
さらに、10月8日には『CEATEC AWARD 2026 モビリティイノベーション賞』の受賞も発表された。筆者が以前から追いかけている、このユニークな会社の新たな挑戦をご紹介しよう。
もともとは海の自動運転を目指していた
まず、エバーブルーテクノロジーズという会社の話を簡単にしておこう。
同社の代表取締役である野間恒毅さんは、筆者が以前から親しくしている友人で、その挑戦をずっと追いかけている。筆者が知る限り、野間さんが最初に目指していたのは、海の自動運転だった。
風の力で進む帆船型のドローンを作り、人間が操縦しなくても、できるだけエネルギーを消費せずに物資を運べるようにする。究極的には、石油のような大量の物資さえ、輸送のための燃料をほとんど使わず世界中を流通させられるのではないか、という壮大な構想だった。たしかに、急ぎで運ばなければならない物資はそうはいかないが、「いずれ着けばいい」という荷物であれば、理論上自動運転の搬送で輸送できるはず。そして、そういう荷物は少なくないはずだ。それが実現すれば、温室効果ガスを大幅に削減することができる。

もちろん、そんな大規模な海上輸送システムが、すぐに事業化できるわけではない。
そこで野間さんは、何度か事業を展開を模索してきた。その結果として現在、主力商品として取り組んでいるのが『除雪ドローン』なのである。ずいぶん違う分野に広がったように思えるが、人間が操縦しなくても機械が自動で動き、仕事をしてくれるという点では、目指しているものは一貫している。
1m積もった雪を除雪する必要はない
この除雪ドローン。従来モデルは1台100万円程度の価格帯で、比較的小型の機械だ。

このドローンを雪国の人に見せると「都会の人の発想。雪国の雪は、そんな小さなドローンでは動かせない」と言われがちだ。しかし、そもそも発想が違う。2m積もった雪を除雪しようというわけではないのだ。

たとえば、ショッピングモールの駐車場を考えていただきたい。
夜中に雪が降り始めたら、5cm積もったところで除雪する。また5cm積もったら除雪する。これを一晩中繰り返していれば、翌朝には大量の雪が積もっているという事態を防げる。つまり、『積もった雪を除雪する』のではなく、『雪が積もらないように除雪し続ける』という発想なのである。
これまでの除雪ドローンも、プロポ(ラジコン用の送信機)を使って遠隔操作できた。暖かい室内などから操縦できるので、寒い屋外で除雪作業をする必要がない。ただし、従来モデルでは人間がずっと操作しなければならなかった。一晩中、雪が積もらないように除雪し続けるには、やはり自動運転が欲しかった。
RTK-GNSSを使って、設定したルートを自動走行
今回発表された2027年モデル『SRD-F11A』では、ついに自動走行が可能になった。
採用されたのは『RTK-GNSS』という高精度な測位技術だ。GNSSはGPSなどの衛星測位システムの総称で、RTKは補正情報を利用して測位精度を高める仕組み。新型では、デュアルアンテナを備えた自動化ユニット『ebNavigator』が走行制御を担当する。作業エリアや走行ルートの設定、現在位置や車体状態の確認には、専用Androidアプリ『ebConnect』を利用する。

従来のプロポによる操作も残されており、自動走行と手動操作を切り替えることができる。
今回の自動走行は、周囲の状況をカメラなどで認識し、その場で判断して自由に走り回るというタイプの自律走行ではない。あらかじめ設定したルートをRTK-GNSSで正確にたどり、人間が目視で安全を確認する『監督型』の自動走行だ。

というのも、吹雪や強い日光の反射など、除雪現場はカメラやセンサーにとってかなり厳しい環境だ。画像認識ですべてを判断させるより、位置情報を使って決められたルートを走らせ、人間が安全を監督する方が現実的だ。完全無人で放置できるというわけではないが、従来のように人間が常時操縦し続ける必要はなくなる。
発売は2027年1月頃を予定。認定代理店による販売のほか、レンタルでも提供される。従来の遠隔操縦モデルも引き続き販売される。
CEATEC AWARD 2026のモビリティイノベーション賞を受賞
そして、もうひとつうれしいニュースが入ってきた。この除雪ドローンが『CEATEC AWARD 2026 モビリティイノベーション賞』を受賞したのだ。
雪国では、除雪作業を担う人の高齢化や人手不足が深刻な課題になっている。そうした危険で負担の大きい作業を、小型の自動走行モビリティに置き換えるという発想が評価されたのだ。さらに、除雪だけでなく、草刈りや運搬、警備・監視といった、さまざまな屋外作業に応用できる汎用プラットフォームとしての可能性も認められたという。考えてみれば、同じ場所を何度も走り回って作業するという仕事は、除雪以外にもたくさんある。

将来的には複数台を同時に運用したり、さらに自律化を進めたりすることも期待されている。
今回の受賞機体は、10月13〜16日に幕張メッセで開催される『Japan Mobility Show Bizweek 2026』(CEATEC 2026併催)で展示される。ブースはホール3のS-51だ。
海から雪へ。そして、その先へ
筆者としては、野間さんが最初に目指していた『自動運転』が、こうして現実的な製品になってきたことが非常に感慨深い。
もちろん、今回のモデルも、完全に人間の監督が不要になったわけではない。実際の雪国で、長時間にわたってどれだけ安定して稼働できるのか、障害物や予想外の積雪にどう対応するのかといった点は、今後の運用実績を見ていく必要がある。
それでも、小さな機械が繰り返し働くことで、大きな仕事をこなすという発想は面白い。海の上でエネルギーを使わずに物資を運ぼうとしていた野間さんが、雪国の人手不足を解決する技術を作り上げる。今回の自動走行対応とCEATEC AWARDの受賞は、その挑戦がひとつの大きな節目を迎えたようで喜ばしい。
今後、除雪ドローンが実際の現場でどのように活躍するのか、引き続き注目していきたい。
(村上タクタ)
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