天神ワークス、20年目の現在地。着心地だけでなく経年変化までこだわった至極のウエアを紹介

革と向き合い続けて20年。天神ワークスはいま、代表・髙木氏が近年開発を進める新たなマテリアルを携え、次のステージへと歩みを進めている。レザーの表情や着心地、経年変化にまでこだわった新作・準新作から見えてくるのは、変わらないものづくりへの信念と、革の可能性を広げ続ける挑戦だ。いまの天神ワークスが描く、革の新しい景色を追った。

TATE JW04 BRUSHED KIP/ OILED KIP|オイルか、ブラッシュドか革の個性で選ぶライダース

英国式ライダース、いわゆるロンジャンをベースに、独自の解釈で仕立てた「TATE JW04」。ヴィンテージの再現ではなく、革そのものの表情を楽しむために生まれた1着だ。使用するのは、キメ細かさとしなやかさ、堅牢さを兼ね備えたキップレザー。注目は、同じ素材を異なる方法で仕上げた2種類の革を用意していること。オイルをたっぷり含ませた「オイルドキップ」は、しっとりとした質感と落ち着いた艶、重厚感が特徴。着込むほどにシワが刻まれ、奥行きのある色味へと変化していく。一方、表面をブラッシングして起毛させた「ブラッシュドキップ」は、柔らかな陰影と独特の質感が持ち味。着込むほどに陰影のコントラストが際立ち、異なる表情を見せる。同じ型紙、同じキップレザーでありながら、仕上げの違いによってそれぞれ異なる経年変化を楽しめるのだ。242,000円

フロントには重厚なメタルジッパーを採用。「Tenjin」のロゴを刻んだスナップボタンや、ウエストのアジャストバックルも見どころ。革の表情を際立たせる丁寧かつ堅牢なスティッチワークにも注目したい。

RL01:1010XX RIGID LEATHER|デニムの色落ちを革で再現した、常識を覆すリジッドレザー

「リジッドデニムのようなアタリを革で表現する」。そんな発想から栃木レザーと約2年をかけて開発したのが「リジッドレザー」だ。使うのは厚さ0.7㎜のキップレザー。その裏面をジャケットの表側に使い、デニムの綾目を型押しで再現。オイルを加えてドラムで繊維をほぐしたのち、熱をかけてプレスすることで、生デニムさながらのハリと光沢を生み出した。生成りの革を白く染め、その上から深い濃紺を重ねた白芯仕様も見逃せない。着込むうちに表面が毛羽立ち、擦れた部分から白芯が顔を出す。やがて下地の生成りも飴色に変わり、デニムの色落ちと革の経年変化が交錯するのだ。大戦期のGジャンをベースに、Good Old & Co.が1930〜40年代のヴィンテージミシンで縫製。チェーンスティッチに沿って生まれるパッカリングまで、デニムの表情を追求している。297,000円

背面のシンチバックには鉄製バックルを採用。初回受注分には1930年代製「SOLIDE」のデッドストックを使用した。さらに革の端を白く塗装し、赤いステッチを施すことで、赤耳まで再現する徹底ぶり。

レザーズデイで国内20着限定の受注販売を行った「ゴールドラッシュ」。リジッドレザーを、タンカラーの白芯仕様に。この特別な革は、来年に展開予定の「ダックレザー」にも通じている。すでに完売した幻のモデルだ。

MECHANIC VEST-CV06 BRUSHED KIP|ナイロンのベストを革で仕立てるという挑戦

1970年代のレーシングベストを、ナイロンではなく革で仕立てた。注目は独自開発のブラッシュドキップレザーだ。繊維密度の高いキップをブラッシングし、通常の倍量のオイルを含ませてから、適温でプレス。傷が付きにくく、手入れは乾拭き程度で済む一方、着込むほどにアタリや艶が現れる。本来はナイロン製の中綿入りレーシングウエアを、レザーと中綿の組み合わせで再現。素材を先に仕上げてから縫い上げる工程によって、軽さと着心地を両立させた。キップの防風性と中綿の保温性を備え、冬場の重ね着にも活躍。襟は留め方次第で立ち襟やタートル風に変化し、フラップ付きポケットは抜群の収納力を誇る。165,000円

フロントには「Tenjin」のロゴを刻んだオリジナルスナップボタンを採用。中綿入りのボディにはスティッチを走らせ、レザーならではの立体的な表情を演出。フラップ付きポケットは、横からも手を差し込める仕様で実用性にも優れる。

