
小さな筐体はそのまま、中身は最新のM6へ
まず、新しいMac miniの基本構成をおさらいしておこう。
M6は12コアCPU、12コアGPUを搭載する。CPUの内訳が面白く、2つのスーパーコア、4つの高性能コア、6つの高効率コアという構成になっている。従来のM4 Mac miniは4つの高性能コア+6つの高効率コアの10コアだったから、M6ではそこにスーパーコア2つが追加された格好だ。

GPUも10コアから12コアへ増加。さらにGPUの各コアにNeural Acceleratorを搭載する。そして、M6には『デュアル16コアNeural Engine』が搭載されている。つまり、単にCPUとGPUのコアを2個ずつ増やしたM4の高速版、というわけではない。特にAI処理を意識して、チップの構造そのものがかなり変わっているのだ。
メモリは16GBから最大32GBで、メモリ帯域幅は構成によって153GB/sから最大170GB/s。アップルによればストレージもM4世代に対して最大2倍高速化されている。
また、これとは別に、M5 Proチップを積んだ仕様も存在する。小さくても最新のチップを選ぶか、コア数の多いチップを選ぶかは利用目的によって違うということだろう。
ちなみに、今回お借りした製品は、M6、24GBメモリ、512GBストレージで、購入すると価格は22万1800円になる仕様である。

CPUは約4割アップ。コア数20%増以上に速い
まずGeekbench 6のCPUスコアから見てみよう。比較対象はMac miniとしては1モデル前にあたるM4のもの。

M4 Mac miniのデータでは、シングルコア3,278、マルチコア15,345だった。これに対して今回のM6 Mac miniは、シングルコア4,726、マルチコア21,431。計算すると、シングルコアは約44%、マルチコアは約40%向上している。M4からM6ではCPUコア数が10コアから12コアへと増えているが、コア数の数だけでなく、順当にM4→M6という性能向上も行われているということだ。
シングルコア性能が44%上がっているというのも、スーパーコアの搭載を含めてCPUコア自体の処理能力が大幅に上がっていることが、Geekbenchの数字から読み取れる。
CPU性能の向上は、派手な3D処理などと違って日常操作にも効く。アプリの起動、Webブラウジング、大きなExcelファイルの処理、写真現像など、「Macを触った時の速さ」につながりやすい。
アップル自身もM6のCPU性能をM4比で最大40%高速としているが、今回のGeekbench 6のマルチコア約40%向上は、ほぼそれを裏付ける数字になった。
GPUはなんと約74%高速。ここがM6の凄いところ
さらに大きく伸びたのがGPUだ。
Geekbench 6のMetalスコアは、M4 Mac miniの54,095に対して、M6 Mac miniは94,221。
約74%アップである。GPUコアは10個から12個に増えたが、性能はそれを大きくしのぐ約1.74倍になっているのだからかなり大幅なアップデートだといえるだろう。
M6ではGPUアーキテクチャが強化され、各GPUコアにNeural Acceleratorが搭載された。アップルはM4比でグラフィックス性能が最大2倍としており、レイトレーシングを使った『Cyberpunk 2077: Ultimate Edition』でも最大2倍の性能をうたっている。Geekbench Metalはゲームそのものを測定しているわけではないので、この2つを直接比較することはできない。しかし、今回の約74%という伸びを見る限り、M6のGPUがM4の小改良ではないことはよく分かる。
これは写真や動画を扱う人にも効いてくるだろう。なにより今後重要になるのがAIである。
Geekbench AIはHalf Precisionが約57%アップ
そこでGeekbench AIも計測した。今回はNeural Engineを使った結果を比較している。
Single Precisionは、M4の5,108に対してM6は6,791で、約33%アップ。Half Precisionは38,671から60,909へと伸び、約57%アップ。Quantizedも56,040から81,349へと伸び、約45%アップとなった。AIでは必ずしも高精度な32bit浮動小数点演算が必要なわけではない。16bitや量子化されたデータを使って高速に推論することが重要になる。つまりHalf PrecisionやQuantizedの大幅な伸びは、これからMac上でAIを動かす上で重要なポイントだ。

しかもM6のAI処理はNeural Engineだけで行うわけではない。GPU側にもNeural Acceleratorが入っている。
アップルのテストでは、LM Studioで14B(140億)パラメータ、4bit量子化モデルを使ったTime to First Tokenが、M4 Mac mini比で最大4.8倍高速になったという。テスト条件は32GBメモリ、2TB SSD同士。 Geekbench AIの性能アップはNeural Engine自体の性能向上で、そこは45〜57%アップだが、実際のLLMではGPUやメモリ帯域の方が効いてくるので4.8倍という数字の方がはるかに大きい。AI性能はもはやNeural Engineひとつのベンチマークだけでは測れない。CPU、GPU、Neural Accelerator、Neural Engine、そして高速なユニファイドメモリをどう組み合わせるかで、実際のAI性能は大きく変わる。
Mac miniは「安いMac」から「置きっぱなしのAI」へ?
今回、性能以外にも地味ながら嬉しいアップデートがある。
Ethernetは標準で従来の1Gbpsから2.5Gbpsとなり、オプションで10Gbpsを選択可能。Apple N1チップを搭載してWi-Fi 7とBluetooth 6にも対応した。背面には3基のThunderbolt 4、HDMI、Ethernet、前面には2基のUSB-Cとヘッドフォン端子を備える。 ただしM6モデルのThunderboltは依然としてThunderbolt 4で、Thunderbolt 5になるのはM5 Proモデルだ。このあたりは、外付けの高速SSDなどを多用する人には少々悩ましいところだろう。
筆者が今回のMac miniに期待したいのは、単純なデスクトップMacとしてではなく、『24時間動かしておくAIコンピュータ』としての使い方だ。アップル自身もレビュアーズガイドで、Mac miniの用途として『personal AI agents』を挙げ、M6をagentic AI workflowsに適したマシンとして位置づけている。
MacBook Proは持ち歩く。しかしMac miniなら、自宅やオフィスに置いたまま、ローカルLLMやAIエージェントを常時稼働させられる。それって、ちょっと面白そうではないか?
M4からでも数字は大幅向上。しかし本命はAIかもしれない
M4 Mac miniも十分に速かった。だから、M4ユーザーがM6へすぐ買い替える必要があるかと聞かれると、一般的な用途なら必ずしもそうではないと思う。
おそらく本領を発揮するのはAI的な用途。ローカルLLMを走らせたり、AIエージェントを常駐させたりした時、この小さな12.7cm四方の箱がどこまで仕事をしてくれるのか。最近は24GBメモリでも動かせるコンパクトなLLMがある。
14万9800円〜という価格を考えると、M6 Mac miniは単なる『安価なデスクトップMac』ではなく、『自分専用のAIコンピュータ』への入口になっていくのかもしれない。
そのあたりは、もうしばらく使ってみて、また改めてレポートしたい。
(村上タクタ)
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