衣服が「道具」から「ファッション」へ変わった“アメリカの黄金期”を考える【1950~65年】

1940年代〜60年代半ば、アメリカの黄金期。第二次世界大戦を契機に世界的な大国となるまでの歴史や流れを知るとともに彼らの衣服が“道具”から“ファッション”へと変わる過程を学ぼうではないか。前半に引き続き後半をお届けする。(写真/National Archives)

あらゆる文化が成熟し黄金期を迎える

第二次世界大戦後のアメリカの発展におけるひとつの契機として、朝鮮戦争への軍事介入が挙げられる。ソ連や中国の支援を受けた北朝鮮に対し、アメリカをはじめとする国連軍が韓国を支援。この有事によって、アメリカは再び軍需が増加。それにより、第二次世界大戦の時と同様、工業の成長が加速した。

ミリタリーウエア史においてはM‒51などの名作も誕生。時を同じくして戦後世代の家庭形成が進み、住宅、自動車、テレビなどへの需要が増大。平日はスーツで働き、休日はスポーツウエアやアウトドアウエア、ワークやミリタリーを取り入れたカジュアルスタイルで過ごすという、今日における“アメリカンカジュアル”が定着していく。そして、53年に朝鮮戦争が休戦。再び消費社会が加速し、40年代後半に普及し始めたテレビがさらに一般家庭にまで広がった。そして、プロスポーツの人気の急拡大、ロックンロールなどのティーンカルチャーの勃興など大きなムーブメントが巻き起こり、キャンプ、ハンティング、フィッシング、ゴルフなどの週末のレジャー文化が大きく広がる。第二次世界大戦後は、一部の富裕層が中心となり、豊かな生活を手に入れたのに対し、朝鮮戦争を経てその豊かさがより一般層にまで広まったのだと言える。

50年代半ばから後半にかけてはカレッジ、スポーツチームが若者文化として定着。ワーク、ミリタリー、スポーツ、アイビーといった旧きよきアメリカのスタイル、そして車や音楽、映画やドラマなど〝複数のアメリカ〟が同時進行的に成熟していく。60年代に入ると、戦後生まれのベビーブーム世代がティーンエイジャーとなり、文化形成を大きくリードする存在に。その後、冷戦、ベトナム戦争への介入を契機に時代が大きく変わり始める。

こうして第二次世界大戦を契機とした経済成長に始まるアメリカの黄金期は一旦の幕を閉じるわけであるが、この40年代から60年代半ばをまとめるならば、戦前から存在したスタイルや文化が国力の発展とともに最初は富裕層、そして一般層へと浸透し、アメリカを象徴する存在へと変貌を遂げたのがアメリカの黄金期である。ただし、これは単なる時代の変遷ではない。いくつもの時代背景や文化が複合的に絡み合っていることを忘れてはならない。

様々なスタイル・文化をアメリカが世界に広めた

【1950-1955】世界で最も豊かな国になる

朝鮮戦争への軍事介入を境に、アメリカはさらに発展を遂げる。第二次世界大戦の英雄であるアイゼンハワーが大統領に就任してからは、社会全体に安定感が生まれ、スーツ、スポーツジャケット、ボタンダウンシャツといった“正統派”なアメリカ人男性像が確立されていくと同時に、ロックンロールなどの俗に言う”50sカルチャー”が勃興。「豊かで自由な国・アメリカ」というイメージが定着した。一方で1954年にはブラウン対教育委員会裁判の最高裁判決によって、公立学校における人種隔離を違憲と判断。アメリカ社会の大きな矛盾であった人種問題が浮き彫りとなっていく。

1950年
・朝鮮戦争勃発
・国連軍として軍事介入、再び軍需が拡大
・フランスのインドシナ戦争への支援を強める

1951年
・サンフランシスコ平和条約締結
・住宅、自動車、テレビなど需要が増大
・M-51登場

1952年
・ドワイト・D・アイゼンハワーが大統領に当選

1953年
・朝鮮戦争休戦協定
・戦争の終結により、再び消費社会が加速
・テレビ放送の普及によりプロスポーツの人気が急拡大
・ロックンロール、ティーン文化が形成され始める

1954年
・ジュネーブ協定最高裁が公立学校における人種隔離を違憲と判断
・「豊かで自由なアメリカ」と「差別が残るアメリカ」という二面性が顕に

【1955-1960】「アメリカ的な生活」が完成する

車文化の隆盛、ロックンロールが大衆文化の中心となり、エルヴィス・プレスリーが全国的なスターとなり、アフリカ系アメリカ人を中心とした人種差別の撤廃と法の下の平等を求める公民権運動が活発になる、などの様々な流行、社会的事象が起こるなか、テレビが家庭生活の中心となり、郊外住宅地も拡大。全米規模の高速道路網整備が始まるなど、あらゆる面でアメリカ文化が成熟を遂げていく。また、上流階級と労働者階級の間に位置する中産階級が拡大し、キャンプ、フィッシング、ハンティング、テニス、ゴルフなどの週末のレジャー文化が大きく広まった。「世界でもっとも豊かな国」という意識と自信が最も如実に現れた時代である。

1955年
・シボレー・ベルエアなど、アメリカ車文化が隆盛
・ロックンロールが大衆文化の中心に、エルヴィス・プレスリーが全国的なスターに

1956年
・郊外住宅地の拡大
・連邦補助高速道路法成立、全米規模の高速道路網整備が始まる

1957年
・ソ連が人工衛星スプートニク1号打ち上げに成功
・宇宙、航空機、未来への憧れがプロダクトデザインにも影響

1958年
・高度経済成長を迎え、中産階級が拡大
・キャンプ、ハンティング、ゴルフなどの週末のレジャー文化が広がる

1959年
・ハワイが50番目の州に

【1960-1965】黄金期のアメリカが変わり始める

1960年に稀代のファッションアイコンとしても知られるジョン・F・ケネディが大統領に当選。60年代前半は、二次大戦後に生まれたベビーブーム世代がティーンエイジャーとなり消費社会や文化形成に影響力を持つようになる。戦争を知らない若者世代が40〜50年代に作られたアメリカの豊かさを再解釈しはじめ、大学文化、ポップカルチャー、音楽文化が急速に拡大。アメリカの文化は大きな転換点を迎える。その後、共産主義(ソ連)との冷戦による緊張感の高まりやケネディ大統領の暗殺、ベトナム戦争への介入などによって安定した豊かなアメリカ」が徐々に揺らぎ始めることとなる。

1960年
・ジョン・F・ケネディが大統領に当選
・戦後生まれのベビーブーマーがティーンエイジャーへ

1961年
・ニュー・フロンティア政策
・ケネディ政権が南ベトナムへの関与を強化

1962年
・キューバ危機

1963年
・ワシントン大行進
・ジョン・F・ケネディ大統領暗殺

1964年
・公民権法成立
・トンキン湾事件

1965年
・ベトナム戦争へ本格参戦

(出典/「2nd 2026年11月号 Vol.220」)

この記事を書いた人
みなみ188
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みなみ188

ヤングTRADマン

1998年生まれ、兵庫県育ちの関西人。前職はスポーツ紙記者で身長は188cm(25歳になってようやく成長が止まった)。小中高とサッカーに熱中し、私服もほぼジャージだったが、大学時代に某アメトラブランドの販売員のアルバイトを始めたことでファッションに興味を持つように。雑誌やSNS、街中でイケてるコーディネイトを見た時に喜びを感じる。元々はドレスファッションが好みだったが、編集部に入ってからは様々なスタイルに触れるなかで自分らしいスタイルを模索中。
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