ビームスプラスのキーマンたちが語るトラッドに傾倒したきっかけとは?
「永年着られる飽きのこない本物の男服」をコンセプトに、1999年に設立されたビームス プラス。根幹となるのは21世紀の現在にも引き継がれる男服のエッセンスである「(アイビーやプレッピーなどの)アメリカントラディショナル」「ワーク」「ミリタリー」「スポーツ(アウトドア)」といった4つの要素。それらを軸にモダンセンスや機能を掛け合わせたアイテムを多種多様に取り揃えるレーベルがビームス プラスである。トラッドという言葉には「普遍・不変」の印象が少なからず付随する。しかしビームス プラスは頑固ではあってもただの懐古主義者ではない。トラッドの新しい楽しみ方を常に模索し広める伝道者なのである。その力強い開拓動力を担っているのは、MD及びバイヤーを名乗る強力なエンジンたち。彼らに、推進力となるトラッドの原点を聞いてみた。
「雑誌をきっかけにアイビーにハマりました」(崎野)
崎野 高校生の時から古着が好きで、雑誌に掲載されているアイビースタイルに影響を受けました。特に入社した後、先輩である丹羽 望さんから直々に聞いた“テイクアイビー”の話題や、丹羽さん自身のスタイルは僕のアイコンとなっています。大きく変化しないトラッドアイテムは、時間を掛けてじっくりと楽しむことができます。なかでも個人的にはネイビーブレザーやツイードジャケットなどにトラッドを感じますね。それらにデニムジャケットやレジメンタイを合わせたり。チノもストレートではなくバルーン型をチョイスするなど、その時々のトラッドを自分らしい視点で模索しています。
「自分のスタイルを貫く姿勢にも感化されました」(柳井)
柳井 僕の場合も先輩が実践するスタイルからトラッドへの興味が深まりました。当時、先輩スタッフはブレザーにBDシャツ、ボウタイ、オールデンといった装いで毎日ショップに立っており、その姿が非常に印象的でした。当時でもかなり濃い着こなしでしたが、貫き通す姿勢も合わせて勉強になりました。プライベートでも仲良くさせていただき、一緒にスポーツコート(アメリカンスタイルのテーラードジャケット)を有楽町のショップで継続的にオーダーしたのは良い思い出。そこから自分なりのトラッドを追求するようになりました。
「ビームス プラスへの異動がきっかけでした」(佐久間)
佐久間 自分の場合は他県のビームス店舗から原宿のビームス プラスに異動して、どっぷりトラッドにハマった経緯があります。僕も崎野さんと同じように、先輩である丹羽さんの着こなしに強い影響を受けました。丹羽さんのようにブレザーにミリタリーパンツをタイドアップで着こなしたりしていました。確かに最初は単なる真似であったり背伸びしただけの印象。しかしトラッドスタイルというものは、歳を経るごとに板に付いていくところが面白い部分。時間を掛けて試行錯誤を重ね、服と一緒に成長していく過程も楽しみのひとつです。
「モードと古着のミックススタイルが原点です」(金子)
金子 個人としては、ラフ・シモンズ、マルタン・マルジェラなど、欧州デザイナーズが旺盛なタイミング。文化服装学院に通いながら、スタイリストのアシスタントも行うなかで、モードと古着をミックスするスタイルに強く傾倒しました。その後、ビームス 原宿でアルバイトを始めるのですが、隣のビームス プラスではみんながアメリカの衣料を身に纏っていて。彼らを見ていて、自分好みのアイテムはアメカジにあることに改めて気づき、古着からのアメカジ探求を継続。当時はコバさん(小林隆)がビームス プラスの店長として勤めており、ディープなアメカジの話をよく聞かせてくれました。その出会いもあって、トラッドへの興味と理解が深まったように感じます。
「渋カジの着こなしも楽しんでいましたね」(長谷部)
長谷部 僕が洋服に興味を持ちだした時期は、まさにファッション誌が全盛だったころ。『ポパイ』や『メンズクラブ』を情報源として活用していました。1990年代の半ばは“渋カジ”が一世を風靡した時代で、自分もネルシャツにブーツカットといった着こなしを良く楽しんでいましたね。ビームスに入社してからは幅広くカジュアルスタイルを好むようになりましたが、当時はビームス プラスの立ち上げ以前。ただ、バラクータやインバーアラン、アイク ベーハーなどは、ビームスFで展開されていたので、そういったベーシックなアイテムを買ったりしていましたね。自分のトラッド好きは、先に挙げたような長く着られる男服への興味から始まりました。
「僕にとってトラッドは南西部のカルチャー」(小林)
小林 日本では“アメリカントラッド”というと、ほぼ同義でアメリカ北東部のカルチャーを指すと思うんですが、僕にとってのトラッドは南西部。もともとネイティブアメリカンが手掛けるジュエリーが好きで、自分はそういったアイテムを知るには現地・現場の理解がベースになると考えます。そういう意味で僕のトラッドはファッションと近いけど、交わらない軸がある。ビームス プラスでもインディアンジュエリーを展開していましたが、当初は売れ行きもいまひとつ。大手ブランドではアメトラスタイルにコンチョベルトを合わせる手法で人気を博しましたが、僕はより現地の歴史やカルチャーに結び付いたジュエリーの使い方を志向していました。つまりアイテム目線からの土着的なトラッドが、自分流ではないかと思っています。
ともするとトラッドという言葉には懐古的なエモーションがつきまとう。しかし服飾の研ぎ澄まされたエッセンスと長い歴史が込められた芯のあるトラッドは、たとえ時代に合わせたアレンジを加えたとしても本質は簡単に変わらない。トラッドをベースとしながらも常に自由に、新しいことに挑戦し続けるビームス プラスは、その象徴とも言える。まさに温故知新。本質を見抜きバランスよく進化させるからビームス プラスは世界が認める“新たなトラッド”になりえているのだ。
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Photo/Tetsuya Maehara Text/Tsuyoshi Hasegawa