
AIを使うと子どもは考えなくなる? それは本当にAIのせいなのか?
『AIは教育に使うべきではない』という意見を持つ人がたくさんいる。ネットを見ていると「AIが考えるので、子どもは答えを丸写しするだけになる」「創造性が低下する」「誤情報を信じてしまう」などという意見が散見される。
ハサミから、原子物理学に至るまで、常にテクノロジーというのは使い方次第だ。生成AIもそのうちのひとつ。上手に使えば、従来の学習法では得られなかったほどの学習効果を発揮するし、下手に使えば学習を阻害してしまう。上手に使えなかった人の意見を聞いて、この「AIを学習に使う」という千載一遇の機会を見逃すことはない。

ちなみに、よくOECD(経済協力開発機構)の調査として引用されるPISA 2022の『デジタル機器が授業の集中力を妨げる』という話は、30%が『数学の授業でデジタル機器を使用しているために、頻繁に気が散る』、というのと、25%が『ほかの生徒がデジタル機器を使ってるために、頻繁に気が散る(SNSや、通知が来たことを含む)』と答えている話が混じってしまっている。さらに、そもそもこの調査はAIの話ではない。
『ChatGPTの答えを丸写しする』生徒は初めから『学ぶとは、どういうことか?』ということを理解していないわけで、そんな心配をする人は、学生時代に問題集の正答欄を見ながら宿題をしていたような人なのではないか? 『学ぶために、いかに生成AIを活用すればいいのか?』とは考えないのだろうか?

ATOKから教育AIへ。MetaMoJiが長年培ってきた技術と哲学
MetaMojiは、創業以来一貫して『IT技術で人間の可能性を拡大する』ことを哲学としている。ジャストシステム時代のATOK、一太郎、花子に始まり、MetaMoji、GEMBA Noteなどの手書きアプリケーション、教育を支援するMetaMoJi ClassRoomシリーズなど、すべての製品がその哲学の上にある。

また、ご存じの通り、生成AIの根幹となるLLM(大規模言語モデル)というのは、言語処理、データベース、検索などの先にある技術だ。漢字かな変換には古くから統計的な言語処理技術が組み込まれている。MetaMoJiが、生成AIについて知悉してるのは、ある意味当然。MetaMoJiには、古くから言語処理技術に関して研究している卓抜した知識を持ったエンジニアが大勢いる。
その、生成AIに関して深い知識を持ち、『AIで人の持つ可能性を拡大する』ことを目標にしているMetaMoJiは、これからどういうサービスを展開するのか? が今回の発表会では提示された。

複数のAIを使い分ける、教育特化型AI『SHUUSAI』とは?
まず、開発が発表されたのは独自の教育AI『SHUUSAI』。

これは従来の発表会ではMetaMoJi AIと呼ばれていたもので、複数のLLMを連携させ、その時点で性能が高く、効率が良く、コストパフォーマンスに優れたものを活用する『AIオーケストレーション』と、いわゆる一般的な生成AI的な部分と、専門化の知識を正しく活用する知識型AIを組み合わせたハイブリッド型AIであることを特徴とする。

また、教師だけでなく児童・生徒が利用することを考え、総務省・経産省の提供するAI事業者ガイドラインに準拠し、各種ガードレールを装備するようになっている。

この『SHUUSAI』をエンジンとして、さまざまな機能を提供するというのが、MetaMoJiのAI戦略だ。

教師の負担軽減から子どもの主体的な学びまで。SHUUSAIのロードマップ
MetaMoJiがSHUUSAIを使ってまず取り組むのは、『校務負担の軽減』と『教務準備の支援』、そして『自己調整学習の取り組みの支援』だ。

具体的なロードマップとしては、2027年3月にSHUUSAIはMetaMoJi ClassRoom 3に標準搭載(追加費用なし)され、2027年末には機能強化された単体製品として発売される。また、2027年3月には、『メタモジドリル(小学校用)』を発売(1ライセンス4800円)。こちらは、当初はAI機能非搭載でローンチされるが、2027年度中にアップデートでSHUUSAIの技術を搭載したAI搭載ドリルに進化する予定。
では、以上について、ひとつひとつ解説していこう。
教師にしかできない仕事に集中するために。AIが校務と授業準備を支援
ご存じのように、いま教師の労働負荷が問題になっている。多くの一般企業では労働基準法で労働環境が改善されていっているが、教師の場合、なかなかそうもいかない側面がある。授業はもちろん、朝の登校の監督から、生活指導、給食、清掃、部活動の指導、学校行事の準備、保護者への対応など、途方もない広さの仕事が『先生のすべきこと』としてのしかかってくる。

