素材の変化
ミリタリーウエアにはかつて天然素材が多く用いられていたが、技術の発展により化学繊維や混紡素材が登場。なかでもフライトジャケットはその変化が顕著で、第二次世界大戦期まで主流だったレザーからコットンへ、そして1940年代後半にはナイロンへと移行している。航空機の進化とともに、素材もアップデートされてきた。

ボディにレザーが用いられていた時代は、袖口や裾のリブもウールが主流。暖かさや伸縮性に優れるが、肌あたりの良さは化繊に劣る。
実用性を考えたディテール
過酷な環境で任務を遂行する兵士のため、用途に特化したディテールが数多く備わる。カーゴポケット内に備わる長いテープは、ジャングルを走っている際にポケットの中身が暴れないように固定したり、緊急時の脚部の止血に使ったりとさまざまな用途に用いられた。ほかにもフライトジャケットの胸元に配されたオキシジェンタブは、高高度飛行時に使用する酸素マスクのホースをクリップで固定するためのものである。


形や素材を変えながら継承されたオキシジェンタブだが、航空装備の進化によって後期の型では姿を消している。
ヒッピーやモッズなどユースカルチャーへ
本来は兵士のために作られたミリタリーウエアだが、戦後は安価に手に入る放出品が若者たちの目に留まり、ストリートへと広がっていった。1960年代にはイギリスでモッズがM-51パーカをスーツの上から羽織り、その後アメリカではヒッピーや反戦運動の若者たちがあえて身につけるように。本来の意味を反転させながら、ミリタリーウエアはカウンターカルチャーを象徴するファッションへと姿を変えていった。
ミリタリーウエアの歴史
ミリタリーウエアは、兵士の命と任務を支える実用品として戦いの中で発展してきた。戦場や気候、部隊などに応じてさまざまなプロダクツが生まれ、戦う場所や兵士が扱う装備の変化に合わせ、素材やディテールも改良されてきた。第二次世界大戦後には軍の放出品が民間へと流れ、若者たちの装いにも浸透。1960年代にはモッズや反戦を掲げる若者にも取り入れられるなど、ファッションやカルチャーへと広がった。
ミリタリーの足元
ひと口に兵士と言ってもその所属や任務はさまざまで、靴もそれに応じて細かく使い分けられていた。一般的な戦闘用ブーツのほか、例えば空挺隊員にはそれ専用のブーツが支給されていたように、それぞれの任務に適した靴が存在する。ウエアに目が向きがちなミリタリーだが、兵士たちの足元に注目してみるのもまた面白い。
色が持つ意味
兵士が身につける制服の色は、年代や任務、服の種類によってさまざま。例えば陸軍のフィールドジャケットには地上でのカモフラージュを目的に黒くくすんだオリーブカラーが広く使われ、空軍では不時着時などに地上で目立ちにくいセージグリーンをフライトジャケットに採用。海軍を象徴するネイビーは18世紀の英国海軍の制服に端を発する伝統色で、色名の「ネイビー」自体も海軍の呼び名に由来するものである。

仕様の変遷
実戦で浮かび上がった課題をもとに、細かな仕様が都度見直されてきたミリタリーウエア。M-51パーカからM-65パーカへの変遷においては、フードや襟の変化が挙げられる。M-51ではシェルと一体だったフードがM-65では着脱式に変更され、必要に応じてつけ外しができるように。それに伴い襟もスタンドカラーへと変わっている。こうした改良の歴史は、さらに前身のモデルまで遡れる。M-51パーカ以前のモデルのM-43パーカはカンガルーポケットを備えたプルオーバータイプ。実戦に合わせてアップデートを重ねてきたことがわかる。
モデル名の読み解き方
アルファベットと数字で構成されるモデル名にも意味がある。M-51やM-65のMはModelを表し、数字は採用された年の西暦に由来。一方、A-2がA-1の後続の型であるように、数字で型式を表す場合もある。またB-15A、B-15Bのように、基本となるモデルに改良が加えられるたび、末尾のアルファベットが変化するケースも。命名法はモデルによって異なるが、名称から年代や系譜を読み解くことができる。膨大な軍需品を正確に識別、管理するための型式名だからこそ生まれた、無機質で合理的なネーミングもミリタリーならではだ。
(出典/「
photo/Kazuya Hayashi 林和也 text/Komichi Nakamura 中村こみち
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