“豊かなアメリカ”の礎が築かれた時代
1940年代から60年代半ば。アメリカが世界大国に成長した“黄金期”とも呼べる時代である。この時代における大きな契機はやはり第二次世界大戦だ。アメリカが本格参戦したのは41年のこと。この未曾有の大戦を迎えるなか、物資統制などの制限はありつつも、国防需要の増大により、航空機、軍用車両、造船、繊維、鉄鋼などの産業が急拡大を遂げたのである。ワークウエアにおける“大戦モデル”が生まれたのも、ミリタリーウエアにおいて、今日における名作と呼ばれるモデルが誕生したのもこの期間だ。
アメリカ国内の様々なメーカーが軍需生産に転換していくことで、需要の増加に伴い生産力が拡大。生産効率を高めるための工夫が各メーカーでなされ、“道具服”の生産体制が強化された。ワーク、ミリタリーに加えて、スポーツ選手が兵士として戦場に立ったり、44年の復員兵援護法成立によって、復員兵に対する大学教育の支援を提供することが法令で定められるなど、スポーツ、アイビー(カレッジ)といった要素が複雑に関わり合っている点も見逃してはならない。
そして、大戦中に国力を高めたアメリカは45年の終戦後、消費需要の高まりやベビーブームによって経済大国へと成長を遂げていくこととなる。この頃から、戦前は労働者や兵士たち、そしてスポーツのユニフォームであった衣服が、余暇を楽しむための服、すなわちファッションとして捉えられ、人々が求めるようになっていく。“豊かなアメリカ”の礎を築いた時代と言ってもよいだろう。
“道具としての服”が大衆へと普及していく

【1940-1945】戦争がアメリカを巨大な工業国家にする
第二次世界大戦への参戦に伴い、アメリカの工業は大きく発展を遂げた。アメリカ軍の軍事活動に必要となる戦闘機や船、衣類や食料品など膨大な物資が必要となるなかで、政府からメーカーへの発注が増加。効率を上げて生産量を向上させるための体制の強化や雇用の増加などがなされ、メーカーは生産力を驚くべきスピードで高めていった。また、男性が戦場に向かったことで女性が工場労働へと進出したり、兵士の命を守り、任務を達成するためのミリタリーウエアが大量生産され、大きく発展したのもこの時代のことである。
1940年
・フランクリン・D・ルーズベルト大統領が、ヨーロッパで戦争を続けるイギリスへの支援を強化
・アメリカ史上初となる平時の徴兵制度・選択徴兵法が成立
1941年
・真珠湾を攻撃
・第二次世界大戦への本格参戦
・自動車メーカー、衣料メーカー、時計メーカーなど、民間産業が大規模に軍需生産へ転換
1942年
・アメリカ軍がヨーロッパ、太平洋の両戦線で本格的な戦闘を開始
・軍服、航空機、船舶、トラックなどを驚異的な規模で増産
・衣料品にも資源節約の考え方が導入
1943年
・アメリカ軍が世界各地へ展開
・「GI」という言葉がアメリカ兵の代名詞として広く定着
・M-43フィールドジャケット登場
1944年
・ノルマンディー上陸作戦
・GI Bill(復員兵援護法)成立
1945年
・第二次世界大戦終結
・国際連合設立
・軍服だったものが、民間人のワードローブへ流れ始める
【1945-1950】兵士たちが帰還し、新しいアメリカをつくる
1945年に第二次世界大戦が集結。戦勝国となったアメリカは大きく発展を遂げる。戦時中に制限されていた国民の消費意欲が一気に高まり、軍需経済から民需経済へと転換していく。また、戦場から帰還した兵士たちによってフライトジャケット、フィールドジャケット、ミリタリートラウザーズ、サービスシューズのような“軍服”が民間人のワードローブに流れ始めたのもこの時代のことだ。そして復員兵(戦後、故郷や元の生活に戻った兵士)たちが大学に進学したり、平時の生活に戻ったことで結婚と出産が増加するなど、国民の視線は“豊かな生活”へと向かっていく。そのなかで自動車、家電、住宅などへの需要が急激に増加。さらに、働くための服だけでなく、余暇を楽しむための服=休日服への需要が高まりを見せる。時を同じくして、テレビが普及することにより、プロスポーツが現地だけではなく家庭でも見られるようになった。様々なカルチャーやスタイルがテレビを中心とした公共の電波を通して大衆へと広がっていった、まさにアメリカの転換点ともいえる時代である。
1946年
・戦時中に抑えられていた消費需要が噴出
・ベビーブームが本格化
1947年
・トルーマン・ドクトリン発表
・マーシャル・プラン発表
・国家安全保障法成立、空軍独立
1948年
・テレビの普及が急速に進む
・ソ連によるベルリン封鎖
・アメリカと西側諸国がベルリン空輸作戦を実施
1949年
・NATO(北大西洋条約機構)設立

(出典/「
Text/Kihiro Minami
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