約95万円からのMacである。普通の原稿書きや写真整理に必要かといわれれば、もちろん必要ない(笑)。では、この恐ろしく高価なMacは一体どんなスペックを持っているのか? とりあえずは、Geekbench 6、Geekbench AIにかけて、一般的なMacと何が違うのか計測してみた。

M5 Ultraは、CPU36コア、GPU80コア
まず、M5 Ultraの仕様を簡単に説明しておこう。

今回お借りしたMac Studioに搭載されているM5 Ultraは、12個のスーパーコアと24個の高性能コア、合計36コアのCPUと、80コアGPUを搭載する。M3 Ultraの20高性能+8高効率=28コアCPU、60コアGPUからすると、コア数だけでもかなり巨大化している。単体のコアの性能アップだけでニーズに追いつけない部分をコア数でカバーできるのがApple Siliconの設計のユニークなところである。

さらにGPUにはNeural Acceleratorを搭載。32コアNeural Engineを備え、メモリ帯域幅はなんと1.2TB/s。ユニファイドメモリは96GBから始まり、256GB、さらに36コアCPU+80コアGPUモデルでは10月後半から512GBも選べる。

アップルによれば、512GBのユニファイドメモリを使えば600B(6000億)パラメータを超える巨大なLLMさえ、モデルによってはMacのメモリ上に展開できるという。 つまりは、もはやMac Studio上位モデルの用途は巨大ローカルAIが中心に据えられていると考えていいだろう。

シングルコアが約48%高速。しかしマルチは9%しか伸びない?
まずGeekbench 6から見ていこう。今回は前モデルのMac Studio M3 Ultraだけでなく、同時発売のMac mini M6、同世代でひとクラス小さいコアを積むMacBook Pro M5 Max、同世代の一般的なコアを積むMacBook Air M5、そしてMシリーズコアの基礎を築いたMacBook Air M1のデータを掲載してみた。

M3 Ultra搭載Mac Studioは、CPUシングルコア2,924、マルチコア35,054。対してM5 Ultraはシングル4,324、マルチ38,319だった。シングルコアはなんと約48%向上している。これはM3からM5への世代間の違いだ。
MacBook Pro M5 Maxは4,203だったから、これはスーパーコアが導入されたことによる速さだと捉えていいだろう。
次はマルチコアを見てみよう。
CPUコアはM3 Ultraの28コアから36コアおよそ3割増えているのに、Geekbench 6のスコアは35,054から38,319、伸び率は約9%にとどまった。意外と速くない。というか、コア数の増加さえ反映されていない。
ただし、これはM3 Ultraの28コアが20個の高性能コア+8個の高効率コアだったのに対して、M5 Ultraは12スーパーコア+24高性能コアというまったく異なる構成になっていること、そしてGeekbenchという比較的短時間のベンチマークの特性も考える必要がある。実アプリでは、アップルはM3 Ultra比でCPU性能最大1.3倍をうたっている。 GeekbenchがこのM5 Ultraの性能向上を計測するのに向かなかったということなのかもしれない。
GPUは約42%アップ。M5 Maxとの差も大きい
GPUは、はっきりと性能向上が計測できた。
Geekbench 6 MetalはM3 Ultraの225,373に対して、M5 Ultraは319,245。約42%高速になった。ちなみにM5 Max搭載MacBook Proは220,032。つまりM3 Ultraとほぼ同等である。それに対してM5 Ultraは約1.45倍だ。さすが80コアGPUである。
アップルが公開している実アプリでのテストでは、Redshiftの3DレンダリングでM3 Ultra比最大1.7倍、グラフィックス全体では最大1.8倍をうたう。GPUには第2世代Dynamic Caching、第3世代ハードウェアアクセラレーテッド・レイトレーシングも搭載されている。Geekbench Metalの約42%という数字より、特定のGPU負荷の高い処理ではさらに差が開く可能性があるということだ。
Geekbench AIでは、デュアルNeural Engineを積むM6に負ける
Geekbench AIをNeural Engineで測ると、意外な結果になった。
Single PrecisionはM3 Ultraの5,464からM5 Ultraは6,688で約22%アップ。Half Precisionは30,798から44,486で約44%アップ。そしてQuantizedは33,666から61,227となり、なんと約82%も向上した。特に量子化演算の伸びが大きい。
M6 Mac miniはSingle Precision 6,791、Half Precision 60,909、Quantized 81,349。
Neural Engineの性能は、写真撮影や、音声認識など、日常的な用途に役に立っているが、ローカルLLMなどのパフォーマンスは80コアGPUそれぞれにNeural Acceleratorを持ち、さらに最大512GB、1.2TB/sという巨大なユニファイドメモリの方が大切なので、ここはMac Studioの用途としては、さほど重要ではない。
実際のLLMのテストではM3 Ultraの最大4倍の性能
それをよく示しているのが、アップルが公開している実アプリのテストだ。
LM StudioでLLMのTime to First Tokenを測定すると、M5 UltraはM3 Ultra比で最大4倍高速。Foundry NukeのCopyCat MLトレーニングでは最大3.3倍、テキストからの画像生成では最大4.3倍高速になるとしている。Geekbench AIでは22〜82%しか伸びていないのに、実際のAIワークロードでは数倍速い。ここが今回のM5 Ultraを理解する上で、重要なポイントだ。
さらに、Mac Studio同士をThunderbolt 5で接続してクラスタ化することもできる。M5 Ultraモデルは前後合わせて6基のThunderbolt 5ポートを備え、それぞれ独立したThunderboltコントローラーを持つ。macOS 27ではThunderbolt経由のRDMA(Remote Direct Memory Access)にも対応し、複数のMac Studio間を低レイテンシーで接続できる。
アップルによれば4台をクラスタ化すると、AI推論性能は1台の最大3倍。 512GBモデルを4台なら、合計2TBのユニファイドメモリである。
アップル本社取材の時に、256GBメモリのMac Studio 4台のクラスターを見たが、これ4台で1000万円近いのかと思うとビビる。しかし、これで独立した十分なサイズのLLMが動かせるのだから、外に出せないデータの処理などに非常に便利だろう。
アップル自身、Mac Studioを『frontier-class AI models』を机の上で動かすコンピュータとして位置付けている。
せっかくこの化け物のようなMacを借りているので、次は実際にローカルLLMを動かして本来のMac Studioの使い方を試してみたい。しばらくお待ちを。
(村上タクタ)
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