180年以上の歴史を刻む、由緒正しきバスクベレーを知っているか?

フランス南西部にある小さな町、オロロン=サント=マリー。ベアルン地方と呼ばれる、この辺り一帯で親しまれてきた日差しや風を避ける被り物は後に「バスクベレー」と呼ばれ、フランスからヨーロッパ、世界各地へと広まった。「ロレール」は、“故郷“であるこの地で、現存する唯一のファクトリー。先人たちが遺したレシピを守り、ほぼハンドメイドで作られる確かなクオリティと歴史を身に纏うということは、洒落者にとって悦びでしかない。

本来は裏地に付けられていたヴィンテージのエチケット(タグ)をハンドメイドでパッチワーク風に縫い付けた[エリダン]。フランス発のオリジナルベレーブランドである、ロレールの歩みをモダンに表現した近年の人気作。ベレー2万5300円/ロレール(クオリネストTEL03-6273-3536)、ベスト1万9800円/ トリビュート( ビショップTEL03-5775-3266)、セーター3万6300円/ジョン スメドレー(リーミルズ エージェンシーTEL03-5784-1238)、パンツ6 万3800円/ニート(にしのやTEL03-6434-0983)、メガネ2万4200円/マル(ジービーガファスTEL03-6427-6989)
ロレールの定番モデル[バスク]は、 被り口の内側にパイピングを施すこと で、より丸みを帯びたフォルムと柔和な印象を与える。トラッドなマニッシュスタイルにアクセントを加える、豊富なカラーバリエーションも嬉しいベレー1万9800円/ロレール( クオリネスト TEL03-6273-3536)、ツイードのテーラードジ ャケット19万8000円/カルーゾ フォー ブランデット、Tシャツ8800円/ブランデット × アイ トキタザキ & ジェイヒラノフォトグラフィ(ブランデット ショールームストア miyamoto@miyamotospice. com)、パンツ4 万1800円/ジョンスメドレー( リーミルズ エージェンシー TEL03-5784-1238)、メガネ3万1900円/ザ・ パークサイド・ルーム(コンティニュエTEL03- 3792-8978)、ベルト1万2100円/トリーレザー(メイデン・カンパニーTEL03-5410-9777)
100%メリノウールによる、最もシンプルでオリジンのスタイルに近いモデル[オーセンティック]。しっかりと縮絨された生地は雨風を凌ぎ、かつ通気性もいいので快適さを保つ。天然の機能性とはなんとも素晴らしいものだ。ベレー7700円/ロレール(クオリネストTEL03-6273-3536)、テーラードジャケット9万5700円、パンツ6万2700円/ともにヘリル( にしのやTEL03-6434-0983)、バンドカラーシャツ2万900円/ジーディー バイ ジェームス モルティマー(グラストンベリーショールーム TEL03-6231-0213)、メガネ3万9600 円/アーチ・オプティカル(コンティニュエTEL03-3792-8978)、スカーフ2万6400円/エピス パリ、ベルト1万4300円/トリーレザー(ともにメイデン・カンパニーTEL03-5410-9777)

Laulhère ブランドサイト

中世まで遡る、深淵なるベレーの歴史。ある田舎町の民族帽が国のアイコンになるまで。

バスクベレーの原型は中世、古代ローマ時代まで遡る。フランスのベアルン地方で羊飼いたちが雨、風、太陽から身を守る実用的な帽子として被り始める。やがて農民たちにも広まった

ベレーの起源は中世ヨーロッパの聖職者が被っていたピレッタと呼ばれる角帽だという説が有力。それがピレネー山脈の麓に住んでいた、羊飼いや農民の手にわたって暮らしに定着したとされている。それは単に雨風や日差しを防ぐ上で、高い機能性を持っていただけではなく、その色の違いで民族間や地域の識別をするような意味合いもあったという。

また、多くのベレー工場が点在したバスクの街、オロロン=サント=マリーは材料となる良質なメリノウールが豊富に手に入る点や洗浄、染色などに必要となる清らかで大きな川が近くにあることなど、ベレー作りに適した風土を持ち合わせていたこともこの地に根付いた理由として大きい。

とはいえ、いち民族衣装に過ぎなかったベレー。それを一躍、世界規模の知名度へと広げるきっかけとなったのは、ナポレオン3世の存在だ。1854年に大西洋に面する南仏の町、ビアリッツを訪れた際、農民たちが被る帽子に目を付け、「ベレーバスク」と呼び大変気に入ったという。その影響は絶大でヨーロッパ全土へと知名度を一気に広げた。

バスク地方の民族衣装に過ぎなかったベレーを世界規模の知名度へと上げたのは、かのナポレオン3世。バスクを訪れた際に農民が被っていたベレー姿に目を付け、それを「ベレーバスク」と呼んだ。それによりベレーは瞬く間にワールドワイドへ。1960年代には最盛期を迎えた

