アメリカンヘリテージを欧州でいち早く紹介
WP(ウーピー)という会社をご存知だろうか。1982年にイタリア・ボローニャで創業したディストリビューターであり、創業者がアメリカ旅行をきっかけに、当時イタリアでは知られていなかったブランドを発掘・輸入したことから始まった会社だ。〈ビームス プラス〉を初めて海外で取り扱った会社としても知られている。“ドレスの国”イタリアでは、WPが取り扱った〈バブアー〉、〈ウールリッチ〉などのヘリテージブランドが作るヘビーデューティなプロダクトは目新しく、その背景にある文化や物語を合わせて紹介したWPの功績は計り知れない。近年のイタリアでは、アメリカンヘリテージがキーワードとなっているが、その理由のひとつにWPの存在があるだろう。そんなヨーロッパのヘビーデューティ史に影響を与えた同社を知っておいて損はないはずだ。

約10万着のアーカイブがWPのDNAだ!


WPが保有するアーカイブの数はなんと約10万着。世界各国に散らばる5名のバイヤーが常にアンテナを張り、収集を続けている。アーカイブルームは大きく3つに分かれており、①〈ウールリッチ〉、〈フィルソン〉、〈バブアー〉、〈バラクータ〉、〈ブランドストーン〉などのヘビーデューティなヘリテージブランドのヴィンテージ、②WPのオリジナルブランドのアーカイブ、③「ファッションの建築家」と称されるイタリアを代表するデザイナーが手がける〈ジャンフランコ・フェレ〉のアーカイブが並んでいる。今回着目したのは英米ヘリテージブランドを中心とするヴィンテージピース。アウトドア由来のヘビーデューティなプロダクトがこれでもかというほどの数保管されていた。

アメリカンヘリテージがイタリアのトレンドに!



バラクータ

WPが2012年に買収した〈バラクータ〉のアイコンであるハリントンジャケットのアーカイブも多数所有。豊富なカラーバリエーションのほか、メッシュ素材などの変わり種も。
ウールリッチ

〈ウールリッチ〉はWPがイタリアをはじめヨーロッパにその名を広めたと言っても過言ではない。バッファローチェックやボーダーなど多彩なウールジャケットが揃っていた。
フィルソン


創業当初から取り扱い、現在もパートナーシップを結ぶ〈フィルソン〉。[マッキノークルーザー]などの名作だけでなくキルティングパーカやサファリシャツなども保有する。
マクレガー

1921年にアメリカ・ニューヨークで創業した〈マクレガー〉。ドリズラーと並んでブランドを代表するジャケット[ナイロン・アンチフリーズ]。
チャンピオン

〈チャンピオン〉のダウンジャケット。ダウンがメインアイテムでないブランドでもデザインの着想源となるものはピックアップしているのだとか。
バブアー

1960年代に登場した〈バブアー〉のフード付きのワックスジャケット[ダーハム]。内側には「創業者の私物」というメモ書きが付いていた。
パタゴニア

〈パタゴニア〉の[シンチラ・マースピアル]のアメリカ製。保温性に優れるフリース素材、ハーフジップ、丸襟のデザインなどが特徴のモデルだ。
ザ・ノース・フェイス

ボリュームのあるボディと、ビビッドなイエローが目を引く〈ザ・ノース・フェイス〉のダウンジャケット。茶タグが付く1970年代製の個体。
WPはカタログも多数保有している!
希少なヴィンテージウエアのアーカイブに加え、WPはカタログアーカイブも多数保有している。ミリタリー、ワーク、アウトドア、デザイン、建築、グラフィックなどそのジャンルは様々だ。〈ウールリッチ〉や〈フィルソン〉などのアメリカンヘリテージブランドの旧いカタログも多数所有しているほか、WPが製作したカタログも必見。その一部をここに紹介する。