UTILITY VEST-CV07 BRUSHED KIP|ウールの風合いを表現した新感覚ワークベスト

1930年代のウールワークベストを着想源にした1着。見どころは、ウール地のような質感を表現したオリジナルのキップレザー。表面をブラッシングした「ブラッシュドキップ」にウール調の型押しを施し、織物を思わせる細かな凹凸と革ならではの陰影を両立。着込むほど身体の動きに沿ったアタリが生まれ、型押しの陰影も際立つ。パイピングにも綾織り柄の型押しを施すなど、素材へのこだわりは細部に及ぶ。裏地には柔らかなコットンフランネルを採用。1930年代式のニップルボタンや、針刺し式バックルを使ったシンチバック、内ポケットも備える。シャツの上にもジャケットのインナーにも取り入れやすい。165,000円

フロントには緩やかな曲線を描く大ぶりなパッチポケットを配置。縁にはレザーのパイピングを施し、立体的な輪郭を強調している。背面には細身のレザーベルトを備え、ウエストのフィット感を調整可能。黒で統一された金具も、全体を引き締めるアクセントになっている。

20年目もまだまだ止まらない革開発

オイルドキップから、デニムの表情を再現したリジッドレザーまで、独自の革を生み出してきた天神ワークス。創業20周年を迎えたいまも素材の可能性を追い求める代表・髙木英登さんに、革づくりへの想いを聞いた。

常識を覆す発想が革の新たな可能性を切り拓く

ヴィンテージのバイクやクルマ、家具をこよなく愛する天神ワークス代表の髙木さん。惹かれるのは、単に古いからではない。そこに刻まれた時代の空気や、使い手が重ねてきた時間だ。そんな髙木さんが20年にわたり追い求めてきたのが、革という素材の可能性。厚みや硬さ、仕上げ方ひとつで表情を変える革には、ほかの素材にない面白さがあるという。

「革は本当に応用力があるんです。厚みや硬さを変えるだけでも、できることが変わる。しかも、つくった段階で完成ではないんです。着る人がどう使い、どう育てていくかという余白が残されている。エイジングは僕らにも予測できないし、その振れ幅の大きさが想像力をかき立ててくれる。すべてを僕らが決めるのではなく、革の未来を着る人に託せる。それが革の面白さだと思います」

この素材の可能性をともに探ってきたのが、創業以来付き合いを続ける栃木レザーだ。ブランドを立ち上げてからの10年間は、耐久性や品質に納得できるスタンダードな革づくりに注力。ブランドの土台を築いてから、かねてより構想していたキップレザーのシリーズに着手した。オイルをたっぷり含ませたオイルドキップ、表面をブラッシングしたブラッシュドキップ。そして、デニムの綾目や色落ちまで革で表現したリジッドレザーへと、開発の幅を広げてきた。ただし、斬新な風合いを生み出すだけでは製品として成立しない。コストや量産時の再現性という現実的な課題とも向き合っている。

「栃木レザーで一緒につくってくれている方は、研究すること自体が好きなんです。僕が『こうできないかな』と相談すると、『面白いですね、やってみましょう』って。もちろん工場としては、同じ品質を再現できるか、量産できるかということも考えなくてはいけない。そこでせめぎ合いもあります。例えば『ルビンの壺』ってあるでしょう。人の横顔にも、グラスにも見える。同じものでも見方を変えるだけで、世界が変わるんです。革づくりも同じで、今まで脇役だったものを主役にしたり、決まった工程を逆からやってみたり。そうすることで、それまでなかったものが生まれる。何でもありにするより、制約の中で自由を探る方が、可能性は広がるんです」

その探究心は20周年を迎えた今も尽きない。2027年にはダック地の風合いを革で表現する「ダックレザー」を展開予定。さらに、ヘリンボーンをモチーフにした「アーミーレザー」など、ミリタリーに着想を得た新素材の構想も進む。縫製には古いミシンを使うという。ヴィンテージへの敬意を出発点に、革だからこそできる表現を探る。20周年を迎えても、髙木さんの素材開発は止まりそうにない。

 

20th Anniversary Trunk Showも開催決定!

天神ワークス20周年を記念したトランクショーを開催予定。インディアンジュエリーや古着など、ヴィンテージを扱う出展者が一堂に会し、物販を行う。詳細はブランドからの公式発表をお待ちいただきたい。

【問い合わせ】
天神ワークス 
TEL03-3870-8658
https://tenjinworks.com

(出典/「Lightning 2026年12月号 Vol.392」)

この記事を書いた人
ジョージ
この記事を書いた人

ジョージ

風合い至上主義

1997年生まれ。学生時代、アウトドア好きが高じてテックウェアに興味を持ち、次第にワークやミリタリーといった起源のある服へ傾倒。経年変化を楽しめるデニムや、長く付き合える天然素材の魅力に惹かれている。民藝品好きで、旅先では器を探すのが恒例。休日はULギアを身にまとい山へ。日本のいいものを、風合いとともに伝えたい。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