その後、第一次世界大戦時には仏山岳部隊アルパインハンターや各国軍隊が採用したミリタリー的な側面も忘れてはならない。しかし、現在ほどの市民権を得たのは紛れもなくファッション的な側面。チェ・ゲバラやヘミングウェイなど、ベレーを被った絶対的アイコンが存在することはあまりにも大きい。

第一次大戦時、フランス陸軍「アルパインハンター」と呼ばれた山岳部隊。直径がかなり大きなベレーは、前方に鋭角な折り目を付けることで銃を構えた時の照準にしたり、凍てつくような寒い夜は足を入れて暖をとったという

バスクから世界へ羽ばたくロレールの今と昔。

かつての工場の内観

毛織物商であった創業者ピエール・ロレールの手腕により、小さい工場ながらもストッキングなどのニット製品を国外にも輸出していた最初期のロレール社。ベレーを作り始めるのは創業からおよそ50 年後の1840年だった。契機となったのは2代目ルシアンが結婚し、その義父であるピエール・トルナベンからベレー作りのノウハウを学んだことにある。トルナベン社はひと足早い、1810年よりベレーを作る工場だったのだ。

以降、ロレール社はベレーを軸に地元での信頼を獲得。豊富なカラバリやデザインを提供することでファッションアイテムとしての地位も確立した。気づけばバスク地方に現存する唯一のベレーファクトリーに。2013年にはフランス政府から無形文化財企業に認可されるなど、世界で最も愛されるメイド・イン・フランスのベレーブランドとして揺るぎない。

ロレールの歩み。

1792 毛織物商ピエール・ロレールが、オロロン=サント=マリーに「メゾン・ロレール」を設立。ウールのストッキング製造を開始する。

1838 ピエール・ロレールの息子、ルシアン・ロレールが経営を引き継ぐ。

1840 ルシアンが結婚相手の生家、トルナベン家からノウハウを受け継ぎ、ベレーの製造を開始。

1890 オロロン川のほとりに新しい工房を設立。以来、改築を繰り返して、現在まで続く。

1975 ベレー専用の編み機を独自開発。先祖代々受け継がれた伝統製法をマシンメイドでも可能に。

2012 現オーナーのロザベル・フォルジーが経営を引き継ぎ、フランス国内外に「メイド・イン・フランス」のベレーを普及させる活動をはじめる。

2013 フランス政府から、伝統技術と専門知識、高度な品質を持つフランス企業に与えられる、Entreprise du Patrimoine Vivant(無形文化財企業)の認定を受ける。

バスクの伝統製法が息づく唯一のハンドメイドベレー。

パリから飛行機で1時間30分。さらに車で1時間30分かけてたどり着いたのはベレー発祥の地、オロロン=サント=マリー。伝統製法を守り、手仕事を重んじる由緒正しきバスクベレーが生まれる現場を編集部が表敬訪問した。

伝統的なバスクベレーをつくるおよそ10 の工程。そのほとんどはいまでも職人の手仕事によって行われて
いる。リズミカルなミシンの縫製や川から汲み上げた水の流れる音が実に心地よい。温もりに溢れたベレーが今日もここから生まれる

フランス南西部、ピレネー山脈の麓にある小さな町、オロロン=サント=マリー。ベレー発祥の地として知られるベアルン地方の中心都市に、ロレールは創業から変わることなく本社と工場を構えつづける。

ロレールがベレーを作り始めたのは1840年のこと。古くからスペインの良質なメリノウールが豊富に手に入り、ベレー作りに欠かせない清らかで大きな川が流れていた、この地域一帯はフランスでも有数のベレーの産地として栄えた。しかしながら、1960年代には15社ほどあったといわれるベレー工場も、現存するのはロレールのたった1社のみ。いまでも先祖代々へと受け継がれた伝統製法をできる限り守り続け、約8割の工程が職人の手によって行われている。

オロロン=サント=マリーに流れるオロロン川のほとりに工場ができたのは1890年。それ以来、何度も修復を繰り返しながら、この地でベレーを作り続けている。現在は約60名の職人たちが在籍し、国内の学校から軍、王室にまでベレーを製作。全世界へと届けられている

その卓越した技術や希少性は、2013年にフランス政府からEPVラベル(無形文化財企業)の認定を受けていることが何よりの証。フランスだけではなく、世界各国の軍や警察などの国家機関、そして名だたるメゾンブランドや大手百貨店などが、こぞってロレールのクオリティを求めている。

帽子のなかでも、ひときわシンプルなデザインと言えるベレーとはいえ、ロレールのそれらは特別と考えてほしい。なぜなら、一本の糸から、ニッティング、染色、成型、縫製、仕上げなど、すべての工程が自社工場で行われ、常に人の目が行き届いた厳しいチェック体制のなかで作られているからだ。実にひとつ完成するまでに、およそ2日間も費やすという。