WP Catalog
WPが製作したカタログを見れば、どのようなブランドのデュストリビューションを担っていたのか、どのようなプロダクトをショップで扱っていたのかが一目瞭然だ。〈バブアー〉や〈パラブーツ〉といった本誌でもお馴染みかつ、ヘビーデューティなブランドが多数紹介されているほか、WP STOREの様子や各国のファッション業界人のインタビューなども掲載されている。








〈バブアー〉や〈パラブーツ〉などお馴染みのブランドも!
Woolrich Anniversary Book

イタリアでの販売代理店から始まり、ライセンス取得、そして親会社を買収するなど、WPと最も関係性の深いブランドのひとつである〈ウールリッチ〉のカタログも多数保有。こちらはブランド175周年の節目に製作されたアニバーサリーブックで、[アークティックパーカ]や[レザートリムベスト]などの名作や当時の広告などがまとまった永久保存版。



WPが掲げる企業理念はオリジナルを裏切らず、伝統を継承すること
世界各国のブランドのデュストリービューターとしてだけでなく、オリジナルアイテムの企画、ブランドオーナー、不動産など、様々な事業を手がけるWPの創業者ファミリーの一員であり、現在はWP STOREと〈バラクータ〉のクリエイティブディレクターを務めるガイアさん。現在のWPを牽引する存在である彼女に企業理念や今後の展望について聞いてみた。
「1982年の創業時は〈バブアー〉、〈ブランドストーン〉をイタリアとスイスへ、〈フィルソン〉をヨーロッパ全域へと流通させるディストリービューターとしての事業がメインでした。その後、多角経営へと進化を遂げていきますが、“オリジナルのDNAを裏切らないこと”、“伝統を継承し、伝えること”という理念が根底にあります。約10万着のアーカイブは、オリジナルアイテムや別注企画を担うデザイナーを刺激するためのものでもあり、商品開発の起点となります。WPは創業当初から世界各国のヴィンテージを収集していますが、世界的に見てもこのような活動を始めた時期が早く、だからこそ歴史あるブランドの指揮を任されているのだといえます。アメリカを中心に、歴史と確かな個性を持つブランドが作る、ワークやミリタリー、アウトドアといったユニフォームとしての役割を持つプロダクトをイタリアで紹介すること。様々な事業を手がける現在も、その企業理念は変わりません。今後は、ヴィンテージは存在するものの現在はブランドとして動いていない“冬眠中”のブランドを呼び起こす活動にもフォーカスしていきたいと思っています」。
アメリカを中心とするヘリテージブランドをイタリアに紹介する。このWPの“核”は、世界各国の伝統的なスタイルを独自に解釈して組み合わせるという我々が考えるトラッドスタイルとも共通する点があるのではないだろうか。

ボローニャのWP STOREへ

「WP STORE」は、フィレンツェとボローニャの2都市に店舗を構える。今回足を運んだボローニャ店は1980年代半ばにオープンし、〈バブアー〉、〈ウールリッチ〉、〈バラクータ〉など、当時のイタリアでは珍しかったブランドをセレクトし、人気を博した。その人気はいまも健在で、編集部が訪れたのは平日の昼間であったものの多くの来店者がショッピングを楽しんでいた。このショップで3年間勤務するジャンルカさんによれば、「お客様は着こなしに個性を出すために、WP STOREに来ています。伝統的なイタリアのドレッシーな着こなしに、英国やアメリカのヘリテージスタイルをミックスするのです」とのこと。トラディショナルなスタイルにタフで機能的なウエアをミックスするという感覚は、まさにヘビーデューティそのものである。

古くから英米を中心にヘリテージブランドをピックアップし、イタリアに広めてきたWP。ショップには〈フィルソン〉のバッグや〈バブアー〉のワックスドジャケットなど、アウトドア由来の機能性を持ち、デザイン性にも優れるプロダクトが盛りだくさん。店頭では古着も取り扱っている。



WP STORE BOLOGNA
Via Clavature, 4 – 40124 Bologna, Italy
TEL. +39 051 262114
www.wpstore.com
Photo/Kazuya Iwata 岩田和也 Text/Kihiro Minami 南樹広 WP https://wpstore.com/
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