細やかな心遣いができる国民性があってこそ
今年で創業30周年を迎えたTHE FLAT HEAD。1990年代、古着店のオリジナル製品から始まり、1996年にブランドとしてスタート。当時は服作りの知識も乏しく、まず苦労したのが、理想を理解してくれる工場探しだったという。
「いま思えば、当時は工場さんに無茶な要求をしていました。それでも一緒に綿や糸を研究し、ミシンや織機を改造しながら、徐々に理想の形に近づけていきました」
そこで宮坂氏が実感したのが、日本の職人たちとのコミュニケーションの深さだった。言葉にしきれないニュアンスまで汲み取り、ときには一歩先まで気を配る。そんな細やかな心遣いがあったからこそ、現在の基軸となる定番が生まれたという。宮坂氏が工場長を務める自社の革工房にも、長年働く地元の職人が多数在籍。日々顔を合わせ、密なコミュニケーションを重ねられる環境からも、意思疎通をいかに大切にしているかがわかる。この積み重ねこそ、旧きよき技術を受け継ぐ職人たちと信頼関係を築き、理想のモノ作りへと反映される。アメリカの世界観を追い求めてきたブランドが、モノづくりの答えとして辿り着いたのは、日本という環境だった。

HS005の製品サンプルとして宮坂氏が5年着込んだ馬革のジャケット。レザーファン垂涎の袖ジワと、随所に現れた茶芯が目を引く。革は25年以上付き合いのある「新喜皮革」と共同開発。長年の信頼関係こそが、ブランドが理想とする馬革を生み出した。

20年着用したロングセラーの鹿革シャツ。経年により袖の色焼けや艶が増しているのがわかる。革は1899年創業のタンナー「藤岡勇吉本店」にオーダー。こちらも馬革と同様に長年にわたる関係値があるからこそ、理想とする鹿革が手に入るのだ。

THE FLAT HEAD Director/宮坂勝さん|フラットヘッド創業メンバーの一人で、レザーウエアを中心にブランドを牽引するディレクター。自社の革製品専用工房であるSOCKBURGの工場長も兼務する。いまでもサンプルの製作は自ら行いモノ作りの最前線で指揮を執る。


服作りの資料としている1950年代のアメリカンカルチャーにまつわる資料本。時代背景や当時のデザインを読み解くうえで欠かせない存在であり、デザインの原点。もうひとつのルーツがモーターサイクル。宮坂氏自身もバイク乗りだけに、レザージャケットには実用に耐えるタフさが備わる。工房ガレージには、ブランド名の由来となったフラットヘッドエンジンを搭載する1929 Ford model Aと1946 H-D model Uが大切に収められている。

創業30周年を記念して製作された、白い鹿革のウエスタンシャツ。鹿革専門タンナー、藤岡勇吉本店独自の“純白鞣し”を採用し、輝くような白さを実現した。素肌の上からでも着られるほど柔らかく快適で、まさに革シャツの最高峰と呼ぶにふさわしい一着だ。

近年ガレージを拡張し、広くなったことで作業がしすくなった自社工房。あえて生産ラインは設けず、職人ひとりが一着を縫い上げる方式を採用しているのが特徴。一着ごとに責任を持つことで、品質を高めると同時に、職人の熟練度を磨く狙いもあるのだとか。

宮坂さんが愛用する革包丁。かつてはハイテクな裁断機械を採用しようかと検討したこともあったが、結局昔から使い慣れた道具が一番だったという。海外の展示会などで、参考用として持って行くと、日本ならではの道具として興味を示されることも多いのだとか。
[THE FLAT HEAD] FN-LJ-HS004 HORSEHIDE QUILTING SINGLE RIDERS JACKET

プレーンモデルのHS005をベースに’50sカルチャーを象徴するダイヤキルトを背面側部に配置したシングルライダース。バイクでの実用性を備えながら、街着としても違和感なく着られるハイブリッドなデザインも魅力。限定カラーのブラウン革で仕立てた特別仕様もリリース。¥341,000_
【問い合わせ】
THE FLAT HEAD
Tel.026-275-3005
https://www.flat-head.com
Photo/Shunichiro Kai 甲斐俊一郎 Text/Keiju Sakamoto 坂本桂樹
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