新しさと懐かしさが共存する令和J-POP HiiT FACTORYに会う【アイテイマス 第3回】

『昭和50年男』が休刊して、時間が空いて(アイテ)しまった同誌編集長・金丸が、気になる相手(アイテ)に会うという連載企画、それが「アイテイマス」。第3回のお相手は、90年代サウンドを令和に響かせる、3人組ガールズユニットのHiiT FACTORY。昭和50年生まれなら一聴して青春期の思い出がよみがえる、バカボンのパパ風に言えば “忘れようとしても思い出せない”という不思議な感覚がわき起こる楽曲を歌う彼女たちの素性に迫ってみたい。

HiiT FACTORY(ヒットファクトリー)  左からYuzuka(DJ&キーボード)、Airu(ボーカル)、Reyuna(ラッブ&ダンス)の3人からなるダンス&ボーカルユニット。90年代カルチャーを現代にアップデートした楽曲を発表している。最新情報は公式HPをチェック。https://www.hiitfactory.global

現在の音楽シーンに足りないのは90年代サウンド!

──HiiT FACTORYはどのようにして誕生したのでしょうか。

Yuzuka まず、私たちの事務所が企画として、「90年代サウンドをやるグループを作りたい」と考えていたそうです。というのも、彼らが最近の音楽シーンに「シティポップや80年代の楽曲のようにイージーリスニング的な爽やか」で「イントロもアウトロも短い楽曲が多い」という印象をもち、そこに足りないサウンドは何かと考えた時に「90年代のサウンドなんじゃないか」という結論にたどりついたそうです。

そうして開催されたオーディションに私は参加したんです。実技試験の後、会議室に集められて、TRFさんみたいなシルエット画像を見せられながらスタッフから「私たちは、ボーカル、ラッパー、ダンサー、そしてシンセサイザーの4つに当てはまる人材を探しています。この趣旨に賛同できる人はぜひ面談で教えてください」というプレゼンテーションを受けました。私はダンサーの枠で合格したんですけど、Reyunaは書類で落ちていたんだけど、後で聞いた話だとReyunaの落選は完全にミスだったんです。その後、「90年代サウンドをやるグループ」のオーディンションであることをわかったうえでReyunaが再び受けて合格し、そこからラップとダンスを担当するようになりました。

最初は4人組で活動をしていたのですけど紆余曲折あってグループの体制が変わる時に新しいボーカルが必要になって、そこでAiruがオーディションを受けて入ってきました。そのオーディションの告知には「90年代サウンド」という表記はなかったんだよね?

Airu tiktokで白い背景に黒い文字だけの広告が流れてきて。その事務所を調べたら2つのグループがあって、きっとHiiT FACTORYのオーディションだろうとわかったうえで受けました。

Yuzuka オーディションで歌った曲はなんだっけ?

Airu 「恋しさとせつなさと心強さと」が課題曲で送られてきて歌わせていただいて。HiiT FACTORYのつもりで事前にその時代の曲を何曲か聴いていたんですけど、すごく自分の中でハマるものがありました。

──最初に「90年代サウンドをやります」と説明された時、どんな楽曲かすぐにイメージできましたか。

Yuzuka 全然わからなかったです。ただ、ダンスをやっていてTRFさんの楽曲は聴いていたので、「あんな感じだろうな」っていう、ぼやけた印象だけはありました。

Reyuna 「EZ DO DANCE」と「BOY MEETS GIRL」は知ってたんで、「EZ DO DANCE」みたいな曲をやっていきます、という説明でぼやっと(笑)。

Yuzuka その当時からK-POPが流行っていて、みんなが歌って踊るみたいなガールズグループじゃなくて、シンセサイザーというポジションのように役割が分かれているところがおもしろいなと思いました。

Airu 私はオーディションの課題曲が「恋しさとせつなさと心強さと」だったからその時にTKサウンドを聴きましたけど、あまり通ってない世代なので。どちらかといえばビーイングサウンドを多く聴いていたので、練習の時はどうやって歌ったらいいのか悩んで難しかったですね。

──皆さんはHiiT FACTORYとして活動するまではどんな音楽を聴いていたのですか。

Yuzuka 中高生の時にハマったのは、クリーン・バンディット(※1)っていうイギリスのエレクトロニックバンドです。私はクラシックバレエを習っていて、オーケストラのサウンドが好きだったんですよ。ストリングスが効いたクラシックに電子音が組み合わさっているのがおもしろいなと思って。インストバンドではなくて、楽曲に合わせてm-floみたいにゲストボーカルを迎えるスタイル。聴いたきっかけは、多分ダンスの課題曲で使ったり大会で流れていたりしたからだとは思うんですけど、すごく好きでしたね。

