
HHKB Professional Elite抽選申し込みサイト
https://www.pfu.ricoh.com/registration/hhkb/elite/fm-entry-1-c.html
ひんやりと冷たい、アルミの塊からの削り出しモデル
『社外の人で、これを目にする人はタクタさんが最初です』
と言われて、PFUの会議室で目にしたのはアルミの塊から削り出されたボディを持つHHKBだった(たまたま、内覧会の順番が一番目だったというだけだが(笑))

通常のHHKB Professionalよりひとまわりタイトなボディ。キー配列は一般のHHKB Professionalとまったく同じ。プラスチック成型品のように型抜きを考えなくていいから、端面は垂直。四角の角Rはアップル製品を思わせるシンプルな曲率の大きめのRでまとめられている。デザインはクリエイティブユニットのTENTが手がけるのだという。

「手に取っていいですか?」
持ってみると、ものすごく重い。重量は970g(ケーブル含まず)。一般のHHKB Professional HYBRID Type-Sが540g(電池含まず)だから、おおよそ2倍だ。
日本で販売されるのはわずか250台。申し込めるのは1週間だけ
「何台売るんですか?」
『300台です。どっちにしても中国の方からも希望があるので、50台は最初から中国で売ります。つまり日本では250台』

「そんなの瞬殺じゃないですか?」
『2026年の10月22日から28日まで抽選申込を受付けます。この間は、早く申し込んでも遅くても抽選なので、当たる当たらないは変わりません。つまり慌てなくても、その間に申し込んでいただければ抽選には参加できます。当選者発表は11月5日以降を予定しています。当選した方の購入期間は12月1日から6日です。お届けは2027年の3月頃から順次発送を予定しています』
「で、お値段は?」
『30万円+税です』
「え、額面としては高いけど、この製品の価格としては安くないですか?」
PFUは20年前、HHKB 10周年記念モデルとして、アルミ削り出しのボディを持つHHKB Professional HGという製品を25万円で販売している。20年の歳月が流れ、諸般の物価は上がっているのに、わずか5万円の値上げとはバーゲンセールだ。

※ただし、今回の生産・販売は300台だが、人気を博して完売となった場合は、将来的に同じ設計のモデルを生産・販売する可能性はあるとのこと。その場合は、このモデルとはまた違った色など、なんらかの異なる仕様にしたいという。
強固なアルミ削り出しボディがもたらす、クリアな打鍵感
「打ってみていいですか?」
カタカタ、ターン! ……数文字打って驚いた。これはすごい。シャシーの剛性感が違うと、ここまで打鍵感が違うのかと驚いた。普段のHHKBで十分に満足していたのだが、本体のブレやたわみがないと、こんなにもキーがまっすぐスムーズに入るのか、底突きした時のたわみ感もない。体験しなければ、知らなくて済んだ世界がそこにあった。

車やオートバイのシャシー剛性が上がると、エンジンは余計な振動なくスムーズに回り、サスペンションは設計された方向にだけスムーズに動く。ロールバーやタワーバーはそのために入れるのだ。同じように、アルミ削り出しのボディに固定されたスチールシャシーにマウントされた静電容量無接点方式のスイッチが、スムーズに確実に仕事をする。
「買います」
思わず言ってしまった。
『メディアや、エバンジェリストの方も、抽選に参加していただきますよ?』
もちろんだ。しかし、ここで体験できたのはラッキーだった。実際に体験していなければ、33万円という値段にビビって購入を決断できなかったかもしれない。しかし、実際に数文字打っただけで、「これは買わなければ後悔する製品だ!」と直感した。
英語配列、有線接続のみ
本体はアルミ削り出しボディで、この金属色のアルマイト一色だ。キースイッチはHHKB Professional HYBRID Type-Sのものと同じだが、前述のように感触はまったく違う。

キートップは、墨か、白か、雪の刻印か、無刻印を選べる。発注してからオーダーに応じて組み上げられるというわけだ。配列は英語配列のみ。残念ながら数を作るわけではないのと、英語配列こそがアレフキーボードから続く伝統の配列直系だというのと、こういうマニアックなキーボードを買うのは英語配列を使う人が多いというのが理由だ。

Bluetoothも電池ボックスも持っておらず、USB-Cの有線接続のみ。裏面にはネジ留めのフタが用意されており、その中にディップスイッチと法文やディップスイッチの説明のシールが貼られる。フタを閉めるとそれらはほとんど見えなくなる。

HHKB Professional Eliteの文字の下には○○○/300とシリアル番号が入る。番号はもちろん選べないそうだが、自分が手に入れられるとすれば、何番の製品が買えるのだろうか? と夢が広がる。
脚は通常のもののように折りたたみ式ではなく、ネジ留めの差し換え式。長い方の脚は入れる向きによって、入り込む高さが違うように設計されている。

Bluetooth接続や、電池ボックス、日本語配列などを廃したことからも分かるようにHHKB Professional EliteのコンセプトはHHKBのルーツに帰って、「できる限りシンプルに」だ。上面にもEliteなどの文字が入っていないのも、その気持ちの表れだ。
どうしてもこのキーボードを買わねばならない理由
20年前の25万円は相当高かったと思う。しかし、現時点で考えると、iPhone Duoよりも安いし、Vision Proの半分ぐらいの値段だ。それで、こんな一生使えるキーボードが手に入るのなら安いものだ。
筆者はきっと、残りの人生、このキーボードを使って原稿を書くだろう。20年間書くとすれば240カ月。33万円を240カ月で割れば、1カ月たったの1375円だ。安い! 四六時中原稿を書いてるプロの道具がそんなに安いなんて、申し訳ないぐらいだ。万年筆だってもっと高い。原稿を書いたリ、プログラミングしたりして口に糊しているなら、このキーボードは高い買い物ではないはずだ。

もうひとつ、筆者がこのキーボードをどうしても欲しい理由がある。
HHKBは、東京大学名誉教授の和田英一さんが当初のコンセプトを立てたと言われており、和田先生が『教祖』であることに間違いはない。しかし、このHHKBという商品を支え、売上が苦しい時も、会社の流れで「必要なのか?」を問われた時にも戦い続け、サラリーマン人生を賭けてこのHHKBとScanSnapを育ててきた人がいる。それがPFUの松本秀樹さんだ。あまりドキュメントには出てこられないので、読者の方にはご存じない方もいらっしゃるかもしれないが、間違いなくHHKBとScanSnapを作ってきた大黒柱であり、中心人物だ。
その松本さんが、来年の1月で定年で退職される。正確にいうと5年前に定年を迎えてはおられるのだが、その後も継続雇用で今までHHKBに携わっていらっしゃった。しかし、それもいよいよ1月までなのだそうだ。いわば、このHHKB Professional Eliteは、HHKBの30周年モデルでもあるが、ファンとしては松本さんの仕事の集大成でもあるのだ。これを買わなければ男がすたるというものである。
筆者は、購入したHHKB Professional Eliteの裏面に松本さんのサインを入れてもらおうと思っている。それを使って、終生原稿を書くのだ。そう考えれば33万円なんて、高かろうはずがない。
筆者は買う。これを読んでいるあなたも、もちろん購入するのだと、信じている。

(村上タクタ)
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