ガレージ、インテリア、リフォームまで! 趣味人のための、物件案内。

  • 2020.01.20

好きなものと暮らす、理想の城を手に入れよう。 家は、ただ暮らすためだけの場所じゃない。 どこに住むか、どんな空間にするか、そこで何を楽しむか。 ガレージハウスやアメリカンハウス、趣味部屋、インテリア、リノベーションまで、 「Lightning」ならではの視点で趣味人の理想の住まいを紹介する。

#PR

金子ノブアキが着る【REDKAP × FREAK’S STORE】

  • 2026.10.21

長い歴史を持つワークウエアブランド〈レッドキャップ〉と〈フリークス ストア〉のコラボアイテムを金子ノブアキが今の感覚で着こなす。年齢を重ねたからこそ楽しめる服のこと、ブランドが持つ哲学のこと、そしてこれから大切にしていきたいこと。45歳を迎えた金子さんに、ファッションと生き方について話を聞いた。 タ...

ヒートツイードとは? 軽くて薄くて暖かい、英国派に捧ぐ革命ツイード

  • 2026.10.26

〈トラディショナル ウェザーウェア〉が誇る人気シリーズ、ヒートツイード。英国ツイードのオーセンティックな雰囲気はそのままに、驚くほど軽く、保温性の高いオリジナル生地。一度味わうとやみつき間違いなし! 英国らしくも、軽くて暖かなツイード生地は現代的ヘビーデューティ素材の最適解である。 【コート】ブラン...

「BEORMA」140年の伝統を受け継ぐ、英国屈指のレザークラフト

  • 2026.10.21

英国トラッドを語るうえで欠かすことのできない存在がレザークラフトだ。140年の歴史とクラフトマンシップを受け継ぎ、現代のスタイルにも馴染む唯一無二のプロダクトを生み出す〈べオーマ〉は、その筆頭となりうる存在だ。 熟練職人の魂宿る伝統のレザークラフト 英国中部の小さな町・ウォルソール。革加工・馬具産業...

東洋エンタープライズが手がける「ゴールド」。高品質な素材選びに一切の妥協なし。

  • 2026.10.20

1965年に創業した日本屈指の老舗メーカー東洋エンタープライズ社が手がける〈ゴールド〉。同社が得意とするヴィンテージへの膨大な知見と技術力の高さを活かしつつも上質にモダナイズしたものづくりに定評がある。着用時のシルエットはもちろん、高品質な素材選びに一切の妥協をしないこと。それこそがシンプルな服に深...

Pick Up おすすめ記事

原毛から生地まで。一貫生産を守る英国生地の名門「ムーン」とは?

  • 2026.10.19

服を突き詰めていくと辿り着くのが生地。トラッド好きなら一度は耳にしたことがあるであろう英国の名門が「ムーン」だ。羊毛から紡績、染色、織布を一貫して行う英国最後の生地メーカーが誇る伝統のモノづくりに迫る。(写真は、生地の製造において重要な“織り”の工程。タテ糸とヨコ糸をゆっくりと交差させ、チェック柄が...

東洋エンタープライズが手がける「ゴールド」。高品質な素材選びに一切の妥協なし。

  • 2026.10.20

1965年に創業した日本屈指の老舗メーカー東洋エンタープライズ社が手がける〈ゴールド〉。同社が得意とするヴィンテージへの膨大な知見と技術力の高さを活かしつつも上質にモダナイズしたものづくりに定評がある。着用時のシルエットはもちろん、高品質な素材選びに一切の妥協をしないこと。それこそがシンプルな服に深...

遊び心とヘビーデューティ! 「ジムマスター」のアウトドア&ミリタリー

  • 2026.10.18

ほどよく力の抜けたカジュアルウエアを展開するカナダ生まれの「ジムマスター」。その真骨頂は、実は骨太なアウトドア&ミリタリーにある。ヘビーデューティな機能美を日常着へと昇華させる秘訣は、「ジムマスター」らしいほんのすこしの遊び心! カラフルな配色の裏に確かな実用性あり! 【右】主役は厚手のボアジャケッ...

世界最高峰のニットメーカー「JOHN SMEDLEY」が編むもの。

  • 2026.10.20

イングランド中部、リーミルズの自社工場で240年以上前からニットウエアを作り続ける〈ジョン スメドレー〉。1784年に創業した同ブランドが編んできた歴史と伝統が息づく場所で彼らが編むものとは。 240年の伝統と魂が息づくファクトリー 英国のトラッドブランドとして群を抜く歴史を持つのが〈ジョン スメド...

気鋭のアイウエアブランド「CUBITTS」が描く、クラシックとモダンの共鳴

  • 2026.10.19

18世紀から20世紀にかけて眼鏡産業の世界的な中心地であったものの戦後、衰退の一途を辿ったロンドン。この地で2013年に創業した「キュービッツ」は当時を彷彿とさせるクラシックスタイルをモダンに昇華させた独自の世界観を築く気鋭のブランドだ。 伝統と現代とを繋ぐアイウエアの研究所 「キュービッツ」は伝統...