
アップルの新ラインナップが指し示す、この秋のニュートレンド
発表の詳細はアップルのサイトを見れば分かることだが、先行して取材できたので、要点をお伝えしよう。
本発表の重要な点は、『初の2nmアーキテクチャを使うM6の発表』、不可能と言われていた『M5 Maxチップ2つを次世代UltraFusionを使って接続して、M5 Ultraを設計』、『1兆パラメータのLLMをローカルで動かせるMac』、『新たな価格体系』というところだろう。後ほど、順を追って解説したい。
また、9月の第2週ごろと推測されるiPhone 18に先んじて、これらの製品を発表するということは、「この後にも続々と新製品が登場する」ということを示唆していると思う。
通常、10月や、11月に出そうな製品なのに、iPhone発売の前に発売するのはそれなりの理由があると思う。慌ただしい(そして財布にとっては厳しい)秋になりそうだ。
初の2nmアーキテクチャを使うM6の発表
まず、M6チップの登場がビッグニュースだ。
M6チップは、9月に発表される(はずの)iPhone 18に搭載されるA20チップと同じ世代のApple Siliconだと言われていて、ついに世界初の2nmプロセスルールで製造されるチップセットになる。

ちなみに、M3からM5までは3nmプロセスルールで、毎回進歩はしていたものの、やはり2nmプロセスルールと表記できるようになったのはひとつのブレイクスルーだろう。そんな単純なものではないようだが、2nmの幅の回路はシリコン原子10個分ぐらいの幅なのだそうだ。そのスケールで数百億トランジスタ(非公表だが、過去の経緯からするとおそらく350億トランジスタあたり)の回路をほとんど間違いなく刻み込むというのが、どれほど高度な技術なのかと思う。今回も台湾のTSMCで作られているはずだ。
M6は、M5からチップのコア数も変化している。まず、CPUは10コアから12コアに。しかも、2つのスーパーコア、4つのパフォーマンスコア、6つの高効率コアという、3種類のコアを使い分ける初めての構造になっている。GPUも従来より2コア追加されて12コア。各GPUコアにはNeural Acceleratorが組み込まれている。そして、なんと、Neural Engineは2セット組み込まれ『デュアル16コア』と呼ばれている。当然のことながらAI推論のパフォーマンスが大きく向上している。
初代のM1からM6へ進化する間に、CPUのシングルスレッドは2.4倍高速になっており、さらにコア数が増え、Media EngineやVideo Encode、ProResアクセラレータなど専用の処理回路が追加されているので、全般としての処理能力はもっと大幅に向上してる。

このM6チップは、今後MacBook AirやPro、iMac、iPad Proなどにもおそらく搭載されることになるだろうから、実際に製品をお借りしてベンチマークテストをできる日が来るのが楽しみだ。
チップセットの性能向上だけではなく、ユニファイドメモリも32GBまで搭載可能になっているし、N1チップの搭載で、Wi-Fi 7、Bluetooth 6を実現。標準で、2.5Gb Ethernetを搭載。オプションで10Gb Ethernetを選択可能だ。

コンパクトなサイズからは想像もできないほどのパフォーマンスを秘めたマシンになっている。
上位モデルのMac miniは、すでにMacBook Proでお披露目されているM5 Proチップを搭載。こちらも、コンパクトなボディに強力なパフォーマンスを秘めたマシンになっている。M6搭載機はThunderbolt 4 、M5 Pro搭載機はThunderbolt 5で、クラスタを構成することも可能。コストパフォーマンスに優れたサーバー、LLM動作環境、科学技術計算などに使うことができる。

M5 Maxチップ2つを次世代UltraFusionを使って接続して、M5 Ultraを設計
M5 Max登場時にはFusion Architectureを使えない=M5 Ultraは作れないと言われていたが、アップルは次世代のUltraFusionを使い、2つのデュアルダイM5 Maxチップを接続し、Appleシリコンとして初めてクアッドダイアーキテクチャを形成する。UltraFusionはダイ間の帯域幅を4.4TB/s以上に、接続密度を6倍以上に引き上げる。この超低レイテンシで高帯域幅のインターコネクトにより、4つのダイが単一の統合されたプロセッサとして機能する。

その結果、M5 Ultraは最大12のスーパーコアと24のパフォーマンスコアで構成される最大36コアの巨大なCPUを備え、M3 Ultraと比較して最大1.25倍高いシングルスレッドパフォーマンスと最大1.3倍高いマルチスレッドパフォーマンスを実現する。GPUは最大80コア、各コアにNeural Acceleratorを組み込むことで、M3 Ultraと比較して最大4.5倍、M1 Ultraと比較して6倍以上のAI向けピークGPU演算能力を提供する。

1兆パラメータのLLMをローカルで動かせる Mac Studioクラスタ
搭載可能なユニファイドメモリは512GB。M3 Ultraより50%高い1.2TB/sというユニファイドメモリを実現。これにより、巨大なデータセットを完全にローカルメモリに保存し、数千億のパラメータを持つ巨大なLLMを完全にオンデバイスで実行できる。Thunderbolt 5で複数台をクラスタ化すると、1兆パラメータのLLMをオンデバイスで動作させることができる。つまり、M5 Ultraを積んだMac StudioはAIワークステーションとして非常に注目される存在になるということだ。

また、下位ラインナップはMacBook Proにすでに搭載されているM5 Maxを搭載するが、これもクリエイターにとって非常に魅力的なワークステーションになるだろう。
なかなか厳しい新たな価格体系
夢のような話が続くが、我々を一気に現実に引き戻すのはその価格だ。
USでも最低価格が599ドルだったMac miniが899ドルと、約1.5倍の価格に跳ね上がっているが、日本でも9万4800円だったMac mini(M4)が、M6を搭載することで14万9800円と、こちらも約1.5倍の価格になっている。
これは「半導体価格高騰の影響を避けられず」とのことなので、おそらくこの秋に発売されるiPhoneをはじめとしたアップル製品も、こうした価格帯になると思われる。
おそらくは怒濤のように新製品が登場するこの秋だが、我々の財布にはなかなか厳しい季節になりそうだ。

(村上タクタ)
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