Reyuna 私は小学2年生からダンスをやっていた影響で、R&Bの辺り…TLC、ジャネット・ジャクソン、マイケル・ジャクソンとかを、若干つまみつまみでJ-POPを聴いて、そこに多分TRFさんの楽曲もあったんですよね。そしてK-POPにハマってK-POPのアイドルになりたいって思っていましたが、高校生ぐらいに母の影響でクイーンを好きになって、ヒットに加入する前はブリティッシュロック一色でしたね。

Airu 私が好きだったのはZARDさん、小松未歩さん、三枝夕夏さん、倉木麻衣さんとか。ビーイング系のCDが家に多くあって、よく流れてました。

──皆さんの世代は、音楽の聴き方は配信が主流だったのですか。

Yuzuka 私はスマホを持っていなかったのと、両親が機械に疎い方だったので、CDを買ったりレンタルショップでCDを借りたりして聴いてました。後にレコチョクの音源をウォークマンにダウンロードしてもらっていました。

Reyuna 私は幼い頃からiPod touchを持っていたのでiTunesで曲を購入したり、YouTubeで聴いたりして。好きなアーティストはCDを買ってました。そのCDを実際には聴かないんですけど、グッズみたいでかわいいなっていう感覚ですよね。

Airu 私が好きだったZARDさんとかってサブスクがないので、聴くためにはCDを買うしかなくて。

──今のサブスクだと新旧の時代の区別なくフラットに音楽が聴けます。90年代を過ごしていない皆さんは当時の楽曲のどこにおもしろさを感じますか。

Reyuna 今は年代を気にして聴くようになったので、何も知らなかった頃にどう感じたのかを忘れてしまったのですが…。耳が育った状態で聴いて思うのは、ジャンルが交差しているようなところでしょうか。たとえばバンドサウンドっぽいなかにも電子音が入っているとか、特定のジャンルにカテゴライズされない楽曲が多いように思いますね。80年代だったら、きっとディスコやダンスミュージックがあって、その前の時代はロックがあってというのがあったのに、90年代は流行のジャンルがわからなくなるんですよ。ジャンルがきっとアーティストになったんでしょうね。

Yuzuka 誰にプロデュースされたかで、その音が決まっていくみたいな。最近、80年代のディスコサウンドって呼ばれるハイエナジーの辺りから、m.o.v.eさんとかが出てくる90年代、2000年初期のユーロビートぐらいまでを聴いているんですね。80年代でいちばん聴いているのはPWLのサウンドなんですけど、バナナラマの楽曲になった瞬間、「ああ、これ来た」って何かビビッと感じるものがあって、クレジットを見ると「PWLなんだ!」ってなるんですね。90年代のサウンドをサブスクでランダムに聴きながら掘っている時にEARTH(※2)を初めて耳にして「この音、なんか聴いたことあるぞ!?」と思って調べたらavexだったみたいなのもそれと同じような体験で、どのアーティストやレーベルが作ったかによって音が変わってきて、その色がはっきり出てくるのが90年代なのかなって思いました。

Reyuna 海外であったミクスチャーのカルチャーがしっかり日本に入ってきたのが90年代なのかな? ミックスされてるみたいな。

Airu 私は90年の曲は、生音で録っているっていうイメージ。楽器の音1つ1つに厚みが強く出ていて、ひとつに合わさったらサウンドがより豪華になるように思いますね。

Reyuna ビーイング系のバンドサウンドには、確かにそんな感じがあるよね。

※1…ロンドン出身の3人組グループ。2014年にデビュー・アルバム『ニュー・アイズ』をリリース。収録曲「ラザー・ビー」が英国チャート 1 位を獲得した。
※2…東郷祐佳、朝長真弥、瀬戸山清香の3人組ダンス&ボーカルグループ。2000年に「time after time」でデビュー、2005年に解散した。

初めて耳にした楽曲でも自然に起こるコール&レスポンス。HiiT FACTORYのライブ会場は多幸感に満ちている

当時の音楽を探る“アルバム100本ノック”

──「90年代のサウンド」をテーマにする事務所だから、当時の音楽について教えてくれる方もたくさんいらっしゃるでしょうね。

Reyuna DJイベントとかに遊びに行った際に、DJさんに「こういう音楽が好きならこういうのもあるよ」とかいろいろ教えてくれることは結構ありますね。そうしたありがたい情報をいろいろストックして、帰って聴きながら調べてみたりして。