SHUUSAIがまず取り組むのは、この内の『校務負担の軽減』と『教務準備の支援』だ。
校務とは、職員会議、学年会議などに始まり、生徒の出欠、遅刻・早退の管理、通知表や指導要録の作成、教育委員会への報告調査回答、保護者対応、各種文書・お知らせの作成、校務分掌(教務、生活指導、広報、防災など)の担当などにまつわる仕事だ。
教務とは、授業計画書・指導案の作成にはじまり、教材研究、プリント・ワークシートの作成、採点・評価、特別な支援が必要な児童・生徒への教材調整、児童・生徒の学習状況の分析、授業後の振り返り・改善など、授業をすることに関する仕事だ。たとえば、宿題の作文がひとり原稿用紙3枚分(約1200文字)だとして、30人分のそれ(つまり3万6000文字)を読んで、評価し、バランスの取れた指導を行うというのに、どれほどの時間がかかるだろうか?
まず、SHUUSAIが行うのはこの支援だ。

一般に、企業のドキュメントワークの効率化などにもAIが使われるが、この校務・教務を効率的に行うためにもAIが活用されるべきなのはいうまでもない。

校務・教務の効率化がすすめば、教師の働き方改革になるのはもちろん、より教師の目が生徒に行き届きやすくなり、本質的な、教師にしかできない指導に時間とエネルギーを使えるようになるということでもある。
答えを教えるのではなく、考える力を育てる。AIが支える『自己調整学習』
加えて、SHUUSAIは主体性を持って考える人を育てるための、自己調整学習の取り組みを支援する。
SHUUSAIは将来的に日本人全体の学びをサポートしていく高い目標を持ち、さまざまな専門家と共同研究した教育メソッドを取り込んだ『教育AI』、『図解AI』、『目標AI』などを開発していく予定だが、ひとまずは来春(2027年3月)にローンチされるMetaMoJi ClassRoom 3に搭載されるのが第1弾となる。

こちらには、評価目標をAIで提示し自己調整する『ルーブリック』、自ら問いを立て、思考を巡らせる『AIチャット(壁打ち)』、生徒の多様な意見を瞬時に分類・構造化する『グルーピング』、学習ログを分析し個に応じた提案をする『アドバイス』、学習テーマ、見通し、振り返りなどに関して、子どもが主体的に学び、先生が見守り・支えるという環境をAIが支援する『学習シーンのAI支援』などの機能が搭載予定となっている。これらはMetaMoJi ClassRoom 3を契約していれば使うことができ、追加費用は発生しない。

さらに、2027年夏にはこれらの機能を抜粋した単体製品を希望校において検証し、2027年冬には『校務文書作成支援』『授業設計支援』『教材作成支援』『評価・見取り』などの機能を持った単体製品として発売されることになる。
一人ひとりに合った問題を出題。『メタモジドリル』もAIで進化
また、協働学習のためのMetaMoJi ClassRoomに対して、個別学習のためのメタモジドリル(小学校用)も2027年3月に発売予定(1ライセンス4800円)。

こちらは漢字・計算ドリル、情報ドリルを搭載しており、2027年度中にSHUUSAIの技術を活用した『AIドリル』に進化予定。AIドリルになると、ヒントや解説を表示したり、一人ひとりに対して適切な問題を出し分けたり、学習履歴から最適な問題セットを個別作成したりできるようになる。
教育からビジネス、日常へ。SHUUSAIが広げるMetaMoJiの可能性
AIと教育に関して、深い知見を持つMetaMoJiが、その総力を結集してローンチする教育AI『SHUUSAI』というエンジンは、おそらくその後マイナーチェンジを加えて、我々一般コンシュマーが日常で使うMetaMoJi Noteアプリの進化版になったり、GEMBA Note、eYACHOなどの法人向け製品のシリーズにも活用されていくに違いない(このあたりはコンシュマーアプリユーザーとしての筆者の希望を込めた推測だが)。
ひとまずは、来春3月のMetaMoJi ClassRoom 3と、メタモジドリルの登場を楽しみに待ちたい。
(村上タクタ)