ポール逮捕のニュースで認識した4人のアイドル【ビートルズのことを考えない日は一日もなかったvol.2】

ビートルズの魅力とはなんだろう。その答えは人それぞれだろうが、44年間毎日ビートルズのことを考え、長い歳月をかけて巡り巡って導き出された答え、それは顔である。もちろん、最初にビートルズを聴いたときの、今までに聴いたことのないロックンロールに違和感に近い興奮を覚えたのは確か。オリジナルすぎるマジカルポップなセンスに魅了され続けているのも事実。しかしその後、多くのレコードを聴き、本を読み、ギターを弾き、という一連の行動を重ねた末の最終的な結論として、“4人の顔、ルックス”というシンプルな答えにたどり着いた。理屈ではない。強いて言えば、あのルックスがあるから音楽がより素晴らしく聞こえるのではないかという理屈。そもそも自分がビートルズに興味を持ったのは、見た目の魅力がきっかけだったからということもある。基本に立ち返ったともいえるのだ。

『ポール・マッカートニー・ニュース・コレクション』(やじろべえ社)に封入されていたポスター

日本中を駆け巡ったポール逮捕のニュース

それは1980年1月16日のこと。時間まで記せば夕方6時頃。なぜ、具体的な日時まで覚えているのかというと、その時間にポール・マッカートニーの逮捕がテレビのニュース番組で報じられたからである。自らのバンド、ウイングスを率いて公演のために来日したものの、成田空港の税関で大麻所持の現行犯で逮捕、警視庁に連行されたのち、9日間拘留されるという一大事があったのだ。

いつも観ているニュース番組で大きく取り上げられたこの事件。なんだ、この騒動は? と思い興味本位で見ていると、その主役がビートルズの元メンバーで、その映像のバックに流れるビートルズやウイングスの曲を歌っているポール・マッカートニーという人間と知り、身体の中に電気が走った。なんてかっこいいんだろう。冷静に見れば、犯罪者なのだが、その飄々とした感じ、これぞイギリス人というジェントリーな振る舞いに心打たれた。目、耳、そして全身の毛穴でポール・マッカートニーを受け入れたというのか。「初めて自分のアイドル」を見つけた気持ちになった。

 以降10日間くらい、メディアではポールを巡って上を下への大騒ぎとなったのだが、テレビやラジオで情報を収集していくうちに、ポール熱に浮かされ、もっと知りたい、全部知りたいと言う気持ちが高まっていく。ネットがない環境下ゆえ、簡単に音楽が聴けるわけでも、写真を拝めるわけでもない。ラジオでビートルズ特集を見つけては曲を聞き、録音し、近所のレコード屋に出かけては、買わずにレコードを見るという行為を繰り返した。ポール以外のメンバーの顔と名前がいまいち一致しないが、それまでは野球とか、マンガとか、アイドルが出る歌番組とかにしか今日にのなかった自分が、ビートルズ一色の毎日になっていく。

そして、3ヵ月くらい経った頃、中2になったタイミングでようやくレコードを買うに至る。最初に買ったレコードはビートルズの『ヘルプ!』。「イエスタデイ」が入っているという明快な理由で、親ウケを気にしての選盤だった。江東区南砂町トピレックプラザ内にあったイトーヨーカドーの新星堂だったと記憶。

初めて買ったビートルズのレコード。国旗帯が印象的

期待外れだった『ヘルプ!』

やっと買ったレコードなのに、このアルバムはどこか地味で、期待していたビートルズとは違った印象。「イエスタデイ」以外はたいしてはまる曲はなく、その次の「ディジー・ミス・リジー」の曲調、音質、音圧のギャップに毎回驚いた程度。『ヘルプ!』は映画のサントラなので、映画を観ないではその醍醐味も半減だったのかもしれない。それでもせっかくなけなしの小遣いで買ったレコードなので、学校に帰ってから毎日通しで聞くというルーティンを続けていると、不思議と耳に馴染みだした。

「アナザー・ガール」っていいよね。「涙の乗車券」の最後がかっこいいね、「夢の人」っていいタイトルだよね等々。それから間もなくして、今度はポールのニューアルバム『マッカートニーⅡ』がリリースされた。それは西大島にあったダイエーで購入。リアルタイムでポールの新作が聴けることに興奮するも、テクノ要素を用いた実験色の強い内容に戸惑いを隠せず、『ヘルプ!』同様、毎日修行のようにレコードを聴くことに。実際、当時の音楽雑誌や音楽評論家の間でも好評を得ることはなく、ポールのキャリアで最大の問題作とされていた。それでも、「カミング・アップ」のビデオ(ポールがひとり10役を演じているユニークな映像)をテレビ神奈川(tvk)の『ファンキートマト』で見るにつけ、徐々に好きになっていくのだが。

1980年6月5日に発売された『マッカートニーⅡ』日本盤

自己探求心に目覚めた少年の異常なビートルズ熱

この当時、ビートルズ関連のレコードを出していた東芝EMIは、販促方法として、ポスタープレゼントを積極的にやっていて、『ヘルプ!』『マッカートニーⅡ』を買ったとき、レコード屋でビートルズとウイングスのポスターをもらった。それがなんともうれしく、「レコードを買うとポスターがもらえる」という自分の中の方程式が出来上がり、レコードを買う楽しみができた。早速、ポスターを部屋の壁に貼り、音楽と一緒にビートルズのルックスに魅了される生活を送るのだった。与えられのではなく、自分自身のセンスで好きになったビートルズ。当時13歳という背伸びをしたいざかりで、自己探求に目覚めた少年にとっては、のめり込むには十分な対象であった。

部屋の壁に貼っていた東芝EMI販促用ポスター
この記事を書いた人
竹部吉晃
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竹部吉晃

ビートルデイズな編集長

昭和40年男編集長。1967年、東京・下町生まれ。ビートルズの研究とコレクションを40年以上続けるビートルマニア兼、マンチェスターユナイテッドサポーター歴30年のフットボールウィークエンダーのほか、諸々のサブカル全般に興味ありの原田真二原理主義者。WEBメディア『昭和MILD(https://showamild.com/)』もよろしくお願いします。
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