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芸能人格付けチェックと製品レビューの関係から考える

普段はあまりテレビを見ないのだが、お正月、妻の実家に帰省していると義父が見ている『芸能人格付けチェック』という番組だけはつい観てしまう。なぜ、この番組が気になるのかと不思議に思っていたのだが、これって自分のやってるレビュアーという仕事にとても似ているのだ。

芸能人格付けチェック!2026お正月スペシャル
https://tver.jp/series/sr0vpmmpim
(1月15日いっぱいまで、TVerで視聴可能)

人の感性というのは、正確なものなのか?

この『芸能人格付けチェック』は、多くの有名芸能人の方が登壇して、ワイン、音楽、料理……などの『本物の高級品』と『一般品』をブラインドテストするという番組。

誰もが知ってるような有名芸能人の方々が、5000円のワインを100万円のワインだと言い切ったり、ミュージシャンの方が番組内で総額102億4000万円と紹介された楽器による弦楽八重奏と、1000万円の楽器のそれを区別できなかったりするのを、司会の浜田雅功さんが大胆に弄るのが面白みなのだと思う。「日々高級なものに触れているであろう芸能人なのに、そんなことも分からないのか!」というカタルシスである。

しかしながら、GACKTさんがなんと過去全問正解を続けているということから、『優れた感性を持っていれば見分けられるはず』という物語を成立させている。

実際GACKTさんは、過去にも米2粒だけで、ミシュランシェフと、街の中華料理店のシェフと、料理シロウトの浜田さんの作ったチャーハンを見分けるという離れ技を見せている(普段米を食べていないから、ここでも可能な限り食べたくないとのこと)。語られる見分けた理由も筋が通っていて毎回感心させられている。

製品レビュアーでもある筆者が、この番組に惹かれるわけ

お正月に帰省してのんびりしている時に、なぜかこの番組が気になるのはなぜだろう……と思って考えてみたら、実はこの番組で扱われる『モノを評価するという感覚』が、筆者の製品レビューという仕事においても重要で、日々「違いを感じ取れるのか?」ということを考え、思い悩んでいるからだと思う。

たとえば、イヤフォン。「高音の抜けがよく、低音もしっかりしていて、さすが○○だ」なんていう記事を日々書くわけだが、それは本当に正しいのか? と常々自問自答している。

人の感性というのはすごいもので、たとえば筆者のメディア歴の原点である『オートバイの試乗』であれば、100万円のサスペンションと、5000円のサスペンションの違いは明白に感じる。5000円のサスペンションは、路面の凹凸を正確に伝えないし、揺れた時にそれが「ボヨンボヨン」と揺れ続ける反応として残ってしまう。加減速でも路面にタイヤが追従しない。対して、100万円のサスペンションは路面の凹凸をライダーに正確に伝えつつ、それをスッと抑えて収束させる。路面に出っ張りがあったことは伝えるが、それを車体の動きに残さないのだ。

同様に、コーナリング時にスイングアームが横方向に曲がっているのか、捩れているのか(これは良くない)、タイヤのグリップ感、衝撃の吸収、リーンした時の倒れ込みのスピードなどは、多くのバイクに乗って、それを言語化していくことで、感じ、分析できるようになる。

以前、バイクのタイヤを十数本、取っ換え引っ換えしつつ、それぞれに何十行もの記事を書いたのだが、こうなってくるとブラインドテストに近い。「黒くて丸い」タイヤ、それぞれがいかに違うか、感じ、書き分けるのは修業のようだった。

ベテランのラジコン飛行機フライヤーは上昇気流が「見える」と言うし、サンゴを飼っていると水を見ただけでだいたいの水質(アンモニア、亜硝酸、硝酸塩の濃度など)が分かるようになる。これは多くの取材をしてきて、学んだことだ。人間の感性は素晴らしいのだ。

正しく感じ取るのを、阻害する要素とは?

正しく判断しようとしている時に、それを阻害する要素もある。

たとえば、先ほどのバイクの話で言えば、自分自身が前日に転倒していたり、雨で路面が濡れていたりすると不安感が生じて評価がネガティブになることがある。もちろん、それを差し引いて評価しようとはしているのだが、晴れて、路面温度の高い良いコンディションの日に、安心して走れるサーキットで思う存分走って「これは素晴らしい!」と感じてしまった場合と、不安なコンディションの日に同じ評価軸で評価できているかというと、それは難しい。

『芸能人格付けチェック』のワインの話でいうと、5000円の『香りの強い華やかなワイン』と、100万円の『デリケートで、インパクトは強くない玄人好みのワイン』を並べられてしまったりすると、『香りの強い華やかなワイン』の方を、上質に感じてしまうかもしれない。そういう引っかけ問題のような場合もあるだろう。

また、料理で言えば、ファミレスやコンビニの塩味・甘味・うま味を強めた分かりやすい味設計で『“美味しい”というインパクト』を演出されている料理は、評価のプロでないと、やっぱり『美味しい』と感じてしまうかもしれない。

番組で料理の評価の時には目隠しして、アシスタントの方が口に運ぶようにしているが、見た目も、口に入れる前の評価もなく判断するのはとても難しいと思う。

実際に自分でも、目をつむって料理を口に運んでみたが、歯触り、舌触りの感覚というのは案外あいまいで、どんな肉で、どんな味がしそうか……というのは視覚的要素も含めて判断しているというのがよく分かった。

今回も、しゃぶしゃぶの肉を評価する課題があったのだが、GACKTさんだけは口の中タレをちゅうちゅう吸って除外して、肉自体の味を評価されていたのが印象的だった。つまりは「何が違いか?」を理解して、それを感じ取ろうとする必要があるわけだ。

視覚情報などを除外された上に、風邪を引いていたりしたら、味なんて全然分からないだろう。飲食店の食器や、インテリア、照明、接客なども大切な要素で、料理は総合芸術だと言われるのはそういう意味もあるのかもしれない。

製品背景も大切だが、人だからこそ感じることを伝えたい

もちろん、筆者が取り組んでいる製品レビューはブラインドテストをしているわけではない。

製品のバックボーンを知り、メーカーの解説を聞き、多くの背景情報を知ってから、その製品をどう評価すべきか判断して、読者の方にお伝えする仕事だと思っている。

その情報のバックボーンの上に、製品から得たインプレションを加えてお伝えする。しかし、一方では、バックボーンに左右されずに製品の評価をすべきでもある。

単に正確に感じ取ればいいというだけでもない。我々が評価しようとしている商品を、苦労して開発、設計した人がいて、工場でそれを日々働いて作っている人がいる。また、その製品に期待して待っているファンの方もいる。単に「この製品は○○点ですね」と冷徹に評価するだけではなく、それらの人たちの『愛』を忘れることなく評価しなければいけないと思う。

GACKTさんのように正確無比な感性を持っているとはとても言えないが、それでもキーボードの打鍵感、イヤフォンの音質、グラス型デバイスを装着した時に見えるもの、製品の総合的な使い心地、そうした実際にデバイスを使用しないと得られない感覚性能について、極力正確に、できる限り言語化してお伝えしたいと日々考えている。

(村上タクタ)

 

この記事を書いた人
村上タクタ
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村上タクタ

おせっかいデジタル案内人

「ThunderVolt」編集長。IT系メディア編集歴12年。USのiPhone発表会に呼ばれる数少ない日本人プレスのひとり。趣味の雑誌ひと筋で編集し続けて30年。バイク、ラジコン飛行機、海水魚とサンゴの飼育、園芸など、作った雑誌は600冊以上。
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