無染色の上質なメリノウールは工場から程近い山岳地域で放牧された羊から刈り取られたもの。日本の企業と共同開発した専用編み機でベレーの形に編み上げられる

さらに、ロレールのベレーは素材選びにも一家言あり。メリノウールは工場から200km圏内で飼育された羊毛だけを使用し、バリエーション豊富な染色も、すぐそばを流れるオロロン川の水質を考慮したオリジナルレシピを研究するなど、「地のもの」が高品質なベレーを作るための最高のスパイスとなっている。

洗浄と染色には近くを流れるピレネー山脈の川の水が使われる。ミネラルを多く含み、鮮やかで長持ちする染色にも適しているという

ロレールの工場で働く多くの職人たちは地元出身者で、先祖代々バスクの風土に慣れ親しんだ人々。彼らは単にベレーを作っているのではなく、バスク人としてのアイデンティティや誇りをひとつのベレーに宿しているのだ。そのような背景を知ればもの選びに並々ならぬこだわりを持つ服好きにとって、より一層ロレールが魅力的に映ることだろう。

金型にはめ込み成型しながら、表面の毛羽立ちも滑らかにする工程
機械では取り切れない糸くずなどは最終的に人の手で取り除く
編まれた無染色のメリノウール生地は特殊な大型ドラムで、約8~11時間ほどかけて洗浄と染色を同時に行う。熱や水分を加えることで編み目が詰まり、雨風を防ぐ密度や強度を得る

縮絨を終えたばかりの生地(上)は表面にダマが目立ち、型もいびつだが、 スチームを当てながら成型(下)することでここまで滑らかに
最も伝統的なデザインの定番モデル[オーセンティック]の成型には平たい木製の型が用いられるなど、使われる道具からも昔ながらの製法を感じ取ることができる
裏地やパイピング、エチケットなど、すべての縫製は職人の手作業によるもの。内径の大きさも専用機械を用いて、ひとつひとつ確認しながら行う地道な作業。天然由来のものを扱うため、その匙加減は職人の腕に託されている
豪華な刺繍のエチケットが棚一面にストックされる光景は壮観。大手百貨店や有名アパレルブランドの他、パリ国立バレエ団や地元ラグビーチームなど、意外なダブルネームも
ロレールではベレー以外にハンチングも長い歴史をもつ。金型から外された姿は、まるで焼きたてのパンのようにふっくらとした美しいフォルムを描く。ひと目で、その上品さを伺い知ることができる

ロレールを代表する人気モデルを紹介!

ひと括りにベレーと言っても、実はそのスタイルは千差万別。色、素材、サイズと揃った、本物のベレーを自分らしく楽しみたい。

1.CAMPAN(カンパン)

極上メリノウールを使用した伝統的なバスクベレーとして愛されるフラッグシップモデル。被り口は本革ベルト、裏地のカラーはオーセンティックなボルドーでフィット感と被り心地の良さは別格。直径は3サイズから、内周も1㎝刻みでサイズ展開があるため、好みのベレーを選ぶことができる。1万5400円

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2.AUTHENTIQUE(オーセンティック)

被り口にレザーベルトがない、その名の通りシンプルでオーセンティックなモデル。優れた通気性の快適性と100% UVカットというメリノウール特有の天然の機能性を十分に味わえる、季節を問わないオールタイムベスト。10色以上の豊富なカラバリも魅力。7700円

AUTHENTICのラインナップをみる

3.BASQUE(バスク)

その名も「バスク」と名付けられたカラバリ豊富な定番型。被り口に施されたパイピングによって型崩れがしにくく、色糸のステッチが程よいアクセントに。裏地には光沢のあるサテンが縫い付けられ、ワンポイントのオリジナルリベットが確かな品質を約束する。1万9800円

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4.CASHMERE(カシミヤ)

メリノウールにカシミアを混紡した極上のファブリックで柔らかなフォルムを演出。ライニングにはミッドナイトブルーの光沢のあるサテンを使用することで、シンプルなデザインながら随一の上品さを持つモデルとなった。1万3200円

CASHMEREのラインナップをみる

5.ERIDAN(エリダン)

かつて同じ黒色のベレーを着用していた羊飼いたちが、それぞれの家族や仲間を判別するため異なるパッチを付けた逸話から、ロレールの持つ様々なヴィンテージパッチを大胆にも表地に縫い付けたスペシャル。2万5300円

ERIDANのラインナップをみる

6.BULLE(ブル)

1940 年代の仏軍山岳部隊が着用していたアルパンベレーを出自とする直径30㎝のビッグシルエット。キャップのように前で折り曲げてツバを作るなど、アレンジ自在のため洒落者こそ手にしたい個性派。1万9800円

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【問い合わせ】
クオリネスト
TEL03-6273-3536
https://ec.benexy.com/
Instagram : @quorinest

(出典/「2nd 2022年12月号 Vol.189」)

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