
XREAL AURA
https://www.xreal.com/jp/aura
空間に映像を描く、XREALとアップルの異なるアプローチ
『空間に仮想のオブジェクトを描画する』というのはひとつの夢だ。

この夢を実現するには、大きくわけて2つの方法がある。ひとつは、実際の光景を肉眼で見ながら、そこにある種のプリズムを使って、デジタルで描画した立体物を描画する方法。いまひとつは、すべてをカメラで取り込み、実際の光景とデジタル描画を合成したものを、目の前の小さなモニターに表示する方法だ。
言うまでもなく前者がXREAL AURAの採った方法(光学パススルー)で、後者がVision Proの採った方法(ビデオパススルー)だ。

いずれにしても、実際の空間にあるものを把握して、それとズレないように描画し、しかも左右の目に若干向きの違う映像を投影して立体感を再現するには非常な困難が伴なう。
伝え聞いたところによると(これは取材に基づく話ではなく、噂話の類)、アップルも当初は光学パススルーを志向したが、リアル空間に存在するものと、仮想空間に存在するものの位置合わせの難しさと、プリズムを介することによって正しい色表現ができないことに問題を感じ、ビデオパススルーに路線変更したという。

ビデオパススルーにしても、多くのカメラから取得した情報を立体情報として演算し、即座に2つのOLEDディスプレイに表示するには常時、非常に大量の演算をし続ける必要がある。これも伝え聞いた話だが、最初にCEOのティム・クックにプレゼンテーションした時の機材は、ひと部屋分ぐらいの大きさがあったという。発売されたVision Proもそれなりの重さがあるのはご存じの通り。また、演算を続けるから、通常使用でのバッテリーライフは2時間だった(現行のM5モデルは2.5時間)。
アップルほどの企業の力を持ってしても、あのサイズと60万円近い価格(当時。現在は64万9800円〜)にしかならなかったのだ。
「グラス型ディスプレイ」から、本来のARグラスへ
一方、XREAL(とそのライバル企業)は『ARグラス』を標榜しながら、実際のところスタート当初は目の前に小さなディスプレイを搭載した『グラス型ディスプレイ』に過ぎなかった。目の前に表示されているだけで、別に空間に固定されているわけではないからだ。よく、広告に『10m先に最大330インチ』というような表現が使われていたが、空間固定されていないなら(近づくことができないなら)60cm先に20インチのディスプレイがあるのと変わりない。筆者が、メーカーが言うところの『ARグラス』とは書かずに『グラス型ディスプレイ』と表記していたのはそれが理由だ。

一方、XREALはスタート当初はそうだったにしても、本当に志していたのはあくまで『ARグラス』だったのだ。
そして、このXREAL AURAで、同社はついにその目標にたどり着いたのかもしれない。

初音ミクが目の前に。体験して分かった完成度と課題
イベント会場で、限られた体験だったので、断言はできないが、完成度は「思ったより良かった」。
ちゃんと、空間に歌って踊る初音ミクを置くことができたし、VR空間に映像を映し出したり、AR空間上でゲームをしたりはできた。

映像は予想していたよりずっと美しく、かなりしっかりと空間に固定することができた。目の前にGoogle Earthを表示して操作するデモは空に浮かぶ鳥のような視点を体験できた。

一方、私が操作に不慣れだったこともあるかもしれないが、指先は思ったように認識されず、操作に戸惑うことが多かった(この問題に関しては、「こういう状況で指が認識されやすい」というようなレクチャーがあれば改善するかも。Vision Proでも慣れない人は操作に戸惑うだろうし)。
また、体験させてもらえたアプリの中には複雑に現実空間と絡むものはなかったので、もしかしたら、現実空間のオブジェクトとの絡みはあまり得意ではないのかもしれない。

デモ映像の中にあった、リアルに存在する鍵盤の上に、タッチすべきキーに印を表示して操作させるようなことができるのかどうかは分からなかった。
また、筆者が一番気になる外部ディスプレイとしての表示も体験できなかったので、これも保留。ただし、体験した範囲の中では、この機能はかなりちゃんと動作するのではないかと思った。XREAL OneにEyeを組み合わせても6DoFで固定される外部ディスプレイとして運用することはできるのだが、おそらく空間固定の確かさ、視野角の広さから考えても、XREAL AURAの方がかなり良い体験になるのではないかと思う。

