S&Gを観ながら妄想したポールの日本公演|ビートルズのことを考えない日は一日もなかった VOL.19

『タッグ・オブ・ウォー』のレコードを買った翌日、1982年5月11日、後楽園球場で行われたサイモン&ガーファンクルの初来日公演に出かけた。

2年前の1月にビートルズに興味を持ってから他の洋楽にも興味をもつようになり、モンキーズ、ビーチ・ボーイズ、ビリー・ジョエルなどのアーティストを聴きだした、その流れで買ったレコードがサイモン&ガーファンクルのベスト盤だった。

生まれて初めて自発的に行ったS&Gのコンサート

前年のセントラルパークでの公演を収めた2枚組ライブ盤

いずれもきっかけはテレビで、モンキーズは『モンキーズ・ショウ』の再放送、ビーチ・ボーイズは『ベストヒットUSA』の中で流れていたブリジストンのCMソング「アイ・ゲット・アラウンド」、ビリー・ジョエルはチョコホットのCMの「オネスティ」とウォークマンのCMの「ドント・アスク・ミー・ホワイ」、サイモン&ガーファンクルはソニートリニトロンCMで流れていた「スカボローフェア」がとても印象的だった。

そのなかでも中高生の間で起こったモンキーズのリバイバル人気は異常なほどで、デイヴィ・ジョーンズが日本だけで新曲を発表したほか、来日してテレビ東京の朝のテレビ番組『おはスタ』に出演し、コンサートまで行うまでに発展。小学生だった妹もすっかりモンキーズファンになって、芝郵便貯金ホールのコンサートに出かけて行った。

前年に再結成したサイモン&ガーファンクルは、セントラルパークでコンサートを行った際のもようがライブアルバムとなってリリース、それがヒットを飛ばすなどして話題になっていた。そんな折、来日公演の開催が発表された。60年代にビートルズと並び人気のあった、というような謳い文句に影響されたのだろう、人生で初めてコンサートに行きたいという気持ちが芽生えた。これは行かねば、どうしても観ねばという気持ちが高まった。

終演後に妄想したポールの後楽園球場公演

5月11日に行われたサイモン&ガーファンクルの後楽園球場公演のチケット

チケットを取るためにどう行動したらいいのか。新聞で得た情報を頼りに原宿にあった興行会社の事務所まで出かけ、長い列に並んだ末に整理券を受け取った。華やかな街の風景に気おくれしながらひとり、原宿歩行者天国を歩いた。

定かな日時は覚えていないが、寒くはなかったので3月頃だったか。後日今度は整理券をチケットに引き換え、購入するために再び原宿を訪ねた。受け取ったチケットには1塁側1階J列241と書かれていた。

それからベスト盤とライブ盤を入念に聴き込むなど予習をして迎えたコンサート当日、学校終わりに制服のまま後楽園球場に向かった。小学生の頃に巨人戦や日本ハム戦を観に来ていた球場周辺の様子がいつもとは違うことに戸惑いながら場内へ。見慣れたグラウンドも通常とは異なり、バックスクリーン方向のセンター付近にステージが設置され、グラウンド内に観客が入っている絵を初めて見た。

開演時間が近くなるころには場内は満員の観客で膨れ上がり、自分のまわりは立錐の余地もない。あとは、本人の登場を待つばかりという状況のなか、なぜか醒めていた。あれだけ待望していたのに自分の気持ちが高まることはなかった。1曲目は「ミセス・ロビンソン」で2曲目は「ホームバウンド」、以降も名曲のオンパレードで、お目当ての「スカボローフェア」も聞けたのに高揚感はなく、逆に落ち着いた会場の雰囲気と5月の涼しい風が吹く中での静かな音楽を聴きながらうとうとしてしまった。後半はまさかの寝落ち。

リチャード・ティー、スティーヴ・ガットなど、バックをフュージョン界の大物が務めていたことを後に知るのだが、15歳の少年には少し大人なコンサートであった。やっぱりビートルズが、ロックンロールが好きだなと再確認するまでもなく、家に帰ったら『タッグ・オブ・ウォー』を聞こうと思いながら帰路に着いた。同時にいつか後楽園球場でポールのコンサートが見られたらな、でも無理かな……なんて妄想も巡らせたわけだが、当然のこと、8年後に後楽園球場ではなく東京ドームでその夢が実現するなんてことは知る由もなかった。

『タッグ・オブ・ウォー』のブックレットに掲載されていた写真
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竹部吉晃
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竹部吉晃

ビートルデイズな編集長

昭和40年男編集長。1967年、東京・下町生まれ。ビートルズの研究とコレクションを40年以上続けるビートルマニア兼、マンチェスターユナイテッドサポーター歴30年のフットボールウィークエンダーのほか、諸々のサブカル全般に興味ありの原田真二原理主義者。WEBメディア『昭和MILD(https://showamild.com/)』もよろしくお願いします。
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