Yuzuka HiiT FACTORYの楽曲を作ってくださる、ミラッキ大村さんや小澤(正澄)さん、Shinnosukeさんたちが私たちのイベントを観に来てくださるんですよ。なので、イベント終了後に少しご挨拶させてもらう時とか、打ち上げでご一緒させてもらった時に当時のいろいろなお話を伺ったりして。90年代をリアルタイムで過ごしてきた方から、直接お話を聞くのがいつも刺激になって、じゃあ次はこの曲を聴いてみようって気持ちになりますね。

Reyuna 私たちにいちばん近いところでは、ジャケットのデザインや衣装を決めてくださるスタイリストさんも90年代がリアルタイムに青春でした。ビジュアル面で私たちも教えてもらって、形から入るところは多く取り入れています。

──現在、皆さんは「アルバム100本ノック」を実行しながら当時の音楽を勉強中ですね。どんなテーマで取り組んでいるのでしょうか。

Airu 私は歌詞とか歌い方に注目していて、今は共感できるような歌詞の作品が自然と多くなっています。そのアルバム全体を通して誰がプロデュースしたのかを調べたら知ってる方が多くて、「この方がプロデュースしているからこういう味が出てるんだ」って知るのが楽しくて。

Reyuna 私は90年代から00年代のヒップホップにカテゴライズしていて、すごく好きだって思ったのがTOKYO No.1 SOUL SETさんです。バンドサウンドがもともと好きっていうのもあるのと、ヒップホップをなんとなくでしか聴いてなかったんですよ。ヒップホップはいろんな音楽からサンプリングしてできたジャンルであることがわかって、今はサンプリング元を探すのが楽しいですね。あとリリックが詩を読んでいるみたいなんですよ。音に乗せていると文で読むよりも頭に入って情景も思い浮かんで、音を聴いてるのに映像を見ているような不思議な感覚になります。

Yuzuka ユーロビートというジャンルができあがるまでを調べています。PWLをきちんと認識したのは最近ではあるんですけど、今はそのあたりを掘っていて。バナナラマやリック・アストリー、ドナ・サマーとか有名どころもあり、ファンの方にお薦めしていただいて聴いたのはソニア。PWLのボーカルのなかではかわいらしい声の持ち主で、その声で哀愁ユーロを歌っているのがすごくおもしろいですね。

──音楽を聴くだけじゃなくて、その感想をポストするんですね。

Yuzuka ポストするまでに、聴いて気づいたことを書き出して要約していく作業のなかで知識として身につくんです。すると、あらためてその音楽を聴いた時に、細かい部分にまで気づけるようになり、それが新しい発見につながるのが楽しいです。

2025年6月1日からスタートした「アルバム100本ノック」。Airuは90~00年代の女性ボーカル曲を、ReyunaはHIPHOP、Yuzukaはユーロビートを中心に名盤を聴き、それぞれが感想を公式Xにポストしていく

https://x.com/hiit_factory/status/1928787461578072079

アーティストとの共演が新しい一面を引き出す

──最新シングル「Never let it go」は90年代のニュージャックスウィングの延長線上にある今の音で、中西圭三さんの楽曲です。中西さんとはどんなお話をなさったんですか。

Yuzuka レコーディングには中西さんと編曲の小西さんが直接ディレクションをしてくださって、その時にたくさんお話を伺いました。この曲のイメージはリゾート感と多幸感だと。「キラキラして高揚感もあって幸せになれる感じをそのままHiiT FACTORYの新曲にも出せたらいいな」と思って作ったと伺いました。

──今後、一緒にやってみたいというアーティストは。

Yuzuka 何言ってもいいですか!? D-LOOPの葉山拓亮(はやまひろあき)さんに作っていただきたい! 私が好きなEARTHさんとか観月ありささんにも葉山さんがプロデュースしている曲が多いので。今回、中西さんをきっかけにサウンドの範囲が広がったからこそ、グルーヴィーな葉山拓亮さんにお願いできないかなって思っています。

Reyuna TOKYO No.1 SOUL SETさんとかは一緒にできたらうれしいって思いつつ、違うジャンルならば小西康陽さん。HiiT FACTORYとはまだつながりがないジャンルではあるんですけど、また新しい一面を見せられるんじゃないかなと。あとは海外で言ったらジャム&ルイス!

Airu 私は徳永暁人さんや織田哲郎さん。もしライブにも出ていただけたら…多分悲鳴をあげちゃって歌えない(笑)。

*

「90年代のサウンド」を標榜して生まれたHiiT FACTORYは、石坂翔太によるTKサウンド、元PAMELAH・小澤正澄によるビーイング系、そして中西圭三によるニュージャックスウィングと、光の当たり方で新しいスタイルを我々に提示して見せる。次に彼女たちに注ぐ光によってどんな音楽が紡がれるのかを楽しみに待ちたい。

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Dig-it 編集部
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