によって決して土臭くないバランスに仕上げているんですね。足元に「オールデン」を合わせたのはなぜですか?

吉村 僕の中でイメージする都会的な英国ブランドが、以前「オールデン」とコラボしていたことを思い出しまして。かっちりしすぎていないので「英国そのまま」な印象にならないですし、武骨な雰囲気がブリティッシュトラッドやブリティッシュカジュアルとも相性がいいなと思って選びました。英国クラシックではなく“モダンなロンドントラッド”が裏テーマだったので、タッターソールシャツ以外はあえて王道に寄せすぎないようにしています。

編集部 ちなみに、このコーディネイトを素材感がガラリと変わる秋冬バージョンで組むとしたらどうなるんでしょうか?

吉村 ブリティッシュらしい定番アイテムとして、ツイードやコーデュロイのジャケットやパンツ、シェットランドセーターなどを合わせるのが良いかなと思います。

編集部 でもウールやフランネルのような重ための素材だと、やはり全体的に野暮ったくなってしまいそうじゃないですか?

吉村 秋冬は今回のようなアースカラーだけだと野暮ったく見えがちな素材感も多いので、逆にカラーリングを明るくすることでモダンな印象になります。バーガンディやマスタードだとカントリーっぽくなるので、ペールトーンのグリーンやサックスなど明るいカラーを取り入れるといいと思います。

編集部 なるほど。つまり、素材感と色味のバランスこそがブリティッシュをブリティッシュモダンへと昇華させる重要なポイントなのかもしれませんね。

今回語ってもらったのは「2nd 2026年7月号 Vol.219」P95のコーディネイト。ブランドを代表するモデルであり、クラシックなデザインをベースにした[カートライト]に合わせたスタイル。

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