Vision Proとの違いは、95g未満の軽さと装着のしやすさ
経験上、この種のAR/VRデバイスは、落ち着いた場所で使わないと最終的な判断はできないが、『目の前にCGオブジェクトが見える』という点において、XREAL AURAは想像以上に良くできていた。
ただし、描画の美しさ、実際の空間との衝突処理という点に置いてはVision Proの圧勝だ(Vision Proは、実際の空間のテーブルの上に、仮想のオブジェクトをしっかり置くことができるし、そこに影まで描画する)。

しかし、XREAL AURAが圧倒的に優れているのが、その軽さ、装着のしやすさだ。
本体重量はわずか95g未満。まるで、サングラスのように気軽に装着できる。重くて、フィッティングに猛烈な手間のかかるVision Proと大きく違う。
これは演算処理を別体の、約265gの専用コンピュートパック(別体バッテリーのような部分)に分けたからこそできることだ。Vision Proの場合は、全視野を描画しなければならないので、レイテンシー的に本体にチップセットを積まなければならなかったのだろう。
装着が容易だから、気軽にゲームをしたり、外部ディスプレイとして使うことができるはずだ。その点で、XREAL AURAには大きな可能性があると思う。
視野角70°、6DoF対応。AURAを支えるハードウェア
最後にざっくりとスペックを紹介しておこう。ディスプレイはソニー製のMicro-OLEDで、片眼1920×1200ピクセル、最大120Hz、ピーク輝度は最大1050ニト。視野角は新開発の『X Prism optics』により最大70°とされる。グラス側には、XREALが自社開発した『X1S』チップも搭載し、わずか3msという低遅延のトラッキングを担う。6DoFの空間トラッキングやハンドトラッキング用のカメラに加え、プライバシー表示LED付きのAI認識カメラも備える。

瞳孔間距離に合わせて、Mサイズ(60〜66mm)とLサイズ(66〜72mm)の2種類のフレームがある。度付きレンズ用のインサートフレームも同梱され、JUN GINZAと提携した専用レンズフレームも用意される。
Geminiと、Androidアプリがそのまま使える強み
XREAL AURAは、ディスプレイとしてスマホやパソコンに接続するデバイスだった従来のXREAL One Proなどと違い、単体でチップセット、メモリ、ストレージを持ち、Android XRというOSを持つデバイスだ。

接続したスマホやパソコンのディスプレイを表示することができるが、別OSで動作するデバイスだというのが大きなポイント。この点はVision Proに近い。アプリはGoogle Playストアからダウンロードして使う。すでに150以上のXR専用コンテンツも用意されている。リリースには『NBA App for Android XR』『NASCAR XR App』『Fallout: Factions』『Simply Piano XR』などの名前が挙がっていた。
また、もちろんGeminiも動作する。詳細は試していないが、目の前に見えている光景について質問したりもできるようだ。
アクセサリは2種類。折りたたみ式の『XREALワイヤレスキーボード』が1万2980円、GameSirと共同設計した『XREALゲームコントローラー』が1万8990円。

軽快さと価格に期待。日常での使い勝手をじっくり試したい
実際、XREAL AURAはVision Proよりはるかに安価で、軽量で、Android系のOSが動くことで、できることの幅は広いように思う。反面、体験してのクオリティはやはりVision Proの方が高い。
外部ディスプレイとしてどのぐらい便利なのか? 単体デバイスとしてどのぐらい楽しめるのか? いずれ、試用機を借りて検証できるようになったら、じっくりと試してみたい。

また、同時にOne Proの映像の見やすさと装着感を改良したXREAL 1 Pro+も発表された。最大の違いは明るさで、ピーク輝度が700ニトから1,200ニトへ、約1.7倍に向上。さらにAI HDRを搭載し、映像の明暗を調整するという。標準・映画・読書の表示モードも追加され、用途に合わせて切り替えられる。通常の2D映像を立体化する処理も30fpsから60fpsへ進化。鼻パッドも見直された。価格は8万4980円。XREAL Eyeのバンドルセットも用意される。

(村上タクタ)
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